C# コンパイラ エラー CS0507 について解説 ― オーバーライド時のアクセス修飾子設定の注意点
CS0507 は、C# の継承において、基底クラスのメソッドをオーバーライドする際、アクセス修飾子を変更しようとすると発生するコンパイラ エラーです。
例えば、基底クラスで protected
として定義されたメソッドを、派生クラスで public override
とするなど、アクセスレベルを変更することは許可されずエラーとなります。
エラーを回避するには、基底クラスのアクセス修飾子と一致させる必要があります。
アクセス修飾子の基礎知識
C# におけるアクセス修飾子の種類
C# では、クラスやメンバーのアクセス範囲を制御するために、いくつかのアクセス修飾子が用意されています。
代表的なものは以下のとおりです。
public
どこからでもアクセスが可能です。
protected
同一クラスおよび派生クラス内からアクセスできます。
internal
同一アセンブリ内からアクセスが可能です。
private
同一クラス内のみアクセスが認められます。
protected internal
同一アセンブリ内または派生クラス内からアクセスできます。
これらはクラス設計やライブラリ作成時に重要な役割を果たします。
オーバーライド時のアクセス修飾子のルール
メソッドやプロパティのオーバーライドを行う場合、基底クラスで設定されたアクセス修飾子のルールを引き継ぐ必要があります。
基本的に、オーバーライドする際にアクセス修飾子を変更することは認められておらず、基底クラスで設定されているアクセスレベルと同じか、それよりも厳しい(アクセス範囲が狭い)修飾子にする必要があります。
特に、基底クラスで protected
として定義されたメンバーを、派生クラスで public
としてオーバーライドすると、コンパイラ エラー CS0507 が発生します。
このルールは、予想外のアクセスレベルの変更によるセキュリティや設計上の問題を防ぐために設けられています。
CS0507 エラーの原因
アクセス修飾子変更の禁止規則
C# では、オーバーライド時に基底クラスのメンバーのアクセス修飾子を変更することは認められていません。
つまり、基底クラスで定義されたアクセス範囲を超える変更を試みると、コンパイラは CS0507 エラーを出力します。
このエラーは、例えば protected
なメソッドを public
としてオーバーライドしようとした場合に発生します。
基底クラスと派生クラスのアクセスレベル比較
オーバーライドする際、派生クラスのメソッドのアクセスレベルは、基底クラスのメソッドと同等である必要があります。
不一致がある場合、C# コンパイラは以下のようなエラーメッセージを出力します。
「’function1′: ‘access’ の継承メンバー ‘function2’ をオーバーライドするときに、アクセス修飾子を変更できません」
このため、設計時には派生クラスでのアクセス範囲を意識する必要があり、基底クラスの設定と整合性を保つことが求められます。
コード例によるエラー事例の解説
基本例:protected メソッドのオーバーライド
サンプルコードの構造とポイント
以下は、基底クラスで protected
として定義されたメソッドを、派生クラスで public
にオーバーライドしようとしてエラーが発生する例です。
コード内のコメントでポイントを記述しています。
// CS0507_ErrorExample.cs
using System;
abstract public class BaseClass
{
// 基底クラスで protected として定義
protected virtual void SampleMethod()
{
// 基底クラスの実装(通常は処理内容が記述される)
Console.WriteLine("BaseClass.SampleMethod が呼ばれました");
}
}
public class DerivedClass : BaseClass
{
// オーバーライド時にアクセス修飾子を public に変更すると CS0507 エラーが発生する
public override void SampleMethod() // CS0507 エラーがここで発生
{
// 派生クラスでのメソッド実装
Console.WriteLine("DerivedClass.SampleMethod が呼ばれました");
}
public static void Main()
{
DerivedClass obj = new DerivedClass();
obj.SampleMethod();
}
}
// コンパイルエラー CS0507 が発生し、実行ファイルは生成されません
参照メタデータ事例:protected internal のオーバーライド
サンプルコードの詳細解説
次は、参照メタデータで定義された protected internal
のメソッドを、派生クラスでオーバーライドする際のエラー例です。
基底クラスでメソッドが protected internal
として定義されている場合、オーバーライドでは protected
として再定義する必要があります。
以下のサンプルコードは、間違ったアクセス修飾子でオーバーライドして CS0507 エラーが発生する例を示します。
// CS0507_MetadataError.cs
using System;
// 基底クラスがライブラリとして提供されていると仮定
abstract public class LibraryClass
{
// protected internal として定義されたメソッド
protected internal virtual void LibraryMethod()
{
Console.WriteLine("LibraryClass.LibraryMethod が呼ばれました");
}
}
// 派生クラスで LibraryClass を継承し、誤ったアクセス修飾子でオーバーライド
public class CustomClass : LibraryClass
{
// ここで protected internal のままオーバーライドすると CS0507 エラーが発生する可能性がある
protected internal override void LibraryMethod() // CS0507 エラーが発生
{
Console.WriteLine("CustomClass.LibraryMethod が呼ばれました");
}
public static void Main()
{
CustomClass instance = new CustomClass();
instance.LibraryMethod();
}
}
// コンパイルエラー CS0507 が発生し、実行ファイルは生成されません
エラー解消の手法
正しいアクセス修飾子の指定方法
CS0507 エラーを回避するためには、オーバーライド時に基底クラスのアクセス修飾子と同一の範囲で定義する必要があります。
たとえば、基底クラスで protected
と定義されている場合、派生クラスでのオーバーライドも protected
と記述します。
また、参照メタデータで定義されている場合は、基底クラスのアクセス修飾子に従い、適切なアクセスレベルに統一する必要があります。
修正例と開発時の注意点
以下は、先ほどのエラー例を正しく修正したコード例です。
基底クラスで protected
として定義されているメソッドを、派生クラスで protected
としてオーバーライドする方法です。
// CS0507_FixedExample.cs
using System;
abstract public class BaseClass
{
// 基底クラスで protected として定義
protected virtual void SampleMethod()
{
// 基底クラスの処理内容
Console.WriteLine("BaseClass.SampleMethod が呼ばれました");
}
}
public class DerivedClass : BaseClass
{
// 正しいオーバーライド:アクセス修飾子を変更していない
protected override void SampleMethod()
{
Console.WriteLine("DerivedClass.SampleMethod が呼ばれました");
}
public static void Main()
{
DerivedClass obj = new DerivedClass();
// 基底クラスのアクセスレベルに従い、同一クラス内から呼び出す
obj.InvokeMethod();
}
// 内部からアクセスできるラッパーメソッド
private void InvokeMethod()
{
// オーバーライドされたメソッドを呼び出す
SampleMethod();
}
}
BaseClass.SampleMethod が呼ばれました
DerivedClass.SampleMethod が呼ばれました
なお、開発時には基底クラスと派生クラスでのアクセス修飾子の整合性を常に確認することが重要です。
参照メタデータに関する留意点
外部ライブラリとの整合性
外部ライブラリから参照されるクラスでは、アクセス修飾子がライブラリ側で一貫して定義されているため、派生クラスはその設定を尊重する必要があります。
ライブラリの仕様に沿ったアクセスレベルでオーバーライドを行わないと、CS0507 エラーに加え、予期せぬ動作やセキュリティ上のリスクが生じる可能性があります。
適切な参照設定の手法
参照設定を行う際には、以下の点に注意してください。
- ライブラリで定義されているアクセス範囲を確認し、同じアクセス修飾子を用いる。
- 複数のアセンブリ間でクラスを共有する場合、アクセスレベルが正しく伝播しているか確認する。
- プロジェクト設定や参照ライブラリのバージョンに注意し、互換性を保つ。
以上の点を意識することで、CS0507 エラーを防ぐとともに、設計上の整合性を保つことができます。
まとめ
本記事では、C#におけるアクセス修飾子の種類と、オーバーライド時に基底クラスのアクセスレベルと整合性を保つ重要性を解説しました。
特に、基底クラスで定義されたアクセス修飾子を変更するとCS0507エラーが発生する理由、実際のコード例や修正方法、外部ライブラリとの参照時に注意すべき点について簡潔に説明しました。
これにより、エラー原因を理解し、正しいアクセス修飾子を指定できる知識が得られます。