バージョン・サポート情報

PHP 7.3の新機能と改善点について解説

PHP 7.3 は、多くの改善と新機能が盛り込まれたバージョンです。

メモリ使用量やパフォーマンスの向上はもちろん、柔軟なHeredoc/Nowdoc構文や array_key_first()、array_key_last()関数の導入など、開発効率を高める工夫が施されています。

Heredoc/Nowdoc の改良

PHP 7.3では、HeredocおよびNowdoc構文に関して文字列フォーマットが改善され、読みやすいコード記述が可能になりました。

以下に詳しい変更点をご紹介します。

文字列フォーマットの変更点

PHP 7.3では、Heredoc/Nowdocの閉じタグがコードのインデントに沿って配置できるようになりました。

これにより、コードの可読性が向上し、インデントが整った状態で長い文字列を表現できるようになりました。

空白とインデントの扱い

以前は、Heredoc/Nowdocの閉じタグは行頭になければならず、ネストしたコードの見た目に違和感が生じることがありました。

PHP 7.3では、閉じタグの前後の空白が自動的に調整され、次のようなコードが記述可能になりました。

<?php
$text = <<<EOD
    ここに記載されるテキストは、
    インデントしたままの状態で整形されるため、
    コード全体の見通しが良くなります。
EOD;
echo $text;
ここに記載されるテキストは、
インデントしたままの状態で整形されるため、
コード全体の見通しが良くなります。

これにより、ネストしたブロック内でも自然な形で長文の文字列が記述でき、余計な空白やインデントの処理に気を使う必要がなくなりました。

柔軟な引用方法の採用

また、Heredoc/Nowdoc構文では、文字列中に変数を埋め込む場合やそのまま出力する場合で柔軟な引用方法が採用されました。

これにより、以前に比べて引用符の扱いがより直感的となり、変数展開の制御も容易になります。

たとえば、Nowdocではシングルクオートに似た形式で、変数展開がされないことを明示的に記述できるようになりました。

新しい配列関数

PHP 7.3では、配列操作をより簡便にするための新しい関数が導入されました。

特に、配列の先頭や末尾のキーを取得するための関数が追加され、シンプルにデータの管理が可能になりました。

array_key_first と array_key_last の基本仕様

これらの新関数は、連想配列やリストの最初および最後のキーを取得する機能を提供します。

ループ処理を行う前にインデックスを確認したい場合などに非常に便利です。

利用シーンと実例

たとえば、配列の先頭要素や最後の要素を条件分岐や初期化処理で利用する場合に有用です。

以下は、簡単な利用例です。

<?php
$fruitColors = [
    'apple'  => 'red',
    'banana' => 'yellow',
    'cherry' => 'pink',
];
// 配列の最初と最後のキーを取得する
$firstKey = array_key_first($fruitColors);
$lastKey  = array_key_last($fruitColors);
echo "First key: " . $firstKey . PHP_EOL;
echo "Last key: "  . $lastKey  . PHP_EOL;
First key: apple
Last key: cherry

このように、配列の先頭や末尾のキーを直接取得できるため、ループ処理や条件分岐でのキー判定が簡潔に記述できます。

実装上の注意点

利用時には、空の配列に対してこれらの関数を呼び出すとnullが返されるため、結果がnullになるケースを想定してエラーチェックを行うと良いです。

また、配列の中身が変更された場合には、その都度キーの位置が変わる点に注意する必要があります。

JSON 処理の改善

PHP 7.3では、JSON処理において例外の取り扱いが改善され、エラー発生時に例外が投げられるオプションが導入されました。

これにより、エラー処理がより直感的で安全な実装となります。

JSON_THROW_ON_ERROR の導入効果

従来のjson_decodejson_encodeでは、失敗時にfalseを返すだけでしたが、PHP 7.3からはJSON_THROW_ON_ERRORオプションを使用して、エラー時に例外を投げることができるようになりました。

これにより、エラーの原因や箇所を特定しやすくなります。

エラー処理の変更点

例外を利用することで、エラーが発生した場合に即座にcatchブロックに処理が移り、処理の流れが分かりやすくなります。

たとえば、以下のコードは、JSONデコード時にエラーが発生した場合の処理をシンプルに記述したものです。

<?php
$jsonString = '{"name": "John", "age": 30}';
try {
    // オプションを指定してJSONデコードを実施
    $data = json_decode($jsonString, true, 512, JSON_THROW_ON_ERROR);
    echo "Name: " . $data['name'];
} catch (JsonException $e) {
    echo "JSONエラー: " . $e->getMessage();
}
Name: John

このように、例外によりエラー箇所や原因が明確になり、デバッグが容易となります。

例外管理のポイント

例外管理の際は、必ずtry-catchブロックを使用してエラーに対する対策を講じることが大切です。

また、例外が返す情報を元に、エラーログへの出力やユーザーへの通知方法を工夫することで、運用時のトラブルシューティングが容易になります。

関数呼び出しの文法拡張

PHP 7.3からは、関数呼び出しにおける文法が拡張され、特にトレーリングカンマが許容されるようになりました。

これにより、複数行に渡る引数リストが管理しやすくなっています。

トレーリングカンマの採用

関数呼び出しや配列定義で、引数や要素の最後にカンマを付けることができるようになりました。

これにより、要素を追加・削除する際のdiff差分が小さくなり、バージョン管理がしやすいという利点があります。

コード記述の簡素化

トレーリングカンマを利用することで、関数定義や呼び出し時のコードが視認性良くなります。

たとえば、以下のように複数行で記述する場合でも、各引数の最後にカンマを記述することができるため、新たな引数追加時の修正が最小限で済みます。

<?php
function concatenateStrings(
    $firstString,
    $secondString,  // 後続の引数が追加されやすくなる
) {
    return $firstString . $secondString;
}
// 関数呼び出し時も同様にトレーリングカンマを利用可能
$result = concatenateStrings(
    "Hello, ",
    "PHP 7.3!",
);
echo $result;
Hello, PHP 7.3!

書式規則の変更点

トレーリングカンマの導入によって、コードレビューの際に余計な変更が発生しにくくなります。

また、エディタ上での自動整形機能とも相性が良く、均一なコードフォーマットを保ちやすくなります。

これにより、チーム開発においてもコード変更の差分が明瞭となります。

パフォーマンス最適化の改良点

PHP 7.3では、OPcacheの改善を通してスクリプトの実行速度やメモリ使用効率が向上しました。

これにより、より高速で効率的なアプリケーションの実行が期待できます。

OPcache の改善

OPcacheの改善では、キャッシュの管理や再利用が最適化され、以前に比べてより安定したパフォーマンスが実現されました。

不必要なリソースの再生成を防ぐことで、全体的な実行速度が向上しています。

実行速度向上の背景

更新されたOPcacheでは、PHPファイルの解析やコンパイルが効率化され、キャッシュヒット率が向上しました。

これにより、リクエストごとに新たにコンパイルする手間が省かれ、特に大規模なアプリケーションでのパフォーマンス向上が期待できます。

メモリ使用効率の向上

キャッシュ管理の改善に伴い、メモリの利用も最適化されています。

ユーザーは、設定を微調整することでキャッシュメモリを効率良く使用することができ、結果としてメモリ消費の削減にもつながります。

これにより、リソースの限られた環境でも安定した動作が得られるようになりました。

互換性と非推奨事項の整理

PHP 7.3では、不要になったまたは非推奨とされた機能が整理され、今後のバージョンアップに備えた明確な移行ガイドラインが示されました。

これにより、コードの保守性が向上し、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。

非推奨機能の一覧と代替

過去に使用されていた一部の関数や機能が非推奨とされ、代替手段が提示されています。

新規プロジェクトでは、これらの非推奨機能の利用を避け、最新の推奨される方法で実装することが望ましいです。

具体例として、一部のエラーハンドリングメソッドや旧式の構文が対象となっています。

環境ごとの差異

異なるPHP環境や設定により、非推奨機能の扱いが若干異なる場合があります。

例えば、開発環境では警告として表示される場合もあれば、本番環境での動作に影響を与えることが懸念されるため、各環境の設定に合わせた対応が必要です。

移行時の留意点

コードの移行時には、非推奨機能から最新の関数や構文へ変更する際に、互換性の問題が発生しないか十分にテストする必要があります。

特に、既存のライブラリやフレームワークを利用している場合は、アップデートガイドラインに沿って段階的に移行を進めることが安全です。

まとめ

本記事ではPHP 7.3の新機能と改善点について明確に解説しました。

コードの簡潔性やエラー処理の堅牢化、パフォーマンスの向上など、主要な改良点を総括的に説明しています。

ぜひ新機能を積極的に取り入れて、より効率的な開発にチャレンジしてみてください。

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