[C言語] 基本的なマルチスレッド処理を解説

C言語でのマルチスレッド処理は、主にPOSIXスレッド(pthread)ライブラリを使用して実現されます。

マルチスレッド処理を行うことで、プログラムの並列実行が可能となり、CPUの効率的な利用が促進されます。

スレッドの作成には、pthread_create関数を使用し、スレッドの終了を待つにはpthread_join関数を使用します。

スレッド間でデータを共有する際には、データ競合を防ぐためにpthread_mutexなどの同期機構を利用します。

これにより、スレッドセーフなプログラムを構築することが可能です。

この記事でわかること
  • スレッドの基本とその利点・欠点について
  • C言語でのスレッドの生成方法と管理手法
  • スレッド間の同期を実現するための技術
  • マルチスレッドプログラムのデバッグ方法
  • マルチスレッドを活用した応用例の実装方法

目次から探す

マルチスレッド処理の基礎

スレッドとは何か

スレッドは、プロセス内で実行される最小の処理単位です。

プロセスは独立した実行環境を持ち、メモリ空間を他のプロセスと共有しませんが、スレッドは同じプロセス内でメモリ空間を共有します。

これにより、スレッド間でデータを効率的にやり取りすることが可能です。

シングルスレッドとマルチスレッドの違い

スクロールできます
特徴シングルスレッドマルチスレッド
処理速度一度に一つのタスクを処理複数のタスクを同時に処理
メモリ使用メモリ使用量が少ないメモリ使用量が増加する可能性
プログラムの複雑さ比較的簡単同期や競合状態の管理が必要

シングルスレッドは、一度に一つのタスクしか実行できないため、シンプルでデバッグが容易です。

一方、マルチスレッドは複数のタスクを同時に実行できるため、処理速度が向上しますが、スレッド間の同期や競合状態の管理が必要となり、プログラムが複雑になります。

マルチスレッドの利点と欠点

利点:

  • 効率的なリソース利用: 複数のスレッドが同時に実行されることで、CPUの使用率が向上し、リソースを効率的に利用できます。
  • 応答性の向上: ユーザーインターフェースを持つアプリケーションでは、バックグラウンドで重い処理を行いながら、ユーザーの操作に対して迅速に応答できます。
  • スケーラビリティ: マルチコアプロセッサを活用することで、プログラムのスケーラビリティが向上します。

欠点:

  • デバッグの難しさ: スレッド間の同期や競合状態の問題を解決するのは難しく、デバッグが複雑になります。
  • リソースの競合: 複数のスレッドが同じリソースにアクセスする際に、データの不整合が発生する可能性があります。
  • オーバーヘッド: スレッドの作成や管理にはオーバーヘッドが伴い、場合によってはシングルスレッドよりもパフォーマンスが低下することがあります。

マルチスレッド処理は、適切に設計されれば大きな利点をもたらしますが、注意深い設計と管理が求められます。

C言語でのスレッドの作成

POSIXスレッドライブラリの紹介

POSIXスレッド(pthread)は、UNIX系オペレーティングシステムで広く使用されているスレッドライブラリです。

C言語でマルチスレッドプログラミングを行う際に、POSIXスレッドライブラリを使用することで、スレッドの生成、管理、同期を行うことができます。

このライブラリは、スレッドの作成や終了、スレッド間の通信と同期をサポートしています。

スレッドの生成と終了

スレッドを生成するには、pthread_create関数を使用します。

この関数は、新しいスレッドを作成し、指定された関数を実行します。

スレッドの終了には、pthread_exit関数を使用します。

以下は、スレッドの生成と終了の基本的な例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
// スレッドで実行する関数
void* threadFunction(void* arg) {
    printf("スレッドが実行されています\n");
    pthread_exit(NULL); // スレッドの終了
}
int main() {
    pthread_t thread; // スレッド識別子
    int result;
    // スレッドの生成
    result = pthread_create(&thread, NULL, threadFunction, NULL);
    if (result != 0) {
        printf("スレッドの生成に失敗しました\n");
        return 1;
    }
    // メインスレッドがスレッドの終了を待機
    pthread_join(thread, NULL);
    printf("メインスレッドが終了します\n");
    return 0;
}
スレッドが実行されています
メインスレッドが終了します

この例では、pthread_createを使用して新しいスレッドを生成し、threadFunctionを実行しています。

pthread_joinを使用して、メインスレッドが新しいスレッドの終了を待機します。

スレッド関数の定義

スレッド関数は、スレッドが実行する処理を定義する関数です。

この関数は、void*型の引数を受け取り、void*型の値を返す必要があります。

スレッド関数内でpthread_exitを呼び出すことで、スレッドを終了させることができます。

スレッド関数は、スレッドが実行するタスクを定義するため、スレッド間で共有するデータやリソースを適切に管理する必要があります。

スレッド間のデータ競合を避けるために、ミューテックスやセマフォなどの同期機構を使用することが一般的です。

スレッド間の同期

競合状態とは

競合状態とは、複数のスレッドが同時に共有リソースにアクセスし、その結果が予測不可能になる状況を指します。

例えば、複数のスレッドが同じ変数を同時に更新しようとすると、データの不整合が発生する可能性があります。

これを防ぐためには、スレッド間の同期が必要です。

ミューテックスの使用方法

ミューテックス(mutex)は、スレッド間で共有リソースへのアクセスを制御するための同期機構です。

ミューテックスを使用することで、あるスレッドがリソースを使用している間、他のスレッドがそのリソースにアクセスするのを防ぐことができます。

以下は、ミューテックスを使用した例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
int sharedResource = 0; // 共有リソース
pthread_mutex_t mutex;  // ミューテックス
void* increment(void* arg) {
    pthread_mutex_lock(&mutex); // ミューテックスをロック
    sharedResource++;
    printf("スレッドがリソースを更新: %d\n", sharedResource);
    pthread_mutex_unlock(&mutex); // ミューテックスをアンロック
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread1, thread2;
    pthread_mutex_init(&mutex, NULL); // ミューテックスの初期化
    pthread_create(&thread1, NULL, increment, NULL);
    pthread_create(&thread2, NULL, increment, NULL);
    pthread_join(thread1, NULL);
    pthread_join(thread2, NULL);
    pthread_mutex_destroy(&mutex); // ミューテックスの破棄
    printf("最終的なリソースの値: %d\n", sharedResource);
    return 0;
}
スレッドがリソースを更新: 1
スレッドがリソースを更新: 2
最終的なリソースの値: 2

この例では、pthread_mutex_lockpthread_mutex_unlockを使用して、共有リソースへのアクセスを制御しています。

セマフォの基本と使用例

セマフォは、スレッド間の同期を行うためのもう一つの手段です。

セマフォは、特定のリソースの使用可能な数をカウントし、スレッドがリソースを使用する際にその数を減らし、リソースを解放する際にその数を増やします。

以下は、セマフォを使用した例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
#include <semaphore.h>
sem_t semaphore; // セマフォ
void* task(void* arg) {
    sem_wait(&semaphore); // セマフォを待機
    printf("スレッドがリソースを使用中\n");
    sem_post(&semaphore); // セマフォを解放
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread1, thread2;
    sem_init(&semaphore, 0, 1); // セマフォの初期化
    pthread_create(&thread1, NULL, task, NULL);
    pthread_create(&thread2, NULL, task, NULL);
    pthread_join(thread1, NULL);
    pthread_join(thread2, NULL);
    sem_destroy(&semaphore); // セマフォの破棄
    return 0;
}
スレッドがリソースを使用中
スレッドがリソースを使用中

この例では、sem_waitsem_postを使用して、スレッドがリソースを使用する際の同期を行っています。

条件変数の利用

条件変数は、スレッド間で特定の条件が満たされるのを待つための同期機構です。

条件変数は、ミューテックスと組み合わせて使用され、スレッドが特定の条件を待機し、条件が満たされたときに通知を受け取ることができます。

以下は、条件変数を使用した例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
int ready = 0; // 条件を示す変数
pthread_mutex_t mutex;
pthread_cond_t cond;
void* waitForCondition(void* arg) {
    pthread_mutex_lock(&mutex);
    while (!ready) {
        pthread_cond_wait(&cond, &mutex); // 条件変数を待機
    }
    printf("条件が満たされました\n");
    pthread_mutex_unlock(&mutex);
    return NULL;
}
void* signalCondition(void* arg) {
    pthread_mutex_lock(&mutex);
    ready = 1;
    pthread_cond_signal(&cond); // 条件変数に通知
    pthread_mutex_unlock(&mutex);
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread1, thread2;
    pthread_mutex_init(&mutex, NULL);
    pthread_cond_init(&cond, NULL);
    pthread_create(&thread1, NULL, waitForCondition, NULL);
    pthread_create(&thread2, NULL, signalCondition, NULL);
    pthread_join(thread1, NULL);
    pthread_join(thread2, NULL);
    pthread_mutex_destroy(&mutex);
    pthread_cond_destroy(&cond);
    return 0;
}
条件が満たされました

この例では、pthread_cond_waitpthread_cond_signalを使用して、スレッド間で条件が満たされるのを待機し、通知を行っています。

条件変数は、スレッド間の複雑な同期を簡単に実現するために役立ちます。

スレッドの管理

スレッドの識別と属性

スレッドの識別には、pthread_t型のスレッド識別子を使用します。

この識別子は、スレッドの生成時にpthread_create関数によって返され、スレッドの操作や管理に使用されます。

スレッドの属性は、スレッドの動作を制御するための設定です。

スレッド属性には、スレッドのデタッチ状態、スケジューリングポリシー、スタックサイズなどがあります。

これらの属性は、pthread_attr_t型のオブジェクトを使用して設定します。

以下は、スレッド属性を設定する例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
void* threadFunction(void* arg) {
    printf("スレッドが実行されています\n");
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread;
    pthread_attr_t attr;
    // スレッド属性の初期化
    pthread_attr_init(&attr);
    // スレッドをデタッチ状態に設定
    pthread_attr_setdetachstate(&attr, PTHREAD_CREATE_DETACHED);
    // スレッドの生成
    pthread_create(&thread, &attr, threadFunction, NULL);
    // スレッド属性の破棄
    pthread_attr_destroy(&attr);
    printf("メインスレッドが終了します\n");
    return 0;
}
スレッドが実行されています
メインスレッドが終了します

この例では、スレッドをデタッチ状態に設定しています。

デタッチ状態のスレッドは、終了時に自動的にリソースが解放されます。

スレッドの結合と分離

スレッドの結合(join)とは、メインスレッドが他のスレッドの終了を待機することを指します。

pthread_join関数を使用して、スレッドの終了を待機し、スレッドの終了コードを取得することができます。

一方、スレッドの分離(detach)とは、スレッドが終了した際に自動的にリソースを解放することを指します。

pthread_detach関数を使用して、スレッドをデタッチ状態に設定します。

以下は、スレッドの結合と分離の例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
void* threadFunction(void* arg) {
    printf("スレッドが実行されています\n");
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread;
    // スレッドの生成
    pthread_create(&thread, NULL, threadFunction, NULL);
    // スレッドの結合
    pthread_join(thread, NULL);
    printf("メインスレッドが終了します\n");
    return 0;
}
スレッドが実行されています
メインスレッドが終了します

この例では、pthread_joinを使用して、メインスレッドがスレッドの終了を待機しています。

スレッドのキャンセル

スレッドのキャンセルとは、実行中のスレッドを強制的に終了させることを指します。

pthread_cancel関数を使用して、特定のスレッドにキャンセル要求を送信します。

スレッドは、キャンセル要求を受け取ると、キャンセルポイントで終了します。

以下は、スレッドのキャンセルの例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
#include <unistd.h>
void* threadFunction(void* arg) {
    while (1) {
        printf("スレッドが実行中...\n");
        sleep(1);
    }
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread;
    // スレッドの生成
    pthread_create(&thread, NULL, threadFunction, NULL);
    // 3秒後にスレッドをキャンセル
    sleep(3);
    pthread_cancel(thread);
    // スレッドの結合
    pthread_join(thread, NULL);
    printf("メインスレッドが終了します\n");
    return 0;
}
スレッドが実行中...
スレッドが実行中...
スレッドが実行中...
メインスレッドが終了します

この例では、pthread_cancelを使用して、3秒後にスレッドをキャンセルしています。

スレッドは、キャンセルポイントで終了します。

キャンセルポイントは、pthread_testcancel関数やブロッキング関数(例:sleep)などで発生します。

マルチスレッドプログラムのデバッグ

デッドロックの検出と回避

デッドロックは、複数のスレッドが互いにリソースを待ち続ける状態で、プログラムが停止してしまう問題です。

デッドロックを検出するのは難しいですが、以下の方法で回避することができます。

  • リソースの順序付け: すべてのスレッドがリソースを取得する順序を統一することで、デッドロックを回避できます。
  • タイムアウトの設定: リソースの取得にタイムアウトを設定し、一定時間内に取得できなければリソースを解放することで、デッドロックを防ぎます。
  • デッドロック検出アルゴリズム: デッドロックを検出するアルゴリズムを実装し、発生時に適切な処理を行います。

以下は、デッドロックを回避するためのリソースの順序付けの例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
pthread_mutex_t resource1 = PTHREAD_MUTEX_INITIALIZER;
pthread_mutex_t resource2 = PTHREAD_MUTEX_INITIALIZER;
void* threadFunction1(void* arg) {
    pthread_mutex_lock(&resource1);
    pthread_mutex_lock(&resource2);
    printf("スレッド1がリソースを使用中\n");
    pthread_mutex_unlock(&resource2);
    pthread_mutex_unlock(&resource1);
    return NULL;
}
void* threadFunction2(void* arg) {
    pthread_mutex_lock(&resource1);
    pthread_mutex_lock(&resource2);
    printf("スレッド2がリソースを使用中\n");
    pthread_mutex_unlock(&resource2);
    pthread_mutex_unlock(&resource1);
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread1, thread2;
    pthread_create(&thread1, NULL, threadFunction1, NULL);
    pthread_create(&thread2, NULL, threadFunction2, NULL);
    pthread_join(thread1, NULL);
    pthread_join(thread2, NULL);
    return 0;
}
スレッド1がリソースを使用中
スレッド2がリソースを使用中

この例では、すべてのスレッドがリソースを取得する順序を統一することで、デッドロックを回避しています。

レースコンディションの特定

レースコンディションは、複数のスレッドが同時に共有リソースにアクセスし、予期しない結果を引き起こす問題です。

レースコンディションを特定するには、以下の方法を使用します。

  • コードレビュー: コードを詳細にレビューし、共有リソースへのアクセスが適切に同期されているか確認します。
  • ログ出力: スレッドの動作をログに記録し、問題が発生した箇所を特定します。
  • デバッグツール: 専用のデバッグツールを使用して、レースコンディションを検出します。

以下は、レースコンディションを防ぐためにミューテックスを使用した例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
int sharedCounter = 0;
pthread_mutex_t mutex = PTHREAD_MUTEX_INITIALIZER;
void* increment(void* arg) {
    for (int i = 0; i < 100000; i++) {
        pthread_mutex_lock(&mutex);
        sharedCounter++;
        pthread_mutex_unlock(&mutex);
    }
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t thread1, thread2;
    pthread_create(&thread1, NULL, increment, NULL);
    pthread_create(&thread2, NULL, increment, NULL);
    pthread_join(thread1, NULL);
    pthread_join(thread2, NULL);
    printf("最終的なカウンターの値: %d\n", sharedCounter);
    return 0;
}
最終的なカウンターの値: 200000

この例では、ミューテックスを使用して、共有カウンターへのアクセスを同期し、レースコンディションを防いでいます。

デバッグツールの紹介

マルチスレッドプログラムのデバッグには、以下のようなツールが役立ちます。

  • GDB(GNU Debugger): GDBは、C言語プログラムのデバッグに広く使用されるツールで、スレッドの状態を確認し、ブレークポイントを設定することができます。
  • Valgrind: Valgrindは、メモリリークやスレッドの競合状態を検出するためのツールです。

helgrindというツールを使用して、スレッドの競合状態を特定できます。

  • ThreadSanitizer: ThreadSanitizerは、Googleが開発したツールで、レースコンディションやデッドロックを検出するために使用されます。

GCCやClangのコンパイラでサポートされています。

これらのツールを活用することで、マルチスレッドプログラムのデバッグを効率的に行うことができます。

デバッグツールを使用する際は、プログラムを適切にコンパイルし、デバッグ情報を含めることが重要です。

応用例

並列計算の実装

マルチスレッドを利用することで、計算を並列に実行し、処理速度を向上させることができます。

例えば、大量のデータを処理する場合、データを複数のスレッドに分割して並列に計算することで、全体の処理時間を短縮できます。

以下は、配列の要素を並列に加算する例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
#define ARRAY_SIZE 1000000
#define NUM_THREADS 4
int array[ARRAY_SIZE];
long long sum = 0;
pthread_mutex_t mutex = PTHREAD_MUTEX_INITIALIZER;
void* partialSum(void* arg) {
    int start = *(int*)arg;
    int end = start + ARRAY_SIZE / NUM_THREADS;
    long long localSum = 0;
    for (int i = start; i < end; i++) {
        localSum += array[i];
    }
    pthread_mutex_lock(&mutex);
    sum += localSum;
    pthread_mutex_unlock(&mutex);
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t threads[NUM_THREADS];
    int threadArgs[NUM_THREADS];
    // 配列の初期化
    for (int i = 0; i < ARRAY_SIZE; i++) {
        array[i] = 1; // すべての要素を1に設定
    }
    // スレッドの生成
    for (int i = 0; i < NUM_THREADS; i++) {
        threadArgs[i] = i * (ARRAY_SIZE / NUM_THREADS);
        pthread_create(&threads[i], NULL, partialSum, &threadArgs[i]);
    }
    // スレッドの結合
    for (int i = 0; i < NUM_THREADS; i++) {
        pthread_join(threads[i], NULL);
    }
    printf("配列の合計: %lld\n", sum);
    return 0;
}
配列の合計: 1000000

この例では、配列を4つのスレッドに分割し、それぞれのスレッドが部分的な合計を計算します。

最終的な合計は、すべてのスレッドの部分合計を加算して求めます。

マルチスレッドによるファイル処理

マルチスレッドを使用することで、複数のファイルを同時に処理することができます。

これにより、I/O操作の待ち時間を短縮し、全体の処理速度を向上させることが可能です。

以下は、複数のファイルを並列に読み込む例です。

#include <stdio.h>
#include <pthread.h>
#define NUM_FILES 3
void* readFile(void* arg) {
    char* filename = (char*)arg;
    FILE* file = fopen(filename, "r");
    if (file == NULL) {
        printf("ファイルを開くことができません: %s\n", filename);
        return NULL;
    }
    char buffer[256];
    while (fgets(buffer, sizeof(buffer), file) != NULL) {
        printf("%s: %s", filename, buffer);
    }
    fclose(file);
    return NULL;
}
int main() {
    pthread_t threads[NUM_FILES];
    char* filenames[NUM_FILES] = {"file1.txt", "file2.txt", "file3.txt"};
    // スレッドの生成
    for (int i = 0; i < NUM_FILES; i++) {
        pthread_create(&threads[i], NULL, readFile, filenames[i]);
    }
    // スレッドの結合
    for (int i = 0; i < NUM_FILES; i++) {
        pthread_join(threads[i], NULL);
    }
    return 0;
}
file1.txt: ファイル1の内容
file2.txt: ファイル2の内容
file3.txt: ファイル3の内容

この例では、3つのファイルをそれぞれ別のスレッドで読み込み、内容を表示しています。

ネットワークプログラミングでの活用

マルチスレッドは、ネットワークプログラミングにおいても有用です。

例えば、サーバーアプリケーションでは、各クライアント接続を別々のスレッドで処理することで、同時に複数のクライアントに対応することができます。

以下は、簡単なマルチスレッドサーバーの例です。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <string.h>
#include <unistd.h>
#include <arpa/inet.h>
#include <pthread.h>
#define PORT 8080
#define BUFFER_SIZE 1024
void* handleClient(void* arg) {
    int clientSocket = *(int*)arg;
    char buffer[BUFFER_SIZE];
    int bytesRead;
    while ((bytesRead = read(clientSocket, buffer, sizeof(buffer))) > 0) {
        write(clientSocket, buffer, bytesRead); // エコー
    }
    close(clientSocket);
    return NULL;
}
int main() {
    int serverSocket, clientSocket;
    struct sockaddr_in serverAddr, clientAddr;
    socklen_t addrLen = sizeof(clientAddr);
    pthread_t thread;
    serverSocket = socket(AF_INET, SOCK_STREAM, 0);
    if (serverSocket == -1) {
        perror("ソケットの作成に失敗しました");
        exit(EXIT_FAILURE);
    }
    serverAddr.sin_family = AF_INET;
    serverAddr.sin_addr.s_addr = INADDR_ANY;
    serverAddr.sin_port = htons(PORT);
    if (bind(serverSocket, (struct sockaddr*)&serverAddr, sizeof(serverAddr)) < 0) {
        perror("バインドに失敗しました");
        close(serverSocket);
        exit(EXIT_FAILURE);
    }
    if (listen(serverSocket, 5) < 0) {
        perror("リッスンに失敗しました");
        close(serverSocket);
        exit(EXIT_FAILURE);
    }
    printf("サーバーがポート%dで待機中...\n", PORT);
    while ((clientSocket = accept(serverSocket, (struct sockaddr*)&clientAddr, &addrLen)) >= 0) {
        pthread_create(&thread, NULL, handleClient, &clientSocket);
        pthread_detach(thread); // スレッドをデタッチ状態に設定
    }
    close(serverSocket);
    return 0;
}
サーバーがポート8080で待機中...

この例では、サーバーがクライアントからの接続を受け入れ、各接続を新しいスレッドで処理します。

クライアントから受信したデータをそのまま送り返すエコーサーバーの実装です。

スレッドをデタッチ状態にすることで、スレッドの終了時にリソースが自動的に解放されます。

よくある質問

マルチスレッドとマルチプロセスの違いは?

マルチスレッドとマルチプロセスは、並行処理を実現するための異なるアプローチです。

  • メモリ空間の共有: マルチスレッドは同じプロセス内で動作するため、スレッド間でメモリ空間を共有します。

一方、マルチプロセスでは、各プロセスが独立したメモリ空間を持ちます。

  • リソースの消費: マルチスレッドは、プロセスを生成するよりもリソースの消費が少なく、スレッド間の通信が高速です。

マルチプロセスは、プロセス間通信(IPC)が必要で、オーバーヘッドが大きくなります。

  • 安全性: マルチプロセスは、プロセスが独立しているため、あるプロセスがクラッシュしても他のプロセスに影響を与えません。

マルチスレッドでは、スレッドが同じメモリ空間を共有するため、データ競合やデッドロックのリスクがあります。

スレッドの数はどのように決めるべき?

スレッドの数を決定する際には、以下の要因を考慮する必要があります。

  • CPUコア数: スレッド数は、通常、利用可能なCPUコア数に基づいて決定します。

CPUバウンドなタスクの場合、スレッド数をコア数に合わせると効率的です。

  • I/Oバウンドなタスク: I/O操作が多い場合、スレッド数を増やすことで、I/O待ち時間を隠蔽し、全体のスループットを向上させることができます。
  • リソースの制約: メモリや他のリソースの制約を考慮し、過剰なスレッド数を避ける必要があります。

過剰なスレッドは、コンテキストスイッチのオーバーヘッドを増加させ、パフォーマンスを低下させる可能性があります。

マルチスレッドプログラムのパフォーマンスを向上させるには?

マルチスレッドプログラムのパフォーマンスを向上させるためには、以下のポイントに注意します。

  • 同期の最適化: 不必要なロックや同期を避け、クリティカルセクションを最小限に抑えることで、スレッド間の競合を減らします。
  • データの局所性: スレッドがアクセスするデータを局所化し、キャッシュの効率を向上させることで、メモリアクセスの遅延を減少させます。
  • スレッドプールの利用: スレッドの生成と破棄のオーバーヘッドを削減するために、スレッドプールを使用してスレッドを再利用します。
  • 負荷分散: スレッド間でタスクを均等に分配し、特定のスレッドに負荷が集中しないようにします。

これらの方法を適用することで、マルチスレッドプログラムの効率を高め、パフォーマンスを向上させることができます。

まとめ

この記事では、C言語におけるマルチスレッド処理の基礎から応用例までを詳しく解説しました。

マルチスレッドの利点や欠点、スレッドの生成と管理、同期の方法、デバッグのポイントなど、実践的な内容を含めて説明しています。

これを機に、実際のプログラムでマルチスレッドを活用し、効率的な並行処理を実現してみてはいかがでしょうか。

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