[Python] 樹木曲線を計算してmatplotlibで描画する方法
樹木曲線(ツリーカーブ)は、再帰的なフラクタル構造を持つ図形で、Pythonでは再帰関数を用いて計算できます。
matplotlib
を使って描画するには、まず再帰的に枝を描画する関数を定義し、各枝の角度や長さを調整しながら再帰的に呼び出します。
matplotlib
のpyplot
モジュールを使って線を描画し、plt.show()
で表示します。
math
モジュールを使って角度の計算や座標の更新を行います。
樹木曲線とは
樹木曲線は、フラクタル幾何学の一種で、自然界に見られる樹木や植物の成長パターンを模倣した図形です。
この曲線は、再帰的なプロセスを用いて描かれ、幹から枝が分かれ、さらにその枝から小さな枝が分かれるという形で構成されます。
樹木曲線は、数学的な美しさだけでなく、プログラミングやコンピュータグラフィックスの分野でも広く利用されています。
特に、Pythonのようなプログラミング言語を使って描画することで、視覚的に魅力的な作品を簡単に作成することができます。
Pythonで樹木曲線を描画するための準備
必要なライブラリのインストール
樹木曲線を描画するためには、主にmatplotlib
ライブラリを使用します。
以下のコマンドを実行して、必要なライブラリをインストールしてください。
pip install matplotlib
matplotlibの基本的な使い方
matplotlib
は、Pythonでデータを視覚化するための強力なライブラリです。
基本的な使い方は以下の通りです。
- ライブラリをインポートする。
- 描画するデータを準備する。
- プロットを作成する。
- 描画を表示する。
以下は、matplotlib
を使った簡単なプロットの例です。
import matplotlib.pyplot as plt
# データの準備
x = [1, 2, 3, 4, 5]
y = [2, 3, 5, 7, 11]
# プロットの作成
plt.plot(x, y)
# 描画の表示
plt.show()
このコードを実行すると、指定したデータに基づいたグラフが表示されます。
mathモジュールの活用
樹木曲線を描画する際には、角度や三角関数を計算するためにmath
モジュールが役立ちます。
math
モジュールを使用することで、以下のような機能を利用できます。
- 三角関数
sin
,cos
- ラジアンと度の変換
- 数学的定数(
pi
など)
例えば、角度をラジアンに変換するには以下のようにします。
import math
# 角度を度からラジアンに変換
angle_degrees = 45
angle_radians = math.radians(angle_degrees)
このように、math
モジュールを活用することで、樹木曲線の描画に必要な計算を簡単に行うことができます。
樹木曲線の再帰的な計算方法
再帰関数の基本
再帰関数とは、自分自身を呼び出す関数のことです。
再帰を利用することで、複雑な問題をよりシンプルな部分問題に分解して解決することができます。
再帰関数は、以下の2つの要素から成り立っています。
- 基本ケース: 再帰を終了する条件。
- 再帰ケース: 自分自身を呼び出す部分。
以下は、再帰関数の基本的な例です。
def factorial(n):
if n == 0: # 基本ケース
return 1
else: # 再帰ケース
return n * factorial(n - 1)
この例では、factorial関数
が整数の階乗を計算します。
樹木曲線における再帰の考え方
樹木曲線では、幹から枝が分かれ、さらにその枝から小さな枝が分かれるという構造を持っています。
このため、再帰的なアプローチが非常に適しています。
具体的には、以下のような流れで描画を行います。
- 幹を描画する。
- 幹の先端から、一定の角度で枝を描画する。
- 各枝に対して、再帰的に同じ処理を行う。
このプロセスを繰り返すことで、樹木のような形状を生成します。
再帰関数を使った枝の描画
樹木曲線を描画するための再帰関数の例を以下に示します。
この関数は、指定された長さと角度で枝を描画します。
import matplotlib.pyplot as plt
import math
def draw_branch(x, y, angle, length, depth):
if depth == 0: # 再帰の終了条件
return
# 新しい枝の先端の座標を計算
x_new = x + length * math.cos(angle)
y_new = y + length * math.sin(angle)
# 現在の枝を描画
plt.plot([x, x_new], [y, y_new], color='brown', lw=2)
# 再帰的に枝を描画
draw_branch(x_new, y_new, angle - math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 左の枝
draw_branch(x_new, y_new, angle + math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 右の枝
再帰の終了条件の設定
再帰関数を正しく動作させるためには、終了条件を適切に設定することが重要です。
樹木曲線の場合、終了条件は通常、以下のように設定します。
- 深さ: 再帰の深さが0になったとき。
- 枝の長さ: 枝の長さが一定の閾値以下になったとき。
これにより、無限再帰を防ぎ、適切な形状の樹木曲線を描画することができます。
上記の例では、depth
が0になったときに再帰を終了するように設定しています。
樹木曲線の描画手順
座標系の設定
樹木曲線を描画するためには、まず座標系を設定する必要があります。
matplotlib
を使用して、描画領域を設定し、軸の範囲を指定します。
以下のコードは、座標系を設定する例です。
import matplotlib.pyplot as plt
# 描画領域の設定
plt.figure(figsize=(8, 8))
plt.axis('equal') # 縦横比を等しく設定
plt.axis('off') # 軸を非表示にする
この設定により、樹木曲線が歪むことなく描画されます。
幹の描画
樹木曲線の最初の部分は幹です。
幹を描画するためには、初期の座標、角度、長さを指定し、draw_branch関数
を呼び出します。
以下は、幹を描画するためのコードです。
# 幹の初期設定
initial_x = 0
initial_y = -200 # 画面の下からスタート
initial_angle = math.pi / 2 # 垂直方向
initial_length = 100 # 幹の長さ
depth = 5 # 再帰の深さ
# 幹を描画
draw_branch(initial_x, initial_y, initial_angle, initial_length, depth)
枝の描画
枝の描画は、draw_branch関数
内で再帰的に行われます。
幹から分かれた枝は、指定された角度で描画され、さらにその先に新しい枝が描かれます。
これにより、樹木のような形状が形成されます。
角度と長さの調整
樹木曲線の見た目を調整するためには、枝の角度や長さを変更することが重要です。
以下のように、枝の角度を変更することで、より自然な形状を作成できます。
# 左の枝の角度を-30度、右の枝の角度を+30度に設定
draw_branch(x_new, y_new, angle - math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 左の枝
draw_branch(x_new, y_new, angle + math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 右の枝
また、枝の長さを減少させることで、より細かい枝を描画することができます。
matplotlibでの描画
すべての設定が完了したら、matplotlib
を使って描画を表示します。
以下のコードを追加することで、樹木曲線を画面に表示できます。
# 描画の表示
plt.show()
これにより、設定した座標系に基づいて、幹と枝が描画された樹木曲線が表示されます。
全体のコードをまとめると、樹木曲線を簡単に描画することができます。
完全なサンプルコード
以下は、樹木曲線を描画するための完全なサンプルコードです。
このコードを実行することで、再帰的に描画された樹木曲線が表示されます。
import matplotlib.pyplot as plt
import math
def draw_branch(x, y, angle, length, depth):
if depth == 0: # 再帰の終了条件
return
# 新しい枝の先端の座標を計算
x_new = x + length * math.cos(angle)
y_new = y + length * math.sin(angle)
# 現在の枝を描画
plt.plot([x, x_new], [y, y_new], color='brown', lw=2)
# 再帰的に枝を描画
draw_branch(x_new, y_new, angle - math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 左の枝
draw_branch(x_new, y_new, angle + math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 右の枝
# 描画領域の設定
plt.figure(figsize=(8, 8))
plt.axis('equal') # 縦横比を等しく設定
plt.axis('off') # 軸を非表示にする
# 幹の初期設定
initial_x = 0
initial_y = -200 # 画面の下からスタート
initial_angle = math.pi / 2 # 垂直方向
initial_length = 100 # 幹の長さ
depth = 5 # 再帰の深さ
# 幹を描画
draw_branch(initial_x, initial_y, initial_angle, initial_length, depth)
# 描画の表示
plt.show()
このコードを実行すると、指定した深さと角度に基づいて、樹木曲線が描画されます。

draw_branch関数
が再帰的に呼び出され、幹から枝が分かれていく様子が視覚的に表現されます。
各パラメータ(長さや角度、深さ)を変更することで、異なる形状の樹木曲線を楽しむことができます。
樹木曲線のカスタマイズ
樹木曲線は、さまざまなパラメータを変更することで、独自のスタイルにカスタマイズできます。
以下に、いくつかのカスタマイズ方法を紹介します。
枝の長さをランダムに変更する
枝の長さをランダムに変更することで、より自然な見た目の樹木を作成できます。
random
モジュールを使用して、各枝の長さをランダムに設定します。
import random
def draw_branch(x, y, angle, length, depth):
if depth == 0: # 再帰の終了条件
return
# 新しい枝の先端の座標を計算
x_new = x + length * math.cos(angle)
y_new = y + length * math.sin(angle)
# 現在の枝を描画
plt.plot([x, x_new], [y, y_new], color='brown', lw=2)
# ランダムに枝の長さを変更
new_length = length * (0.5 + random.uniform(0, 0.5)) # 50%から100%の範囲でランダム
# 再帰的に枝を描画
draw_branch(x_new, y_new, angle - math.pi / 6, new_length, depth - 1) # 左の枝
draw_branch(x_new, y_new, angle + math.pi / 6, new_length, depth - 1) # 右の枝

枝の角度をランダムに変更する
枝の角度をランダムに変更することで、より多様な形状を作成できます。
以下のように、角度をランダムに設定します。
def draw_branch(x, y, angle, length, depth):
if depth == 0: # 再帰の終了条件
return
# 新しい枝の先端の座標を計算
x_new = x + length * math.cos(angle)
y_new = y + length * math.sin(angle)
# 現在の枝を描画
plt.plot([x, x_new], [y, y_new], color='brown', lw=2)
# ランダムに枝の長さを変更
new_length = length * (0.5 + random.uniform(0, 0.5))
# ランダムに角度を変更
angle_variation = random.uniform(-math.pi / 4, math.pi / 4) # -45度から+45度の範囲
draw_branch(x_new, y_new, angle - math.pi / 6 + angle_variation, new_length, depth - 1) # 左の枝
draw_branch(x_new, y_new, angle + math.pi / 6 + angle_variation, new_length, depth - 1) # 右の枝

色を変えてカラフルな樹木を描画する
枝の色を変更することで、カラフルな樹木を描画できます。
random
モジュールを使って、色をランダムに選択します。
def draw_branch(x, y, angle, length, depth):
if depth == 0: # 再帰の終了条件
return
# 新しい枝の先端の座標を計算
x_new = x + length * math.cos(angle)
y_new = y + length * math.sin(angle)
# ランダムな色を生成
color = (random.random(), random.random(), random.random()) # RGBの値をランダムに生成
# 現在の枝を描画
plt.plot([x, x_new], [y, y_new], color=color, lw=2)
new_length = length * (0.5 + random.uniform(0, 0.5))
draw_branch(x_new, y_new, angle - math.pi / 6, new_length, depth - 1) # 左の枝
draw_branch(x_new, y_new, angle + math.pi / 6, new_length, depth - 1) # 右の枝

枝の太さを変える
枝の太さを変更することで、よりリアルな樹木を表現できます。
lw
(ライン幅)をランダムに設定します。
def draw_branch(x, y, angle, length, depth):
if depth == 0: # 再帰の終了条件
return
# 新しい枝の先端の座標を計算
x_new = x + length * math.cos(angle)
y_new = y + length * math.sin(angle)
# ランダムな太さを生成
line_width = random.uniform(1, 5) # 1から5の範囲でランダム
# 現在の枝を描画
plt.plot([x, x_new], [y, y_new], color='brown', lw=line_width)
new_length = length * (0.5 + random.uniform(0, 0.5))
draw_branch(x_new, y_new, angle - math.pi / 6, new_length, depth - 1) # 左の枝
draw_branch(x_new, y_new, angle + math.pi / 6, new_length, depth - 1) # 右の枝
これらのカスタマイズを組み合わせることで、ユニークで魅力的な樹木曲線を描画することができます。

各パラメータを調整して、さまざまなスタイルの樹木を楽しんでみてください。
応用例
樹木曲線は、さまざまな応用が可能です。
以下にいくつかの応用例を紹介します。
フラクタルツリーのアニメーション化
樹木曲線をアニメーション化することで、動的なビジュアルを作成できます。
matplotlib
のFuncAnimation
を使用して、枝が成長する様子をアニメーションで表現することができます。
以下は、アニメーションの基本的な構造です。
from matplotlib.animation import FuncAnimation
# アニメーションの更新関数
def update(frame):
plt.clf() # 前のフレームをクリア
draw_branch(initial_x, initial_y, initial_angle, initial_length * (0.7 ** frame), depth)
# アニメーションの作成
ani = FuncAnimation(plt.gcf(), update, frames=range(depth), repeat=False)
plt.show()
このコードを実行すると、枝が成長していく様子がアニメーションで表示されます。
3D樹木曲線の描画
matplotlib
の3D機能を使用して、3次元の樹木曲線を描画することも可能です。
mpl_toolkits.mplot3d
をインポートし、3D座標系を設定することで、立体的な樹木を表現できます。
from mpl_toolkits.mplot3d import Axes3D
import matplotlib.pyplot as plt
import math
import random
def draw_branch_3d(x, y, z, angle, length, depth):
if depth == 0:
return
# 新しい枝の先端の座標を計算
x_new = x + length * math.cos(angle)
y_new = y + length * math.sin(angle)
z_new = z + length * random.uniform(0.5, 1) # Z軸方向にランダムに成長
# 現在の枝を描画
ax.plot([x, x_new], [y, y_new], [z, z_new], color='brown', lw=2)
draw_branch_3d(x_new, y_new, z_new, angle - math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 左の枝
draw_branch_3d(x_new, y_new, z_new, angle + math.pi / 6, length * 0.7, depth - 1) # 右の枝
# 3D描画の設定
fig = plt.figure()
ax = fig.add_subplot(111, projection='3d')
draw_branch_3d(0, 0, 0, math.pi / 2, 100, 5)
plt.show()

他のフラクタル図形との組み合わせ
樹木曲線は、他のフラクタル図形と組み合わせることで、より複雑で美しいパターンを作成できます。
例えば、マンデルブロ集合やジュリア集合と組み合わせて、背景にフラクタルを描画し、その上に樹木曲線を重ねることができます。
# マンデルブロ集合の描画
def mandelbrot(xmin, xmax, ymin, ymax, width, height, max_iter):
# ...(マンデルブロ集合の計算コード)
return image
# 樹木曲線の描画
draw_branch(0, -200, math.pi / 2, 100, 5)
# 背景にマンデルブロ集合を描画
plt.imshow(mandelbrot(-2, 1, -1.5, 1.5, 800, 800, 100), extent=(-2, 1, -1.5, 1.5))
plt.show()
GUIアプリケーションでの樹木曲線描画
tkinter
やPyQt
などのGUIライブラリを使用して、樹木曲線を描画するアプリケーションを作成することもできます。
ユーザーがパラメータを入力し、リアルタイムで樹木曲線を描画するインターフェースを提供することが可能です。
import tkinter as tk
def draw_tree():
# ユーザー入力に基づいて樹木曲線を描画
depth = int(depth_entry.get())
draw_branch(0, -200, math.pi / 2, 100, depth)
plt.show()
# GUIの設定
root = tk.Tk()
depth_entry = tk.Entry(root)
depth_entry.pack()
draw_button = tk.Button(root, text="樹木を描画", command=draw_tree)
draw_button.pack()
root.mainloop()
これらの応用例を通じて、樹木曲線の可能性を広げ、さまざまなビジュアル表現を楽しむことができます。
各応用例を試してみて、自分だけのユニークな樹木曲線を作成してみてください。
まとめ
この記事では、Pythonを使用して樹木曲線を描画する方法について詳しく解説しました。
樹木曲線の基本的な概念から、再帰的な計算方法、描画手順、さらにはカスタマイズや応用例に至るまで、幅広く取り上げました。
これを機に、樹木曲線の描画に挑戦し、さまざまなスタイルやフラクタル図形を自分の手で作成してみてください。