並列処理・並行処理

Go言語で実現する並列処理の順番について解説

Go言語(Go言語)の並列処理について、各ゴルーチンがどのような順番で実行されるかに着目して解説します。

並列処理をシンプルに扱える仕組みを実例をもとに紹介し、初学者にも理解しやすい内容にまとめています。

Go言語の並列処理の基礎知識

ゴルーチンの基本動作

Go言語では、軽量なスレッドであるゴルーチンを用いて並列処理を実現します。

ゴルーチンは関数呼び出しの前にキーワードgoを付けるだけで開始でき、実行が分岐します。

これにより、複数の処理を同時に走らせることが可能です。

以下は簡単なゴルーチンの例です。

package main
import (
	"fmt"
	"time"
)
func printMessage(message string) {
	// メッセージを表示する処理
	fmt.Println(message)
}
func main() {
	// ゴルーチンを利用してメッセージを非同期に表示
	go printMessage("ゴルーチンで実行中のメッセージ")
	// メイン処理内の実行
	fmt.Println("メイン処理のメッセージ")
	// ゴルーチンの終了を待つために一時停止
	time.Sleep(100 * time.Millisecond)
}
メイン処理のメッセージ
ゴルーチンで実行中のメッセージ

この例では、printMessage関数がゴルーチンで呼び出され、メイン関数内の処理と並行して実行される仕組みになっています。

ゴルーチンは非常に少ないオーバーヘッドで多くの並行処理を可能にするため、大規模な並列処理にも適用できます。

チャネルによる通信と同期

ゴルーチン間での正確な通信や同期を実現するために、Go言語ではchannel(チャネル)を使用します。

チャネルは、データの受け渡しを安全に行うための仕組みであり、ゴルーチン同士が互いにメッセージを交換する際に利用されます。

チャネルを通じた通信の基本的な使い方は以下の通りです。

サンプルコードでは、別々のゴルーチンから送信されたデータをメインゴルーチンで受信し、順序制御を行う一例を示します。

package main
import "fmt"
func sendMessage(ch chan string, message string) {
	// 渡されたメッセージをチャネルに送信
	ch <- message
}
func main() {
	// 文字列用のチャネルを作成
	messageChan := make(chan string)
	// ゴルーチンを利用してそれぞれ異なるメッセージをチャネルに送信
	go sendMessage(messageChan, "チャネルを利用したメッセージ1")
	go sendMessage(messageChan, "チャネルを利用したメッセージ2")
	// チャネルから順にメッセージを受信
	msg1 := <-messageChan
	msg2 := <-messageChan
	fmt.Println(msg1)
	fmt.Println(msg2)
}
チャネルを利用したメッセージ1
チャネルを利用したメッセージ2

このように、チャネルを利用することでゴルーチン間での安全なデータ交換が実現し、必要に応じて処理の順序調整を行うための基礎となります。

並列処理における順序の挙動

並列実行の非決定性の理由

並列処理では、ゴルーチンの開始タイミングや実行順序が必ずしも固定されていないため、処理の順序が非決定的となることが多くあります。

基本的には、各ゴルーチンは独立して実行され、オペレーティングシステムのスケジューラが最適な順序で処理を割り当てます。

また、複数のゴルーチンが同時に実行されると、その順序が実行される環境に依存するため、実行のたびに異なる結果となる可能性があります。

この非決定性は並列処理の柔軟性を高める一方で、順序が必要な場合には追加の制御が求められます。

順番制御が難しい要因

非決定的な実行順序の背景には、以下のような要因が存在します。

  • 複数のゴルーチンが同時に走るため、タイミングに依存した競合状態が生じる可能性があること。
  • オペレーティングシステムのスケジューリングによる実行順序の影響を受けるため、予測が難しいこと。
  • 並列処理を行う際、共有リソースへのアクセスに対して適切な同期処理がなされていないと、意図しない結果になるリスクがあること。

これらの理由から、単純な並列処理では順序の制御が難しく、後述する手法を利用して明示的に順序を管理する必要が生じます。

順序制御の実装方法

チャネルを活用した順序制御の手法

サンプルコードのポイント

チャネルを利用して順序制御を行う場合、処理の終了をチャネルに通知する仕組みを導入することで、後続の処理を制御できます。

下記のサンプルコードでは、各ゴルーチンが処理終了時にチャネルへ信号を送ることで、正しい順番で結果を受信できるようになっています。

package main
import (
	"fmt"
	"time"
)
// doTaskはチャネルにメッセージを送信する関数
func doTask(ch chan string, taskName string, delay time.Duration) {
	// 指定した遅延時間後にメッセージを送信
	time.Sleep(delay)
	ch <- "完了:" + taskName
}
func main() {
	// 文字列用のチャネルを作成
	resultChan := make(chan string, 2)
	// 複数のゴルーチンでタスクを実行
	go doTask(resultChan, "Task1", 100*time.Millisecond)
	go doTask(resultChan, "Task2", 50*time.Millisecond)
	// チャネルから結果を受信して順序を確認
	result1 := <-resultChan
	result2 := <-resultChan
	fmt.Println(result1)
	fmt.Println(result2)
}
完了:Task2
完了:Task1

出力結果の分析

上記サンプルコードでは、Task1には100msの遅延、Task2には50msの遅延を設定しています。

そのため、実行結果ではTask2の完了メッセージが先に受信され、その後にTask1の完了メッセージが出力されます。

これにより、チャネルによって実際の完了順が受信順として反映されることが確認できます。

syncパッケージによる制御手法

WaitGroupの利用方法

syncパッケージのWaitGroupを利用することで、複数のゴルーチンが終了するまで待機し、順序を管理することができます。

以下のコードは、WaitGroupを利用して全てのゴルーチンが終了するのを待ってから次の処理に進む例です。

package main
import (
	"fmt"
	"sync"
	"time"
)
// executeTaskはタスクを実行し、終了時にWaitGroupのDoneを呼び出す
func executeTask(wg *sync.WaitGroup, taskName string, delay time.Duration) {
	defer wg.Done() // タスク終了を通知
	time.Sleep(delay)
	fmt.Println("実行完了:", taskName)
}
func main() {
	var wg sync.WaitGroup
	// ゴルーチンの数を待機対象として追加
	wg.Add(2)
	// 複数のゴルーチンでタスクを実行
	go executeTask(&wg, "TaskA", 150*time.Millisecond)
	go executeTask(&wg, "TaskB", 100*time.Millisecond)
	// 全てのゴルーチンの完了を待つ
	wg.Wait()
	fmt.Println("全タスク完了")
}
実行完了: TaskB
実行完了: TaskA
全タスク完了

実装時の注意事項

WaitGroupを利用する際は、以下の点に注意してください。

  • 必ずwg.Addで待機するゴルーチンの数を指定し、対応するタイミングでwg.Doneを呼び出す必要があります。
  • 処理の順序が厳密に必要な場合には、WaitGroupだけではなく、チャネルやその他の同期手法を併用すると良いでしょう。

これにより、ゴルーチンが終了した順序にかかわらず、全体の完了を確実に待つことができ、後続処理への移行が安全に行えます。

並列処理順序調整の実践的ポイント

デバッグとパフォーマンス評価

並列処理においては、各ゴルーチンの動作や通信のタイミングがバラバラになることがあるため、デバッグは特に重要です。

ログ出力を用いて各処理の開始・終了時刻を記録することで、順序やタイミングの問題を追跡できます。

また、プロファイリングツールを活用することで、ボトルネックとなっている部分やパフォーマンス改善の余地を特定することが可能です。

  • ログ出力:各ゴルーチンの処理開始、終了を記録する
  • プロファイリング:実行時間やリソース使用状況を分析し、改善策を検討する

エラーハンドリングと障害回避の工夫

並列処理では、各ゴルーチンが独立して動作するため、あるゴルーチンで発生したエラーが全体に影響を及ぼす場合があります。

エラーハンドリングをしっかりと実装し、異常が検出された場合に適切な対策を講じる仕組みを構築する必要があります。

具体的には、以下の工夫が考えられます。

  • エラー用のチャネルを設け、各ゴルーチンからのエラー情報を統合する
  • ゴルーチン内でキャッチされなかったエラーをメインルーチンで受け取り、再試行やログ記録で対応する
  • 共有リソースのアクセスにはミューテックスなどの同期手法を用い、データ競合を回避する

これらのポイントを踏まえることで、並列処理における予期しない動作や障害リスクを軽減し、安定したシステムの構築が可能となります。

まとめ

本記事では、Go言語のゴルーチンやチャネルを用いた並列処理の基本動作、非決定性やその順序制御の難しさ、チャネルとsyncパッケージを使った実装手法、さらにデバッグやエラーハンドリングの工夫について解説しました。

全体を通じて、並列処理の順序制御に必要な知識と具体的な実装方法が理解できる内容になっています。

ぜひ、紹介した手法を活用してプロジェクトの品質向上に挑戦してみてください。

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