【C++】Qt QRadioButtonの使い方:レイアウト配置とQButtonGroupによる状態管理方法
QtのQRadioButton
は、GUIで複数の選択肢から1つだけを選ぶために利用できるボタンです。
インスタンスを生成し、レイアウトに配置するだけで直感的に使える点が特徴です。
さらに、QButtonGroup
と連携させることで、複数のラジオボタンの状態管理が容易になり、操作性が向上します。
QtにおけるQRadioButtonの基本
QRadioButtonの役割と特徴
QRadioButtonは、ユーザーに対して複数の選択肢からひとつだけを選択させるウィジェットです。
ボタンを切り替えると、他のボタンの選択が解除されるため、直感的なインターフェイスが実現します。
特徴としては、視覚的なフィードバックが得られる点や、複数のボタンの中から現在選択されている項目が明確に分かる点を挙げられます。
グループ内排他制御機能
同じ親ウィジェット内に配置されたQRadioButtonは、互いに排他制御が働くため、一度にひとつしか選択できません。
QButtonGroupを使用することで、ウィジェット間の連携を明示的に管理することも可能です。
これにより、グループ外との連動や、カスタム動作の追加がしやすくなります。
利用シーンの例
QRadioButtonは、設定画面やアンケートフォーム、オプション選択ダイアログなど、複数の中からひとつの選択肢をユーザーに提供する際に利用されます。
例えば、アプリのテーマ選択や、印刷設定のオプションなど、明確にひとつを選ばせたい場合に適しています。
QRadioButtonの作成と初期設定
インスタンス生成方法
QRadioButtonは、新規にインスタンス化することで利用可能になります。
下記のサンプルコードでは、3つのラジオボタンのインスタンスを生成して、ウィジェット内に配置しています。
#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QRadioButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
QWidget window;
window.setWindowTitle("QRadioButtonサンプル");
// QRadioButtonの生成とテキスト設定
QRadioButton *radioButton1 = new QRadioButton("オプション1", &window);
QRadioButton *radioButton2 = new QRadioButton("オプション2", &window);
QRadioButton *radioButton3 = new QRadioButton("オプション3", &window);
// レイアウトに追加
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
layout->addWidget(radioButton1);
layout->addWidget(radioButton2);
layout->addWidget(radioButton3);
// 最初のラジオボタンを選択状態に設定
radioButton1->setChecked(true);
window.show();
return app.exec();
}
(QRadioButton付きの小さなウィンドウが表示され、初期状態では「オプション1」が選択された状態)

プロパティ設定(テキスト・チェック状態)
setChecked関数の利用
setChecked
関数を利用すれば、任意のラジオボタンをプログラム開始時に選択状態に変更することができます。
例えば、下記のコードでは、radioButton2
を選択状態に設定しています。
#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QRadioButton>
#include <QVBoxLayout>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
QWidget window;
window.setWindowTitle("setCheckedサンプル");
QRadioButton *radioButton1 = new QRadioButton("オプションA", &window);
QRadioButton *radioButton2 = new QRadioButton("オプションB", &window);
QRadioButton *radioButton3 = new QRadioButton("オプションC", &window);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
layout->addWidget(radioButton1);
layout->addWidget(radioButton2);
layout->addWidget(radioButton3);
radioButton2->setChecked(true); // 特定のボタンを選択状態にする
window.show();
return app.exec();
}
(ウィンドウが表示され、「オプションB」が初期選択状態になっている)

isChecked関数の概要
isChecked
関数で、ラジオボタンが現在選択されているかを確認することができます。
この関数は、チェック状態を返し、条件分岐処理などに活用します。
例えば、あるラジオボタンが選ばれている条件で処理を分けたい場合に利用すると便利です。
レイアウトへの配置
横方向・縦方向のレイアウト利用法
QRadioButtonを配置する際には、QHBoxLayout
やQVBoxLayout
を利用して、横並びまたは縦並びのレイアウトを簡単に実現できます。
下記のサンプルコードは、横方向レイアウトを利用してラジオボタンを配置する例です。
#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QRadioButton>
#include <QHBoxLayout>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
QWidget window;
window.setWindowTitle("水平レイアウトサンプル");
QRadioButton *radioButton1 = new QRadioButton("左", &window);
QRadioButton *radioButton2 = new QRadioButton("中央", &window);
QRadioButton *radioButton3 = new QRadioButton("右", &window);
QHBoxLayout *layout = new QHBoxLayout(&window);
layout->addWidget(radioButton1);
layout->addWidget(radioButton2);
layout->addWidget(radioButton3);
window.show();
return app.exec();
}
(ウィンドウ内に横一列に配置された3つのラジオボタンが表示される)

親ウィジェットとの連携
ラジオボタンは、生成時に親ウィジェットを指定することで、そのウィジェット内に自然と配置されます。
また、レイアウトと組み合わせることで、ウィジェットのサイズや位置が自動調整され、見やすいデザインとなる工夫が可能です。
複数ウィジェット配置時の注意点
複数のウィジェットを配置する際には、各ウィジェット間の間隔やサイズ調整に注意する必要があります。
レイアウトマネージャーを利用することで、均等なスペースの確保や、ウィンドウサイズ変更時の自動リサイズが実現し、より柔軟なデザインが楽しめます。
QButtonGroupによる状態管理
QButtonGroupの役割
QButtonGroupは、複数のボタンをまとめて管理するためのクラスです。
ラジオボタンをグループ化することで、どのボタンが選択されているかを一元管理できるため、処理の分岐や状態の検知がシンプルになります。
ボタングループ化の手法
以下のサンプルコードは、3つのラジオボタンをQButtonGroupに追加して管理する方法を示します。
#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QRadioButton>
#include <QButtonGroup>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
QWidget window;
window.setWindowTitle("QButtonGroupサンプル");
QRadioButton *radioButton1 = new QRadioButton("選択肢1", &window);
QRadioButton *radioButton2 = new QRadioButton("選択肢2", &window);
QRadioButton *radioButton3 = new QRadioButton("選択肢3", &window);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
layout->addWidget(radioButton1);
layout->addWidget(radioButton2);
layout->addWidget(radioButton3);
// QButtonGroupによる一元管理
QButtonGroup *buttonGroup = new QButtonGroup(&window);
buttonGroup->addButton(radioButton1);
buttonGroup->addButton(radioButton2);
buttonGroup->addButton(radioButton3);
// グループ内のボタンがクリックされたときの処理
QObject::connect(buttonGroup, QOverload<QAbstractButton *>::of(&QButtonGroup::buttonClicked),
[&](QAbstractButton *button){
qDebug() << button->text() << "が選択されました";
});
window.show();
return app.exec();
}
(ラジオボタンをクリックすると、コンソールに選択されたボタンのテキストが表示される)

排他動作の実現方法
QButtonGroupを利用することで、グループ内のラジオボタンが自動的に排他的動作を行います。
つまり、ユーザーがひとつのラジオボタンを選択すると他のボタンは自動的に非選択になる仕組みが自然に働き、実装負担を軽減できます。
信号とスロットの接続
シグナル・スロットメカニズムの基本
Qtのシグナルとスロットは、イベント駆動型プログラミングの仕組みとして提供されています。
ウィジェットの状態変化やユーザーアクションに応じて、あらかじめ定義されたスロット関数が自動的に呼び出されるため、柔軟なイベント処理が可能です。
QRadioButton特有のシグナル
toggledシグナルの特徴
toggled
シグナルは、ラジオボタンが選択状態になったり解除されたときに発行されます。
このシグナルには、ラジオボタンのチェック状態を示すbool
型の引数が渡されるので、状態に応じた処理を簡単に記述できます。
#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QRadioButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
QWidget window;
window.setWindowTitle("toggledシグナルサンプル");
QRadioButton *radioButton = new QRadioButton("ラジオボタン", &window);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
layout->addWidget(radioButton);
QObject::connect(radioButton, &QRadioButton::toggled,
[&](bool checked){
if(checked){
qDebug() << "ラジオボタンがONになりました";
}
});
window.show();
return app.exec();
}
(ラジオボタンがONになると、「ラジオボタンがONになりました」とコンソールに出力される)

buttonClickedシグナルとの違い
buttonClicked
シグナルは、グループ全体で利用する場合に便利で、クリックされたボタンのポインタを受け取ります。
一方、toggled
は個々のラジオボタンの状態変更に焦点をあてたシグナルとなるため、用途に応じて使い分けるとよいでしょう。
ユーザーインターフェイスとの連動
ユーザー操作時の動作検知
ユーザーがラジオボタンを操作するたびに、シグナルが発行されます。
この仕組みを利用すれば、ユーザーの操作に合わせたダイナミックな処理が可能になります。
たとえば、選択内容に応じて別のウィジェットの表示内容を更新するなど、インターフェイス全体の連動が実現できます。
イベント駆動型処理の考え方
Qtのイベント駆動型処理は、ユーザー操作に反応して速やかにレスポンスを返す設計となっています。
そのため、複雑な処理もシグナルとスロットの仕組みを用いることで、コード全体の見通しを維持しつつ実装できます。
イベント処理の流れは、ユーザー操作 → シグナル発行 → スロット呼び出しの順で進みます。
状態管理と選択の注意点
デフォルト選択状態の設定
プログラム開始時に特定の選択肢をあらかじめ選択しておく場合、setChecked
関数を活用します。
初期状態を明示することで、ユーザーに分かりやすいインターフェイスが提供できます。
特にフォーム送信など、必ずひとつの選択が必要な場面で効果的な設定となります。
チェック状態変更時の留意点
チェック状態の変更は、シグナルによりタイムリーに把握できるが、変更処理の中で不整合が起こらないように注意します。
たとえば、状態変更後に関連するウィジェットの表示を更新する場合、処理の順序に工夫を加えるとトラブルを防げます。
複数選択防止のポイント
グループ化されたラジオボタンは自動的に複数選択を防止するが、複雑な画面構成の場合はグループ設定の見直しが必要になることもあります。
QButtonGroupを利用することで、意図しない複数選択のリスクを減らせる仕組みとなっています。
また、ユーザーインターフェイス上のラベルや説明を充実させることで、誤操作を未然に防止できます。
トラブルシューティング
シグナル接続不良時の確認点
シグナルが期待通りに動作しない場合、以下のポイントを確認するのがおすすめです。
- シグナルとスロットの署名が一致しているか
- オブジェクトの親子関係が正しく設定されているか
- メインウィンドウやウィジェットが正しく表示されているか
QRadioButton状態更新の問題対処
QRadioButtonの状態更新が反映されない場合、以下の対処法を試してみるとよいです。
setChecked
関数の呼び出しタイミングの見直し- 他のウィジェットとの相互干渉が起こっていないか確認する
QButtonGroup利用時の注意事項
QButtonGroupを利用する場合は、グループへのボタン追加やシグナル接続の設定が正しく行われているかをチェックしてください。
グループ内のボタンが意図せず重複登録されないよう管理することも大切です。
また、動作不良時には、各ボタンのインスタンスとグループの関連付けを再確認するのがおすすめです。
まとめ
QRadioButtonを利用すれば、ユーザーに一つの選択肢だけを認めるシンプルかつ視覚的なインターフェイスが実現できます。
シグナルとスロットの仕組みやQButtonGroupを上手に活用すれば、状態管理もスムーズになります。
各種レイアウトへの組み込みも容易で、柔軟なGUI設計が可能なツールです。
今回の内容を参考に、安心してQRadioButtonを実装してみるといいでしょう。