コンパイラエラー

C言語のOpenMPコンパイラエラー C3058 について解説

このエラーは、OpenMPのcopyin句で利用するシンボルが、事前にthreadprivateとして宣言されていない場合に発生します。

たとえば、変数をcopyinする際、対応する変数がthreadprivateとして正しく宣言されていないとコンパイラがエラーを指摘します。

修正は、対象の変数をcopyin句を使う前にthreadprivateとして宣言することで解消できます。

エラーの発生と基本理解

C3058エラーの概要

C3058エラーは、OpenMPのcopyin句の中で使用するシンボルが、あらかじめthreadprivateとして宣言されていない場合に発生するエラーです。

OpenMPでは、グローバル変数を各スレッドで個別に扱うためにthreadprivate宣言が必要ですが、copyin句で指定する変数は必ずその前にthreadprivateとして宣言する必要があります。

エラー発生時の具体例

エラーが発生する具体例として、以下のコードでは変数ycopyin句で利用されていますが、threadprivateとして宣言されていないため、コンパイル時にC3058エラーが発生します。

また、変数xzthreadprivate宣言されているため、影響はありません。

サンプルコードの説明

以下のサンプルコードは、copyin句で使用する変数ythreadprivate宣言されていない状態を示しています。

コメントで各部分の役割を説明しています。

// C3058_ErrorExample.c
// コンパイル時オプション: /openmp を使用
#include <stdio.h>
#include <omp.h>
// グローバル変数の宣言
int x, y, z;
// xとzをthreadprivateとして宣言
#pragma omp threadprivate(x, z)
void test() {
    // copyin句でxとyを各スレッドにコピー使用するが、
    // yはthreadprivate宣言されていないためコンパイルエラーが発生する
    #pragma omp parallel copyin(x, y)
    {
        // 並列領域内の処理(ここでは何も出力しません)
    }
}
int main(void) {
    test();
    return 0;
}
※このコードをコンパイルすると、コンパイラは次のようなエラーを出力します:
'symbol' : シンボルは、'copyin' 句の中で使用される前に 'threadprivate' として宣言されていません

エラー原因の解析

OpenMPのcopyin句とthreadprivate宣言の関係

OpenMPにおいて、copyin句は各スレッドの開始時にグローバル変数の初期値をコピーするために使用されます。

ただし、コピー対象となる変数は、各スレッドで独立した値を持つ必要があるため、必ずthreadprivate宣言されていなければなりません。

これは、変数の状態を各スレッドで保持するための要件です。

宣言順序の重要性

変数がcopyin句で使用される前に、必ずthreadprivateとして宣言する必要があります。

正しい宣言手順は、グローバル変数の定義の直後に#pragma omp threadprivateを記述し、その後に並列領域でcopyin句を利用する形となります。

数式で表すと、以下のようになります。

Global Variable#pragma omp threadprivate(変数)#pragma omp parallel copyin(変数)

この順序を守らないと、コンパイラが変数の状態を正しく管理できず、エラーが発生します。

宣言漏れによるエラー発生の背景

copyin句で指定した変数がthreadprivate宣言されていないと、コンパイラはその変数の並列実行時の各スレッドごとに独立した格納領域を確保できません。

そのため、初期状態のコピーが正しく行われず、エラーC3058が発生する仕組みになっています。

グローバル変数は通常のスコープで共有されるため、明示的に各スレッド用に識別しなければならないのです。

修正方法の解説

正しいthreadprivate宣言の記述方法

エラーを解消するためには、copyin句で利用する全ての変数について、必ず前もってthreadprivate宣言を行う必要があります。

例えば、変数ycopyin句で利用する場合は、以下のように#pragma omp threadprivate(x, y)と宣言します。

修正前と修正後のコード比較

以下に、エラーが発生する修正前のコードと、エラー解消後の修正後のコードを示します。

修正前

// C3058_ErrorExample.c
// コンパイル時オプション: /openmp を使用
#include <stdio.h>
#include <omp.h>
int x, y, z;
#pragma omp threadprivate(x, z)  // yが宣言されていない
void test() {
    #pragma omp parallel copyin(x, y)   // yに対してエラーが発生する
    {
         // 並列処理
    }
}
int main(void) {
    test();
    return 0;
}

修正後

// C3058_FixedExample.c
// コンパイル時オプション: /openmp を使用
#include <stdio.h>
#include <omp.h>
int x, y, z;
// すべての利用する変数をthreadprivateとして宣言する
#pragma omp threadprivate(x, y)
void test() {
    #pragma omp parallel copyin(x, y)
    {
         // 並列処理
    }
}
int main(void) {
    test();
    return 0;
}
※修正後のコードはコンパイルエラーが解消され、正常に並列領域が実行されます。

修正時の注意点

修正する際は、以下の点に注意してください。

  • copyin句で使用するすべての変数が、必ずthreadprivate宣言されているか確認してください。
  • 複数の変数を並列処理で利用する場合、必要な変数が抜け落ちていないかをリスト等で管理すると良いです。
  • 修正後は、必ず並列実行時に各スレッドに正しい初期状態がコピーされることをテストしてください。

応用とトラブルシューティング

他のOpenMPエラーとの関連性

OpenMPを利用する際には、copyin句やthreadprivate宣言に関連するエラー以外にも、変数のスコープや同期処理に起因するエラーが発生することがあります。

例えば、sharedクラスターに属する変数とthreadprivate変数との混在などが代表的なケースです。

各エラーは問題の根本原因が異なるため、エラーメッセージの内容を正確に読み解くことが重要です。

よくあるエラー事例の紹介

  • 変数がcopyin句で利用されているにも関わらず、threadprivate宣言が抜けている場合(C3058エラー)。
  • 宣言された変数名とcopyin句内の変数名が一致しない場合。
  • 複数の変数をまとめて宣言する際に、一部の変数だけthreadprivateとして宣言され、他の変数が宣言漏れしている場合。

各事例について、コードレビューやデバッグの際に設定の確認を行うとともに、エラーメッセージを手がかりに原因を特定することが有効です。

まとめ

この記事では、C3058エラーの概要、発生原因、正しいthreadprivate宣言の記述方法、およびcopyin句との関係について解説しました。

エラーが発生する背景や宣言順序の重要性、宣言漏れによりエラーが生じる理由を具体例を交えて説明しています。

サンプルコードを通して修正前後の違いを確認することで、エラー解消およびトラブルシューティングの手順が理解できます。

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