[Python] ヒルベルト曲線をmatplotlibで描く方法
ヒルベルト曲線は、空間を埋めるフラクタル曲線の一種で、再帰的に定義されます。
Pythonでヒルベルト曲線を描くには、再帰的なアルゴリズムを使用して座標を生成し、それをmatplotlib
でプロットします。
まず、ヒルベルト曲線の各レベルでの座標を計算する関数を作成し、その結果をmatplotlib
のplot関数
で描画します。
再帰の深さを増やすことで、より詳細な曲線が得られます。
ヒルベルト曲線とは
ヒルベルト曲線は、数学者ダフィット・ヒルベルトによって提案されたフラクタル曲線の一種です。
この曲線は、1次元の線分を再帰的に2次元の空間に埋め込む方法を示しています。
ヒルベルト曲線は、空間を効率的に埋め尽くす特性を持ち、特にデータベースや画像処理において、データの局所性を保ちながら効率的にアクセスするために利用されます。
曲線は、再帰的な構造を持ち、深さを増すごとに複雑さが増し、無限に続く特性を持っています。
ヒルベルト曲線は、数学的な美しさだけでなく、実用的な応用も多く、さまざまな分野で注目されています。
ヒルベルト曲線のアルゴリズム
再帰的な定義
ヒルベルト曲線は、再帰的に定義されるフラクタル曲線です。
基本的なアイデアは、曲線を小さな部分に分割し、それらを再帰的に組み合わせることです。
具体的には、曲線の各部分は、前のレベルの曲線を特定の方法で変形して生成されます。
この再帰的なプロセスにより、曲線は無限に続く特性を持ちます。
最初のレベルでは単純な形状ですが、再帰の深さが増すごとに、より複雑な形状が形成されます。
ヒルベルト曲線の生成手順
ヒルベルト曲線を生成する手順は以下の通りです。
ステップ | 説明 |
---|---|
1 | 基本形状を定義する(1次元の線分) |
2 | 再帰的に曲線を4つの部分に分割する |
3 | 各部分を適切に回転・反転させて配置する |
4 | 再帰の深さを増やし、手順を繰り返す |
この手順を繰り返すことで、ヒルベルト曲線が生成されます。
座標変換の仕組み
ヒルベルト曲線では、各再帰レベルで座標を変換する必要があります。
具体的には、次のような変換が行われます。
- 各部分の座標を、前のレベルの座標に基づいて計算します。
- 曲線の各部分は、特定の回転や反転を行い、全体の形状を保ちながら配置されます。
この座標変換により、曲線は連続的で滑らかな形状を持つことができます。
再帰の深さと曲線の複雑さ
再帰の深さは、ヒルベルト曲線の複雑さに直接影響します。
深さが増すごとに、曲線はより多くの折れ線を持ち、より複雑な形状になります。
具体的には、再帰の深さが
これにより、曲線は無限に続く特性を持ち、任意の精度で描画することが可能です。
ただし、再帰の深さが増すと計算量も増加するため、実装時には注意が必要です。
Pythonでヒルベルト曲線を描く準備
必要なライブラリのインストール
ヒルベルト曲線を描くためには、主に以下の2つのライブラリが必要です。
これらはPythonのデータ可視化や数値計算に広く使用されています。
必要なライブラリをインストールするには、以下のコマンドを実行します。
pip install matplotlib numpy
ライブラリ名 | 用途 |
---|---|
matplotlib | データの可視化 |
numpy | 数値計算と配列操作 |
matplotlibの基本的な使い方
matplotlib
は、Pythonでグラフや図を描画するためのライブラリです。
基本的な使い方は以下の通りです。
- ライブラリをインポートする
- データを準備する
- プロットする
- 表示する
以下は、matplotlib
を使った簡単なプロットの例です。
import matplotlib.pyplot as plt
# データの準備
x = [1, 2, 3, 4, 5]
y = [2, 3, 5, 7, 11]
# プロット
plt.plot(x, y)
plt.title("サンプルプロット")
plt.xlabel("X軸")
plt.ylabel("Y軸")
# 表示
plt.show()
このコードを実行すると、指定したデータに基づいたグラフが表示されます。
numpyを使った座標計算の準備
numpy
は、数値計算を効率的に行うためのライブラリです。
ヒルベルト曲線の座標計算においても、numpy
を使用することで、配列操作や数学的な計算を簡単に行うことができます。
以下は、numpy
を使った基本的な配列の作成と操作の例です。
import numpy as np
# 配列の作成
coordinates = np.array([[0, 0], [1, 1], [2, 2]])
# 配列の操作
print("配列の形状:", coordinates.shape)
print("配列の合計:", np.sum(coordinates))
このように、numpy
を使うことで、ヒルベルト曲線の座標計算を効率的に行うことができます。
ヒルベルト曲線の実装
再帰関数を使った座標生成
ヒルベルト曲線の座標を生成するためには、再帰関数を使用します。
この関数は、指定された再帰の深さに基づいて、曲線の各部分の座標を計算します。
以下は、再帰関数を使ったヒルベルト曲線の座標生成の例です。
def hilbert_curve(order, x, y, xi, xj, yi, yj, points):
if order == 0:
points.append((x + (xi + yi) / 2, y + (xj + yj) / 2))
else:
hilbert_curve(order - 1, x, y, yi / 2, yj / 2, xi / 2, xj / 2, points)
hilbert_curve(order - 1, x + xi / 2, y + xj / 2, xi / 2, xj / 2, yi / 2, yj / 2, points)
hilbert_curve(order - 1, x + xi / 2 + yi / 2, y + xj / 2 + yj / 2, xi / 2, xj / 2, yi / 2, yj / 2, points)
hilbert_curve(order - 1, x + xi / 2 + yi, y + xj / 2 + yj, -yi / 2, -yj / 2, -xi / 2, -xj / 2, points)
この関数は、再帰の深さに応じて座標を計算し、points
リストに追加します。
ヒルベルト曲線の座標計算
次に、ヒルベルト曲線の座標を計算するための関数を作成します。
以下のコードでは、指定された再帰の深さに基づいて、曲線の座標を生成します。
def generate_hilbert_curve(order):
points = []
hilbert_curve(order, 0, 0, 1, 0, 0, 1, points)
return points
この関数を呼び出すことで、指定した深さのヒルベルト曲線の座標を取得できます。
matplotlibでのプロット方法
生成したヒルベルト曲線の座標をmatplotlib
を使ってプロットします。
以下のコードは、ヒルベルト曲線を描画する方法を示しています。
import matplotlib.pyplot as plt
# ヒルベルト曲線の座標を生成
order = 3 # 再帰の深さ
points = generate_hilbert_curve(order)
# プロット
x, y = zip(*points) # x座標とy座標を分離
plt.plot(x, y, color='blue')
plt.title(f"ヒルベルト曲線 (深さ: {order})")
plt.axis('equal') # アスペクト比を等しくする
plt.show()
このコードを実行すると、指定した深さのヒルベルト曲線が描画されます。
再帰の深さを調整してみる
再帰の深さを調整することで、ヒルベルト曲線の複雑さを変えることができます。
例えば、order
の値を1から5まで変更してみると、曲線の形状がどのように変化するかを観察できます。
深さが増すごとに、曲線はより多くの折れ線を持ち、複雑な形状になります。
以下のように、order
の値を変更して実行してみてください。
order = 4 # 深さを変更
このように、再帰の深さを調整することで、ヒルベルト曲線の描画を楽しむことができます。
完全なサンプルコード
以下は、ヒルベルト曲線を描画するための完全なサンプルコードです。
このコードを実行することで、指定した再帰の深さに基づいたヒルベルト曲線を描画することができます。
必要なライブラリをインポートし、再帰関数を定義し、最終的にプロットを行います。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
def hilbert_curve(order, x, y, xi, xj, yi, yj, points):
if order == 0:
points.append((x + (xi + yi) / 2, y + (xj + yj) / 2))
else:
hilbert_curve(order - 1, x, y, yi / 2, yj / 2, xi / 2, xj / 2, points)
hilbert_curve(order - 1, x + xi / 2, y + xj / 2, xi / 2, xj / 2, yi / 2, yj / 2, points)
hilbert_curve(order - 1, x + xi / 2 + yi / 2, y + xj / 2 + yj / 2, xi / 2, xj / 2, yi / 2, yj / 2, points)
hilbert_curve(order - 1, x + xi / 2 + yi, y + xj / 2 + yj, -yi / 2, -yj / 2, -xi / 2, -xj / 2, points)
def generate_hilbert_curve(order):
points = []
hilbert_curve(order, 0, 0, 1, 0, 0, 1, points)
return points
# ヒルベルト曲線の座標を生成
order = 3 # 再帰の深さ
points = generate_hilbert_curve(order)
# プロット
x, y = zip(*points) # x座標とy座標を分離
plt.plot(x, y, color='blue')
plt.title(f"ヒルベルト曲線 (深さ: {order})")
plt.axis('equal') # アスペクト比を等しくする
plt.show()
このコードを実行すると、深さ3のヒルベルト曲線が描画されます。

order
の値を変更することで、異なる深さの曲線を描画することができます。
例えば、order = 6
に変更すると、より複雑な曲線が表示されます。

ヒルベルト曲線の描画をカスタマイズ
色や線のスタイルを変更する
matplotlib
では、描画する線の色やスタイルを簡単に変更できます。
plot関数
の引数を使って、色や線のスタイルを指定することができます。
以下の例では、線の色を赤にし、点線スタイルで描画しています。
plt.plot(x, y, color='red', linestyle='--', linewidth=2) # 赤の点線
他にも、color
には色名やRGB値を指定でき、linestyle
には'-'
(実線)、'--'
(点線)、':'
(破線)などが使用できます。
グリッドや軸の表示を調整する
グリッドや軸の表示を調整することで、プロットの見やすさを向上させることができます。
grid関数
を使ってグリッドを表示し、axis関数
で軸の範囲を設定できます。
以下のコードでは、グリッドを表示し、軸の範囲を設定しています。
plt.grid(True) # グリッドを表示
plt.xlim(-1, 2**order) # x軸の範囲
plt.ylim(-1, 2**order) # y軸の範囲
描画サイズや解像度の設定
描画サイズや解像度を設定することで、出力画像の品質を向上させることができます。
figure関数
を使って、描画サイズを指定し、savefig関数
で解像度を設定して保存することができます。
以下の例では、描画サイズを8×8インチ、解像度を300dpiに設定しています。
plt.figure(figsize=(8, 8), dpi=300) # 描画サイズと解像度を設定
アニメーションで描画過程を表示する
ヒルベルト曲線の描画過程をアニメーションで表示することも可能です。
matplotlib.animation
モジュールを使用して、各再帰の深さごとに描画を更新するアニメーションを作成できます。
以下は、アニメーションを作成するための基本的なコードの例です。
import matplotlib.animation as animation
fig, ax = plt.subplots()
ax.set_xlim(-1, 2**order)
ax.set_ylim(-1, 2**order)
def update(frame):
ax.clear() # 前のフレームをクリア
points = generate_hilbert_curve(frame) # 現在の深さの座標を生成
x, y = zip(*points)
ax.plot(x, y, color='blue')
ax.set_title(f"ヒルベルト曲線 (深さ: {frame})")
ax.axis('equal')
ani = animation.FuncAnimation(fig, update, frames=range(1, order + 1), repeat=True)
plt.show()
このコードを実行すると、再帰の深さが1から指定した深さまでのヒルベルト曲線がアニメーションで表示されます。
アニメーションを通じて、曲線がどのように形成されるかを視覚的に理解することができます。
応用例
3次元ヒルベルト曲線の描画
ヒルベルト曲線は2次元だけでなく、3次元空間にも拡張できます。
3次元ヒルベルト曲線は、立方体内を埋め尽くすフラクタル構造を持ち、データの局所性を保ちながら空間を効率的に利用することができます。
以下は、3次元ヒルベルト曲線を描画するための基本的なコードの例です。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from mpl_toolkits.mplot3d import Axes3D
def hilbert_curve_3d(order, x, y, z, xi, xj, xk, yi, yj, yk, zi, zj, zk, points):
if order == 0:
points.append((x + (xi + yi + zi) / 2, y + (xj + yj + zj) / 2, z + (xk + yk + zk) / 2))
else:
hilbert_curve_3d(order - 1, x, y, z, zi / 2, zj / 2, zk / 2, yi / 2, yj / 2, yk / 2, xi / 2, xj / 2, xk / 2, points)
hilbert_curve_3d(order - 1, x + xi / 2, y + xj / 2, z + xk / 2, xi / 2, xj / 2, xk / 2, yi / 2, yj / 2, yk / 2, zi / 2, zj / 2, zk / 2, points)
hilbert_curve_3d(order - 1, x + xi / 2 + yi / 2, y + xj / 2 + yj / 2, z + xk / 2 + yk / 2, xi / 2, xj / 2, xk / 2, yi / 2, yj / 2, yk / 2, zi / 2, zj / 2, zk / 2, points)
hilbert_curve_3d(order - 1, x + xi / 2 + yi, y + xj / 2 + yj, z + xk / 2 + yk, -zi / 2, -zj / 2, -zk / 2, -yi / 2, -yj / 2, -yk / 2, -xi / 2, -xj / 2, -xk / 2, points)
hilbert_curve_3d(order - 1, x + xi / 2 + yi + zi / 2, y + xj / 2 + yj + zj / 2, z + xk / 2 + yk + zk / 2, -zi / 2, -zj / 2, -zk / 2, -yi / 2, -yj / 2, -yk / 2, -xi / 2, -xj / 2, -xk / 2, points)
hilbert_curve_3d(order - 1, x + xi / 2 + yi / 2 + zi, y + xj / 2 + yj / 2 + zj, z + xk / 2 + yk / 2 + zk, xi / 2, xj / 2, xk / 2, yi / 2, yj / 2, yk / 2, zi / 2, zj / 2, zk / 2, points)
hilbert_curve_3d(order - 1, x + xi / 2 + zi, y + xj / 2 + zj, z + xk / 2 + zk, xi / 2, xj / 2, xk / 2, yi / 2, yj / 2, yk / 2, zi / 2, zj / 2, zk / 2, points)
hilbert_curve_3d(order - 1, x + xi + yi / 2 + zi, y + xj + yj / 2 + zj, z + xk + yk / 2 + zk, yi / 2, yj / 2, yk / 2, xi / 2, xj / 2, xk / 2, zi / 2, zj / 2, zk / 2, points)
# 3次元ヒルベルト曲線の生成と描画
fig = plt.figure()
ax = fig.add_subplot(111, projection='3d')
points = []
hilbert_curve_3d(2, 0, 0, 0, 1, 0, 0, 0, 1, 0, 0, 0, 1, points)
x, y, z = zip(*points)
ax.plot(x, y, z, color='blue')
plt.title("3次元ヒルベルト曲線")
plt.show()
ヒルベルト曲線を使った画像圧縮
ヒルベルト曲線は、画像圧縮においても利用されます。
画像のピクセルをヒルベルト曲線に沿って並べることで、隣接するピクセルが近くに配置され、データの局所性を保つことができます。
これにより、圧縮アルゴリズムの効率が向上し、画像の品質を保ちながらデータサイズを削減することが可能です。
具体的には、ヒルベルト曲線を用いた走査順序を利用して、JPEGやPNGなどの圧縮形式でのデータ処理に応用されます。
ヒルベルト曲線を使った空間探索アルゴリズム
ヒルベルト曲線は、空間探索アルゴリズムにおいても有用です。
特に、データベースや空間データの検索において、ヒルベルト曲線を用いることで、データの局所性を保ちながら効率的に検索を行うことができます。
例えば、2次元の地理情報システム(GIS)において、ヒルベルト曲線を用いて地理データを整理することで、近接するデータポイントを効率的に検索することが可能になります。
これにより、検索時間を短縮し、パフォーマンスを向上させることができます。
ヒルベルト曲線を使ったデータ可視化
ヒルベルト曲線は、データ可視化の手法としても利用されます。
特に、高次元データを2次元または3次元にマッピングする際に、ヒルベルト曲線を用いることで、データの構造を視覚的に理解しやすくすることができます。
例えば、データポイントをヒルベルト曲線に沿って配置することで、データのクラスタリングや分布を視覚化し、パターンを見つけやすくすることができます。
この手法は、機械学習やデータ分析の分野で特に有用です。
まとめ
この記事では、ヒルベルト曲線の基本的な概念から、Pythonを用いた実装方法、さらには描画のカスタマイズや応用例まで幅広く解説しました。
ヒルベルト曲線は、データの局所性を保ちながら空間を効率的に埋め尽くす特性を持ち、さまざまな分野での応用が期待されるフラクタル曲線です。
ぜひ、実際にコードを試してみたり、他のフラクタル曲線と比較してみることで、ヒルベルト曲線の魅力を体験してみてください。