C言語およびC++で発生するコンパイラエラー C3293について解説
Visual Studioでのコンパイラエラー C3293 は、C++/CLIプロジェクトで既定のプロパティやインデクサーへのアクセス方法が誤っている場合に発生します。
従来は「default」キーワードを用いる回避策がありましたが、C++11の導入に伴いVisual Studio 2017以降では正しい記述が求められるようになりました。
本稿では、エラーの原因と対策について簡潔に説明します。
エラー C3293の原因
このエラーは、C++/CLIで既定プロパティ(インデクサー)にアクセスする際に誤った記述を行った場合に発生します。
C++11規格の導入以降、既定プロパティにアクセスするための記述方法に変更があったため、従来の書き方をそのまま適用するとコンパイルエラーとなるケースが見受けられます。
C++/CLIにおける既定プロパティの利用方法
C++/CLIでは、クラスにおいてインデクサー(既定プロパティ)を定義する際に、通常はproperty
キーワードを使用してgetおよびsetアクセサーを実装します。
既定プロパティは、オブジェクトを配列のように扱うための仕組みとして利用され、コード中では以下のように定義されることが一般的です。
- プロパティ名として一般に
Item
を用いる - getアクセサーで値を返し、setアクセサーで値を設定する
以下は基本的な定義方法の例です。
“default”キーワードの誤用による問題
従来は、Visual Studio 2015以前において、既定プロパティにアクセスする際にdefault
キーワードを使用することが一部認められていました。
しかし、C++11ではdefault
は予約語として導入されたため、Visual Studio 2017以降の環境ではこの記述方法がエラーとなります。
誤ってdefault
キーワードを利用すると、下記のようなコンパイルエラー「コンパイラ エラー C3293」が発生してしまいます。
Visual Studioバージョンの違い
Visual Studioのバージョンによって、既定プロパティの定義およびアクセス方法に違いが見られます。
各バージョン固有の動作を理解することは、エラー回避において重要です。
Visual Studio 2015以前での動作
Visual Studio 2015以前では、既定プロパティにアクセスするためにdefault
キーワードを使用する記述も一部許容されていました。
具体的には、以下のようなコードが存在していても、コンパイル時にエラーが発生しない場合がありました。
- 例:
ic->default[0] = 21;
ただし、これらの書き方は標準仕様に沿っていないため、将来的な環境との互換性を考えると推奨されません。
Visual Studio 2017以降での変更点
Visual Studio 2017以降では、C++11規格の変更に対応するため、既定プロパティにアクセスする際の記述方法が厳格になっています。
具体的には、インデクサーにはdefault
ではなくItem
プロパティとして定義し、アクセスする必要があります。
C++11規格導入による影響
C++11規格では、default
が予約語として導入されたため、従来の回避策としてのdefault
キーワードが使用できなくなりました。
そのため、Visual Studio 2017以降では、以下のような記述を避ける必要があります。
- 誤:
ic->default[0] = 21;
標準に沿った記述方法としては、Item
プロパティを利用する方法へ変更する必要があります。
既定プロパティとインデクサーの詳細解説
C++/CLIでの既定プロパティ(インデクサー)の定義および利用方法について、正しい記述例と誤った記述例を交えながら詳しく解説します。
C++/CLIでのプロパティ定義方法
クラスにおいてプロパティを定義する際は、property
キーワードを使用して、getおよびsetアクセサーを実装します。
特に、インデクサーとして利用する場合は、添字アクセスのための定義が必要になります。
正しい記述例
以下は、Visual Studio 2017以降の環境で正しく動作するインデクサーの定義例です。
プロパティ名にはItem
を使用し、オブジェクトを配列のように扱えるように実装しています。
#include <iostream>
using namespace System;
// インデクサーとして定義したクラス
ref class IndexerClass {
public:
// 正しいインデクサーの定義(プロパティ名は Item)
property int Item[int] {
int get(int index) {
// 添字に対応した値を返す(サンプル実装)
return 0;
}
void set(int index, int value) {
// 添字に対応した値を設定する(サンプル実装)
}
}
};
int main() {
IndexerClass^ ic = gcnew IndexerClass;
// 正しいアクセス方法:Itemプロパティを使用
ic->Item[0] = 21;
Console::WriteLine("Value: {0}", ic->Item[0]);
return 0;
}
Value: 0
誤った記述例の問題点
かつては、以下のようにdefault
キーワードを使ってインデクサーを定義する記述が存在しましたが、この書き方はC++11対応環境ではエラーとなります。
特に、Visual Studio 2017以降ではコンパイラエラー C3293 が発生する原因となります。
#include <iostream>
using namespace System;
ref class IndexerClass {
public:
// 誤った定義:defaultキーワードを利用しているためエラーが発生する可能性あり
property int default[int] {
int get(int index) {
return 0;
}
void set(int index, int value) { }
}
};
int main() {
IndexerClass^ ic = gcnew IndexerClass;
// 誤ったアクセス:defaultプロパティによる添字アクセス
ic->default[0] = 21;
Console::WriteLine("Value: {0}", ic->default[0]);
return 0;
}
この記述では、C++11の仕様に反してdefault
キーワードを使用するため、最新の環境ではコンパイル時にエラーが発生します。
インデクサーの利用方法
インデクサーは、オブジェクトを配列のように添字アクセスするための仕組みです。
正しい定義と利用方法を理解することで、エラーを回避しつつコードの可読性を向上させることができます。
アクセス方法の解説
一般的に、インデクサーへアクセスする場合は以下の点に注意してください。
- プロパティ名として
Item
を用いる - 添字アクセスは、
ic->Item[添字]
という形式で記述する - 参照渡しや値の取得、設定に対応するgetおよびsetが正しく実装されていること
これにより、従来の誤ったdefault
キーワードの使用を避けることができます。
エラーパターンの要因
エラーが発生する主な要因は、従来まで使われていたdefault
キーワードの誤用です。
以下の点がエラーパターンとして挙げられます。
default
キーワードが予約語となっているため、インデクサーアクセスに利用するとC++11以降の環境でエラーになる- Visual Studio 2015以前との挙動の違いから、コード移行時に問題が顕在化する
エラー修正の実際例
エラー修正にあたっては、原因を正しく把握し、コード中の記述を標準に沿った形に修正することが重要です。
以下に、具体的なサンプルコードを用いながら、誤記述と正しい修正方法を解説します。
サンプルコードから見る原因の分析
エラー C3293が発生する原因は、インデクサーにアクセスする際にdefault
キーワードを使用している点にあります。
Visual Studio 2017以降の環境では、default
は予約語として扱われるため、誤った指定によりエラーとなります。
誤記述の具体例
以下のコードは、default
キーワードを利用しているためエラーが発生するサンプルです。
#include <iostream>
using namespace System;
ref class IndexerClass {
public:
// 誤った定義:defaultキーワードを使用している
property int default[int] {
int get(int index) {
return 0;
}
void set(int index, int value) { }
}
};
int main() {
IndexerClass^ ic = gcnew IndexerClass;
// 誤ったアクセス:defaultプロパティを使用しているためエラー
ic->default[0] = 21;
Console::WriteLine("Value: {0}", ic->default[0]);
return 0;
}
修正手法の解説
修正するためには、インデクサーとして定義するプロパティ名をdefault
からItem
に変更し、アクセス時もItem
を使用するように修正します。
以下は、修正後の正しいサンプルコードです。
#include <iostream>
using namespace System;
ref class IndexerClass {
public:
// 正しい定義:プロパティ名を Item に変更
property int Item[int] {
int get(int index) {
return 0;
}
void set(int index, int value) { }
}
};
int main() {
IndexerClass^ ic = gcnew IndexerClass;
// 正しいアクセス:約束された Item プロパティを使用する
ic->Item[0] = 21;
Console::WriteLine("Value: {0}", ic->Item[0]);
return 0;
}
Value: 0
修正後の検証ポイント
エラー修正後のコードにおいては、以下の点に注意して動作確認を行う必要があります。
実装上の留意点
- プロパティ名は
Item
に統一すること - インデクサーへのアクセス方法が配列風になっていることを確認する
- getおよびsetアクセサーが適切に動作していることを確かめる
確認事項の整理
- コンパイルエラー C3293 が発生しないこと
- 添字アクセスによる値の取得・設定が正しく行われること
- Visual Studio 2017以降での標準仕様に沿ったコードとなっていること
以上の検証を通じて、コードの動作が正しいことを確認できれば、エラーの修正が成功したと判断できます。
まとめ
この記事では、C++/CLIにおける既定プロパティ(インデクサー)の正しい定義方法と、誤った記述により発生するコンパイラエラー C3293 の原因について解説しました。
Visual Studio 2015以前と2017以降での動作の違いや、C++11規格の導入による影響、正しいプロパティ記述方法と誤記述例、そしてエラー修正の具体例を通して、エラー発生要因と修正手法が理解できる内容となっています。
これにより、最新環境での正しいインデクサー実装が可能になります。