【C++】Qt QSplitterでウィジェット分割とサイズ調整を実現する基本手順
QtのQSplitterは複数のウィジェットを水平または垂直に分割し、ユーザーがドラッグでサイズ調整できる機能を持っています。
各ウィジェットはaddWidget()で追加し、setStretchFactor()などで比率を調整することができます。
動的なレイアウト変更が必要な場合に便利に使える仕組みです。
QSplitterの基本
QSplitterの役割と特徴
QSplitterは、Qtフレームワークでウィジェットの配置を柔軟に管理するためのコンテナウィジェットです。
ユーザーが分割線をドラッグすることで、各ウィジェットのサイズを簡単に調整できる仕組みが用意されています。
これにより、アプリケーションの画面レイアウトを動的に変化させることができ、多様なユーザーインターフェースに対応できる点が魅力です。
分割方向の設定 (水平/垂直)
QSplitterは、ウィジェットを水平にも垂直にも分割することができます。
分割方向は、コンストラクタで渡すQt::Horizontal
またはQt::Vertical
によって設定します。
たとえば、水平分割の場合はQt::Horizontal
、垂直分割の場合はQt::Vertical
を指定します。
これにより、ユーザーインターフェースのデザインや用途に合わせた最適なレイアウト調整が可能になります。
ウィジェットを利用した構造の形成
QSplitterを用いたレイアウトでは、複数のウィジェットを動的に配置し、それぞれのウィジェット間の分割線(ハンドル)によるサイズ調整が行えます。
例えば、左右にテキストエディットウィジェットを配置する場合、以下のサンプルコードのように実装することができます。
#include <QApplication>
#include <QSplitter>
#include <QTextEdit>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
// 水平分割のQSplitterを作成
QSplitter *splitter = new QSplitter(Qt::Horizontal);
// 左側のウィジェットを作成
QTextEdit *leftWidget = new QTextEdit;
leftWidget->setText("左側のウィジェット");
// 右側のウィジェットを作成
QTextEdit *rightWidget = new QTextEdit;
rightWidget->setText("右側のウィジェット");
// QSplitterにウィジェットを追加
splitter->addWidget(leftWidget);
splitter->addWidget(rightWidget);
// ウィンドウのタイトルとサイズを設定
splitter->setWindowTitle("QSplitterで分割");
splitter->resize(400, 300);
// ウィンドウを表示
splitter->show();
return app.exec();
}
(実行結果例: 2つのテキストエディタが左右に並び、ユーザーが分割バーをドラッグして各エディタのサイズを調整できる)

ウィジェットの管理と追加方法
addWidget()によるウィジェット配置
ウィジェットの追加は、addWidget()
メソッドを使って行います。
対象のウィジェットを指定することで順次追加できるため、シンプルなコードでウィジェットの配置が実現できます。
追加されたウィジェットは、QSplitter内でそれぞれの位置に応じた順番で表示されます。
ウィジェットの並び順とレイアウト管理
QSplitterに追加されたウィジェットは、追加された順番に従って並びます。
ウィジェットの順序の変更や挿入位置の調整は、insertWidget()
メソッドを利用できるため、希望するレイアウト順に並べ替えることが可能です。
挿入位置の調整
ウィジェットを既存のウィジェット間に挿入したい場合、insertWidget(int index, QWidget *widget)
を利用します。
これにより、既存のウィジェットの配置を崩すことなく、新しいウィジェットを効率的に導入できます。
ウィジェット間のスペース管理
ウィジェット間のスペースは、QSplitterが自動的に管理してくれますが、必要に応じて各ウィジェットの最小サイズを設定することで、望むレイアウトを維持する手助けになります。
各ウィジェットにsetMinimumSize()
を適用すると、ユーザーがドラッグでサイズを調整する際の最小幅や最小高さが制御でき、レイアウトが崩れにくくなります。
ウィジェット削除の留意点
ウィジェットをQSplitterから削除する場合、removeWidget()
メソッドを利用します。
ただし、削除後もウィジェット自体はメモリ上に存在するため、不要になった場合にはメモリの解放処理を行う必要があります。
削除と同時にウィジェットの所有権を管理する点に注意してください。
サイズ調整とレイアウト比率の設定
setStretchFactor()による動的サイズ調整
setStretchFactor()
メソッドを使うと、各ウィジェットに対してストレッチ係数を設定できます。
係数の値は整数で指定し、ウィジェット間のサイズ比率が決まります。
たとえば、左右のウィジェットに対し、左側に2、右側に1の係数を設定すれば、左側が右側の2倍の幅で表示されるようになります。
サイズ比率の基本原則
ストレッチ係数は、ウィジェットの対応するサイズの比率に直結します。
\( \text{幅1} : \text{幅2} = 2 : 1 \)という数式に基づいており、ストレッチ係数が大きいウィジェットほど余分なスペースを多く占めるようになります。
整数値を使うため、数式としては以下のように記述できます。
\[\frac{W_1}{W_2} = \frac{S_1}{S_2}\]
ここで、\( W_1, W_2 \)はウィジェットの幅、\( S_1, S_2 \)はそれぞれのストレッチ係数となります。
複数ウィジェット時の調整方法
複数のウィジェットが配置される場合、各ウィジェットごとにストレッチ係数を設定することで、全体のレイアウトのバランスを調整できます。
各係数の合計が全体のスペースの配分を決めるため、調整したいサイズ比率に応じた整数値を組み合わせて設定するのがコツです。
setSizes()を用いた初期サイズ設定
ウィジェットの初期サイズを固定して見せたい場合は、setSizes()
を利用することができます。
ウィジェットのサイズリストを渡すことで、QSplitter内に配置されたウィジェットの初期表示サイズを決めることが可能です。
均等分割の場合は、各ウィジェットに十分大きい値(例えばINT_MAX
)を指定して、余ったスペースが均等に分配されるように設定します。
ユーザー操作によるドラッグ調整
ユーザーは分割バーをドラッグすることで、各ウィジェットのサイズを自由に調整できます。
ドラッグ操作に対しては、QSplitterが自動的にレイアウトを再計算するため、コードからの追加設定は不要です。
ただし、ドラッグ開始や完了のタイミングでシグナルを検知したい場合、シグナルとスロットの仕組みを活用すると便利です。
複雑なレイアウト構築への応用
ネストされたQSplitterの活用
単一のQSplitterだけでなく、複数のQSplitterを入れ子にすることで、より複雑なレイアウトを実現できます。
異なる分割方向を組み合わせることで、複数の領域にそれぞれ異なるウィジェットを表示するデザインが可能です。
垂直と水平の組み合わせ
水平分割のQSplitterの中に、さらに垂直分割のQSplitterを配置することで、画面を左右+上下に細かく分けるレイアウトが作れます。
下記のサンプルコードは、左側の領域を上下に分割し、右側に単一のウィジェットを配置する例です。
#include <QApplication>
#include <QSplitter>
#include <QTextEdit>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
// 水平分割のメインQSplitterを作成
QSplitter *mainSplitter = new QSplitter(Qt::Horizontal);
// 左側に垂直分割のQSplitterを配置
QSplitter *leftSplitter = new QSplitter(Qt::Vertical, mainSplitter);
QTextEdit *topWidget = new QTextEdit;
topWidget->setText("左上のウィジェット");
QTextEdit *bottomWidget = new QTextEdit;
bottomWidget->setText("左下のウィジェット");
leftSplitter->addWidget(topWidget);
leftSplitter->addWidget(bottomWidget);
// 右側のウィジェット作成
QTextEdit *rightWidget = new QTextEdit;
rightWidget->setText("右側のウィジェット");
mainSplitter->addWidget(leftSplitter);
mainSplitter->addWidget(rightWidget);
mainSplitter->setWindowTitle("ネストされたQSplitterの例");
mainSplitter->resize(600, 400);
mainSplitter->show();
return app.exec();
}
(実行結果例: 左側に上下に分割されたウィジェットと右側に単一のウィジェットが表示され、ユーザーが各分割線をドラッグしてサイズ調整できる)

レスポンシブなUI設計への応用
ネストされたQSplitterは、画面サイズの変化に応じたレイアウトの自動調整にも役立ちます。
ウィンドウ全体のサイズ変更に連動して、各ウィジェットのサイズが自動的に再配置されるため、異なる画面サイズでの操作性も高く保つことができます。
複数ウィジェットの統合配置方法
QSplitterを用いれば、複数のウィジェットを統合して配置することが容易になります。
ウィジェット同士の相対的なサイズの調整や、複雑なレイアウトの実現など、柔軟な画面設計が可能なため、複数の機能を一つのウィンドウに整理して表示する際に非常に有用です。
実際のアプリケーション事例
実際のアプリケーションでは、エディタやツールのパネル、プレビューウィンドウなどをQSplitterを使って配置するケースが多く見受けられます。
たとえば、IDEや画像編集ソフトでは、コードエディタとコンソール、ツールボックスなどを動的に切り替えやサイズ調整できるUIとして実装されています。
こうした事例は、QSplitterの柔軟なウィジェット管理機能をうまく活用して、使いやすいユーザーインターフェースを構築するための参考になります。
主なプロパティとメソッドの解説
orientationプロパティの役割
orientation
プロパティは、QSplitterの分割方向を設定するための重要な属性です。
初期状態では水平または垂直のいずれかが指定され、アプリケーションの用途に合わせた画面分割を決定します。
これにより、ウィジェットがどのように並ぶかが明確になり、ユーザーの操作に対する挙動もシンプルに管理できます。
handleWidthなどの設定項目
QSplitterには、分割線の幅や見た目に関連するプロパティが豊富に用意されています。
たとえば、handleWidth
を使うと、分割線の幅を指定でき、インターフェース上でのドラッグ対象領域が調整可能です。
他にも、色やスタイルに関するプロパティがあり、UI全体のデザインに合わせて適用できます。
シグナルとスロットによる動的変更
QSplitterは、細かなイベント処理のためにシグナルとスロットの仕組みを提供しています。
これにより、サイズ変更時の動作やユーザー操作によってウィジェットの配置を動的に変更することが可能です。
リサイズ時のシグナル処理
ユーザーが分割線をドラッグしてウィジェットのサイズを変更すると、リサイズに関するシグナルが発生します。
これにより、変更後のサイズを他のウィジェットや処理に反映させることができ、細やかなUI調整が実現します。
たとえば、splitterMoved(int pos, int index)
というシグナルを使って、分割線の移動完了後に追加処理を行うことができます。
カスタムイベントとの連携
標準のシグナルとスロット以外にも、独自のカスタムイベントを定義して、特殊な動作を実現することも可能です。
たとえば、ウィジェットのリサイズに合わせて、隣接するウィジェットのコンテンツを動的に変更する用途などに応用できます。
カスタマイズオプション
UIスタイルとの連携
QSplitterは、Qtのスタイルシート機能と連携することで、見た目を自由にカスタマイズできるのも魅力です。
スタイルシートを利用して背景色や分割線のデザイン、ホバー時のエフェクトなどを設定することで、アプリケーション全体のUI統一感を損なわずにデザインを調整することが可能です。
カスタムハンドルの実装方法
標準の分割ハンドルでは物足りない場合、カスタムハンドルの実装もサポートされています。
サブクラス化して独自の描画やイベント処理を行うハンドルを作成すれば、特定のUI要件に合わせた独自の操作感を実装することができます。
実装例として、ハンドルの描画方法をオーバーライドし、アイコンや特定の色調で表示するなどの工夫が可能です。
まとめ
今回紹介したQSplitterの基本から、ウィジェットの管理、サイズ調整、そして複雑なレイアウト構築まで、幅広い内容を取り上げました。
各メソッドやプロパティをうまく活用すれば、柔軟なUIデザインを実現でき、ユーザーにとっても使いやすいアプリケーションとなります。
今後の開発にも、ぜひ参考にしてみてください。