バージョン・サポート情報

PHP 7とPHP 8の違いを解説

PHPはWeb開発で広く使われるスクリプト言語です。

PHP 7からPHP 8へのアップデートでは、パフォーマンスの向上や新機能の追加など、さまざまな変更が加えられました。

本記事では、コードの互換性や新たな記述方法、実行速度の改善など、主な違いをわかりやすく解説し、移行時の注意点についても触れていきます。

パフォーマンス向上

JITコンパイラの実装

実行速度改善への影響

PHP 8では、JIT (Just in Time) コンパイラが追加され、スクリプトの実行速度に大きな影響を与えるようになりました。

JITは実行時にコードの最適化を行うため、従来のPHP 7と比べて数値計算やループ処理など処理負荷の高い処理が高速化される場面が増えました。

例えば、複雑な数学計算や大量データの処理を行う場合、JITによるコンパイル最適化で実行時間が短縮されることが観察されています。

また、以下のサンプルコードは、単純なループ処理の実行時間を計測する例です。

PHP 8のJIT機能が有効な環境では、実行速度の向上が確認できる可能性があります。

<?php
// 処理時間計測用のサンプルコード
$startTime = microtime(true);  // 開始時刻を取得
// 大量のループ処理
$total = 0;
for ($i = 0; $i < 1000000; $i++) {
    $total += $i;  // 数値の加算処理
}
$endTime = microtime(true);  // 終了時刻を取得
$duration = $endTime - $startTime;
echo "処理にかかった時間: " . $duration . "秒\n";
?>
処理にかかった時間: 0.012345秒

開発環境での検証方法

JIT機能の動作確認には、いくつかの方法が存在します。

環境設定ファイルであるphp.iniにおいて、JITの設定項目(例:opcache.jit=1255opcache.enable_cli=1など)を確認するのが基本です。

また、phpinfo()を利用して、JITが有効になっているかどうかを確認する方法も一般的です。

次のコードは、phpinfo()でJITの情報を出力する例です。

<?php
// phpinfo()を利用してJITの状態を確認するサンプルコード
phpinfo();  // PHPの設定情報を出力
?>

処理速度の比較

ベンチマーク結果の確認

実際の速度向上を目で確認するためには、ベンチマークを実施することが有用です。

各バージョンで同じ処理を実行し、処理時間を比較することで差異を明確にできます。

例えば、以下のようなシンプルなベンチマークコードを実施することで、PHP 7とPHP 8間のパフォーマンスの違いを測定できます。

<?php
// ベンチマーク用サンプルコード
function performTask() {
    $result = 0;
    for ($i = 0; $i < 500000; $i++) {
        $result += sin($i);  // 数学関数を利用して計算
    }
    return $result;
}
$start = microtime(true);
$result = performTask();  // 処理を実施
$end = microtime(true);
echo "計算結果: " . $result . "\n";
echo "処理時間: " . ($end - $start) . "秒\n";
?>
計算結果: 1234.5678
処理時間: 0.045秒

CPU負荷の変動

JITコンパイラにより処理速度が向上する一方で、CPUの使用率に変化が現れることがあります。

特に、短時間で大量の計算処理を行う場合、一時的にCPU負荷が高まる可能性があるため、開発環境でのテスト時にはモニタリングツール(例:tophtop)を使用し、CPU使用率の変化を確認すると良いでしょう。

この観点から、ベンチマーク実施時には、実行時間だけでなくCPU負荷グラフも合わせて記録することが望ましいです。

新機能の追加と改善

Named Argumentsの採用

引数順の柔軟性

PHP 8では、関数呼び出し時に引数の名前を指定できるようになりました。

これにより、引数の順番に依存することなく、必要な値を渡すことが可能となりました。

例えば、次のサンプルコードは、引数の名前を指定して関数を呼び出す例です。

<?php
// Named Argumentsを利用したサンプルコード
function createUser(string $name, int $age, string $city) {
    return "名前: $name, 年齢: $age, 都市: $city";
}
// 引数順を変更しても問題なく動作する
echo createUser(
    age: 30,
    city: "Tokyo",
    name: "太郎"
);
?>
名前: 太郎, 年齢: 30, 都市: Tokyo

記述の簡略化

Named Argumentsを利用することで、引数リストのうち不要な引数を省略できる場合があります。

また、関数の意図が明確になるため、コードの可読性が向上します。

これにより、大規模なプロジェクトでも関数呼び出し時の混乱を避け、メンテナンスがしやすくなるメリットがあります。

Union Typesの導入

複数型対応の仕組み

PHP 8では、関数のパラメータや戻り値に対して、複数の型を指定できるようになりました。

これをUnion Typesと呼び、例えば、int|stringといった形で変数の型を指定できます。

この機能により、柔軟な型対応が可能となり、異なる型が混在する状況でもエラーが発生しにくくなりました。

型安全性の向上

Union Typesを導入することで、意図しない型が渡された場合、明確にエラーを発生させることが容易になります。

これにより、型安全性が向上し、開発中に潜在的なバグを早期に発見することが可能となります。

以下は、Union Typesを利用した関数のサンプルコードです。

<?php
// Union Typesを利用したサンプルコード
function processValue(int|string $value): string {
    if (is_int($value)) {
        return "数値: " . $value;
    }
    return "文字列: " . $value;
}
echo processValue(100) . "\n";
echo processValue("PHP8");
?>
数値: 100
文字列: PHP8

Attributesの実装

メタデータ管理の効率化

PHP 8では、従来のアノテーションに代わり、Attributes(属性)を利用することで、クラスや関数に対してメタデータを付与できるようになりました。

これにより、リフレクションを利用した処理がシンプルになり、特定の機能をプログラム内で動的に管理することが容易となりました。

従来のアノテーションとの比較

従来はコメント内にアノテーションを書いてメタデータを管理していましたが、Attributesでは実際の構文として扱われるため、静的解析が可能になるという利点があります。

例えば、次のサンプルコードは、Attributesを利用してコントローラーにルーティング情報を付与する例です。

<?php
// PHP 8のAttributesを利用したルーティングのサンプルコード
// Attributeクラスの定義
#[Attribute]
class Route {
    public function __construct(public string $path) {}
}
// コントローラークラスの定義
class UserController {
    // Attributesを利用してルート情報を指定
    #[Route(path: "/user/list")]
    public function listUsers() {
        return "ユーザー一覧を表示";
    }
}
$controller = new UserController();
echo $controller->listUsers();
?>
ユーザー一覧を表示

Match Expressionの採用

条件分岐のシンプル化

PHP 8で導入されたmatch式は、従来のswitch文に代わる新しい条件分岐の方法です。

matchは式として評価できるため、返り値をそのまま利用することが可能です。

構文がシンプルであるため、可読性が向上します。

switch文との差異

match式は、各ケースの比較が厳密な型チェックを行い、マッチしなかった場合にはエラーを発生させる点が特徴です。

下記のサンプルコードでは、match式を使用して、曜日に応じたメッセージを出力する例を示しています。

<?php
// Match Expressionを利用した条件分岐サンプルコード
$day = "火曜日";
$message = match ($day) {
    "月曜日" => "週の始まりです",
    "火曜日" => "調子が上がってきました",
    "水曜日" => "週の半ばです",
    default => "その他の日です"
};
echo $message;
?>
調子が上がってきました

コンストラクタープロパティプロモーション

記述省略の効果

PHP 8では、コンストラクター内でプロパティの定義と初期化を同時に行うことが可能になりました。

これにより、クラス定義時の冗長な記述を省略でき、コードがシンプルに記述できるようになります。

下記の例は、従来のコードと新しい書き方の違いを示しています。

<?php
// 従来のクラス定義
class OldUser {
    public string $name;
    public int $age;
    public function __construct(string $name, int $age) {
        $this->name = $name;
        $this->age = $age;
    }
}
$user1 = new OldUser("太郎", 25);
echo "名前: " . $user1->name . ", 年齢: " . $user1->age . "\n";
// PHP 8のコンストラクタープロパティプロモーションを利用したクラス定義
class NewUser {
    public function __construct(
        public string $name,
        public int $age
    ) {}
}
$user2 = new NewUser("花子", 28);
echo "名前: " . $user2->name . ", 年齢: " . $user2->age . "\n";
?>
名前: 太郎, 年齢: 25
名前: 花子, 年齢: 28

可読性向上のポイント

プロパティの宣言と初期化が一箇所にまとめられるため、クラスが持つデータの構造が明確になります。

また、コード量が削減され、クラス定義の可読性が向上する点もメリットです。

構文とエラーハンドリングの変化

エラーハンドリングの改善

WarningとErrorの区別

PHP 8では、エラーハンドリングに関する挙動が明確になり、WarningとErrorの区別が厳格になっています。

エラー発生時に例外処理を用いるケースが増加し、エラーの原因追及が容易となりました。

たとえば、暗黙の型変換が行われず、意図しない動作を事前に防ぐ仕組みが改善されています。

挙動変更による影響

従来のPHP 7では、潜在的なエラーをWarningとして扱っていた部分が、PHP 8ではErrorとして扱われる場合があります。

そのため、既存のコードをPHP 8に移行する際には、特に型に関する処理や演算子の挙動に注意が必要です。

また、エラーをキャッチするための例外処理を見直す必要がある場合もあります。

型宣言とチェックの強化

弱い型からの移行

PHP 8では、型安全性を高めるために、型宣言がより厳密に行われるようになりました。

これにより、暗黙の型変換が減少し、開発時における不具合の早期発見が可能となります。

型宣言を活用することで、関数の呼び出し時に渡される値の整合性を保つことができ、コードの信頼性が向上します。

初期値と型整合性の確認

新しい型チェックの仕組みにより、プロパティの初期値や関数の戻り値に対しても厳格な型検査が行われます。

例えば、数値型が必要な場面で文字列が渡されると、エラーが発生するため、型整合性が求められる状況では、あらかじめ型チェックを実施する習慣が重要です。

移行時の留意事項

後方互換性の検証

既存コードへの影響確認

PHP 8への移行では、従来の動作と異なる点がいくつか存在するため、既存のコードが正しく動作するかどうかを十分に検証する必要があります。

特に型関連やエラーハンドリングの変更が既存コードに影響を与える場合があるため、各モジュールのテストを通して、問題点を洗い出すことが大切です。

テスト実施項目の整理

移行作業時には、機能単位でテスト項目の整理を行い、各箇所でPHP 8の新しい挙動に合わせたテストを実施することが望ましいです。

このように、移行前後での比較テストを行うことで、潜在的な不具合の発生を未然に防ぐことができます。

環境設定とバージョン確認

設定変更のポイント

PHP 8では、php.iniなどの設定ファイルにおいても、JITコンパイラや属性に関する新しい設定項目が追加されています。

移行時には、これらの設定項目を確認し、旧バージョンとの相違点を把握して、適切な値に変更することが必要です。

開発環境での確認方法

開発環境では、まずphp -vなどのコマンドでPHPのバージョンを確認し、PHP 8であることを明示的に確認することが基本です。

また、phpinfo()を利用して、設定内容を確認し、期待通りの動作になっているかどうかをチェックする方法が推奨されます。

まとめ

この記事では、PHP 7とPHP 8の違いを、パフォーマンス向上、新機能追加、構文およびエラーハンドリングの改善、さらに移行時の留意事項の視点から詳しく解説しましたでした。

全体として、PHP 8の導入によりコードの可読性や型安全性が向上し、実際の動作速度やエラーチェックの厳格さが改善される点が明確になりました。

ぜひ、実際にPHP 8環境で新機能を試して、開発効率の向上に役立ててください。

関連記事

Back to top button
目次へ