C# コンパイラ エラー CS0840 について解説
CS0840のエラーは、C#でプロパティの本体やアクセサーが指定されていない場合に発生します。
自動実装プロパティでは、getとsetのアクセサーを両方定義する必要があります。
abstract、extern、partialの修飾子を使うか、アクセサー本体を明示することで解消できます。
エラー概要
CS0840エラーの定義
エラーメッセージの詳細
CS0840エラーは、プロパティに対して本体(実装)が不足している場合に発生するエラーです。
具体的には、プロパティがabstract
またはextern
として宣言されていない場合、本体(アクセサーの実装)を記述する必要があります。
例えば、自動実装プロパティにおいては、get
とset
の両方を定義しなければならないため、一方だけを記述するとこのエラーが発生します。
発生条件の説明
このエラーは、以下の条件下で発生します。
- プロパティに対して、本体(アクセサーのブロック
{}
)が指定されていない場合 - プロパティが
abstract
、extern
、またはpartial
型のメンバーとして定義されていないのに、自動実装プロパティとして一方のアクセサーのみが記述されている場合
CS0840エラーは、プロパティの宣言における不備を意味しており、正しい構文で宣言しないとコンパイルエラーとなります。
典型的な発生例
自動実装プロパティの制約
自動実装プロパティでは、両方のアクセサーget
とset
の指定が必要となります。
以下のサンプルコードは、get
のみを記述しているため、CS0840エラーが発生する例です。
using System;
class Program
{
// CS0840エラーが発生する例:getのみの記述
public int MyProperty { get; }
static void Main(string[] args)
{
Console.WriteLine("プログラム開始");
}
}
// コンパイルエラー: 'MyProperty' は abstract または extern に指定されていないため、本体を宣言する必要があります。
不完全なプロパティ実装
また、手動でアクセサーの実装を書く場合に、get
またはset
の一方を省略してしまうと、CS0840エラーが発生することがあります。
プロパティの実装が不完全な状態では、コンパイラが正しく本体を認識できないためです。
エラーの原因
プロパティ実装不足
abstract、extern修飾子の必要性
プロパティに対してアクセサーの本体が記述されていない場合、そのプロパティにはabstract
またはextern
の修飾子のいずれかを付与する必要があります。
例えば、抽象クラス内で本体を持たないプロパティ宣言をする場合は、プロパティにabstract
キーワードを付ける必要があります。
また、外部実装を持たせる場合にはextern
修飾子を使用するケースがあります。
partial 型のメンバーに関する注意点
クラスがpartial
として宣言されている場合、プロパティの完全な実装は全てのパートを合算して初めて成立します。
各パートで実装が分断されていると、プロパティが不完全なものと判断され、CS0840エラーが発生する可能性があるため、パート間で実装内容を正しく統一する必要があります。
アクセサー定義の不備
get と set の双方未定義の問題
自動実装プロパティにおいては、通常、get
とset
の両方を定義する必要があります。
片方のアクセサーしか記述されていないと、プロパティとしての一貫性が保たれないため、CS0840エラーが発生します。
プロパティが読み取り専用の場合でも、set
アクセサーに対してアクセス修飾子(例:private
)を指定することで実装が完結するように記述する必要があります。
エラー解消方法
本体実装による修正
アクセサー本体の明示的記述
このエラーを解消する最も直接的な方法は、プロパティに対してget
とset
のアクセサー本体を明示的に記述することです。
例えば、次のようなコードでプロパティの本体を実装することでエラーが解消されます。
using System;
class Program
{
private int _value;
// ここでは、プロパティに対して明示的なアクセサー本体を記述している
public int MyProperty
{
get { return _value; } // 値を返す処理
set { _value = value; } // 値を設定する処理
}
static void Main(string[] args)
{
Program program = new Program();
// プロパティに値を設定する例
program.MyProperty = 100;
Console.WriteLine($"MyPropertyの値: {program.MyProperty}");
}
}
MyPropertyの値: 100
修飾子の適切な使用
本体を持たないプロパティを使う場合には、必ずabstract
もしくはextern
の修飾子を正しく指定する必要があります。
例えば、抽象クラス内でプロパティを記述する場合は以下のようにabstract
キーワードを追加します。
using System;
abstract class AbstractExample
{
// 抽象プロパティとして定義する例
public abstract int AbstractProperty { get; set; };
}
class ConcreteExample : AbstractExample
{
private int _abstractValue;
public override int AbstractProperty
{
get { return _abstractValue; }
set { _abstractValue = value; }
}
static void Main(string[] args)
{
ConcreteExample example = new ConcreteExample();
example.AbstractProperty = 200;
Console.WriteLine($"AbstractPropertyの値: {example.AbstractProperty}");
}
}
AbstractPropertyの値: 200
読み取り専用プロパティの対応策
private set の導入例
読み取り専用のプロパティを実装する場合、一方のアクセサーのアクセス修飾子にprivate
を指定して実体を提供することが可能です。
これにより、外部からの設定は制限しつつ、内部実装では値の変更が可能となります。
以下の例はその実装方法を示しています。
using System;
class Program
{
// 読み取り専用プロパティの例
public int ReadOnlyProperty { get; private set; }
public Program()
{
// コンストラクタ内でプロパティに値を設定する
ReadOnlyProperty = 300;
}
static void Main(string[] args)
{
Program program = new Program();
// 外部からの値変更はできず、読み取りのみ可能
Console.WriteLine($"ReadOnlyPropertyの値: {program.ReadOnlyProperty}");
}
}
ReadOnlyPropertyの値: 300
コード例と改善パターン
エラー発生例の提示
問題のあるコード事例
次のサンプルコードは、get
のみ記述された自動実装プロパティが原因でCS0840エラーとなる例です。
using System;
class ErrorExample
{
// CS0840エラーが発生する例:アクセサーの本体が不足している
public int FaultyProperty { get; }
static void Main(string[] args)
{
Console.WriteLine("エラー発生例の実行");
}
}
// コンパイル時にCS0840エラーが発生
修正後のコード例
正しい実装例の紹介
問題となるプロパティを正しく実装するためには、アクセサー本体を明示的に記述するか、読み取り専用のプロパティの場合はprivate set
を導入します。
以下は、正しい実装例です。
using System;
class CorrectExample
{
private int _value;
// 両方のアクセサーを明示的に実装した例
public int CompleteProperty
{
get { return _value; } // 値を取得する処理
set { _value = value; } // 値を設定する処理
}
// 読み取り専用プロパティとして実装する例
public int ReadOnlyProperty { get; private set; }
public CorrectExample()
{
// コンストラクタで値を初期化
CompleteProperty = 150;
ReadOnlyProperty = 250;
}
static void Main(string[] args)
{
CorrectExample example = new CorrectExample();
Console.WriteLine($"CompletePropertyの値: {example.CompleteProperty}");
Console.WriteLine($"ReadOnlyPropertyの値: {example.ReadOnlyProperty}");
}
}
CompletePropertyの値: 150
ReadOnlyPropertyの値: 250
エラー対応時の確認ポイント
コンパイル時のチェック方法
開発環境でのテスト手法
CS0840エラーの修正後は、必ず開発環境上でコンパイルを行い、エラーが解消されているかを確認する必要があります。
Visual Studioや.NET CLIなどを利用して、以下の手順でテストを行ってください。
- コードを保存し、ビルドを実行する
- エラーメッセージが表示されないか確認する
- 実行して、期待通りの結果が得られるか検証する
他のコンパイラエラーとの関連性
実装変更時の留意点
CS0840エラーの修正にあたっては、プロパティ宣言以外の実装変更も影響することがあります。
下記の点に注意して対応してください。
- プロパティの修飾子(
public
、private
など)が正しく設定されているか - 他のコンパイラエラーと混同しやすいため、エラーメッセージを十分に確認する
- コード全体の一貫性を保つために、変更箇所が他の部分に影響を与えていないかテストする
まとめ
本記事では、CS0840エラーが発生する理由とその解決方法について解説しています。
プロパティが正しく実装されていない場合にエラーが起こる仕組みや、abstract
、extern
、およびpartial
の修飾子の必要性、さらにget
とset
両方の定義が求められる理由を説明しました。
具体例を用いて、エラー発生時のコードと修正後の正しいコード例を示し、エラー解消のための確認ポイントも整理しています。