【C++】OpenCVで実践する適応型しきい値処理による高精度画像二値化テクニック
C++でOpenCVのadaptiveThreshold
関数を用いることで、各領域の明るさに合わせた二値化が可能です。
入力画像の周囲から動的にしきい値を計算し、固定しきい値では難しい局所的な明暗の違いに対応します。
これにより、複雑な照明環境での画像認識がスムーズになるため、目的の画像抽出処理が効率的に進められるです。
適応型しきい値処理の基本
固定しきい値との違い
固定しきい値処理は、画像全体に同じ値をもって二値化するため、局所的な明るさの変化に対応しにくい面があります。
一方、適応型しきい値処理は、各ピクセルの周囲の輝度情報に基づいてしきい値を決めるため、下記のような利点が感じられます。
- 周辺の輝度情報を利用するので、背景と前景のコントラストが不均一な画像でも比較的自然な二値化が可能
- 局所的な明るさの変動に柔軟に対応でき、暗部や明部が混在する画像にも対応しやすい
ただし、計算負荷が高いことや、パラメータの選定が難しい場合も見受けられるので、注意が必要です。
適応型手法の利点と課題
適応型手法は、各領域に合わせたしきい値設定ができるため、固定しきい値処理では見落としがちなディテールの保持に役立ちます。
しかし、局所領域のサイズblockSize
や定数Cの選定が画像ごとに影響するため、試行錯誤が必要になる場面もあります。
また、計算量がやや増すため、処理速度を意識する場合は最適化を検討する必要があります。
OpenCVにおける適応型しきい値処理の機能
adaptiveThreshold関数の概要
OpenCVでは、adaptiveThreshold
関数を使い、手軽に適応型しきい値処理が実現できます。
この関数は、入力画像の局所的な平均値や加重平均を算出することで、各ピクセルに適用するしきい値を動的に決定します。
しきい値処理のタイプとしては、THRESH_BINARY
やTHRESH_BINARY_INV
が選択可能なため、求める画像の表現に合わせて調整できます。
関数パラメータの詳細
adaptiveThreshold関数には複数のパラメータがあり、それぞれが処理結果に大きな影響を与えます。
入力画像と出力画像の役割
src
は8ビットのグレースケール画像が必要です。カラフルな画像の場合、グレースケール変換処理が事前に必要になりますdst
は処理後の画像が格納される領域となっています。入力画像と同じサイズと型で出力されます
最大値、ブロックサイズ、定数Cの意味
maxValue
は、しきい値以上と判断されたピクセルに与えられる値です。一般的には255が使われますblockSize
はしきい値を算定する際の近傍領域のサイズで、奇数値(例:3, 5, 7など)を指定します。小さい値の場合、局所情報を細かく反映できますが、ノイズの影響が大きくなる可能性がありますC
は算出された平均値または加重平均から減算される定数で、画像の特徴に合わせて微調整する必要がある値です。画像が明るすぎる場合や暗すぎる場合に、この値の調整が効果を発揮します
アダプティブ手法と二値化タイプ
adaptiveThreshold関数では、以下の手法と二値化タイプが設定可能です。
- アダプティブ手法
ADAPTIVE_THRESH_MEAN_C
: 近傍領域の単純な平均値から定数Cを引いた値をしきい値として使用しますADAPTIVE_THRESH_GAUSSIAN_C
: 近傍領域のガウス加重平均からCを引いた値を使用するため、より滑らかなしきい値の変化が得られる場合があります
- 二値化タイプ
THRESH_BINARY
: しきい値以上のピクセルにmaxValue
を割り当て、その他のピクセルを0に設定しますTHRESH_BINARY_INV
: しきい値以上のピクセルを0に、しきい値未満のピクセルにmaxValue
を設定します
ADAPTIVE_THRESH_MEAN_C の特性
ADAPTIVE_THRESH_MEAN_C
は、単純な平均値を用いるため処理が高速であり、計算リソースをあまり消費しません。
画像のコントラストが比較的均一な場合、十分な処理精度が得られることが多く、パラメータの調整も直感的に行いやすいという特徴があります。
ADAPTIVE_THRESH_GAUSSIAN_C の特性
ADAPTIVE_THRESH_GAUSSIAN_C
では、ガウス加重平均を使用して局所領域のしきい値を決定するため、境界部分の滑らかな変化を再現しやすくなります。
下記に、この手法を利用したサンプルコードの例を示します。
#include <opencv2/opencv.hpp>
#include <iostream>
int main() {
// 画像をグレースケールで読み込む
cv::Mat src = cv::imread("sample.jpg", cv::IMREAD_GRAYSCALE);
if (src.empty()) {
std::cerr << "画像の読み込みに失敗しました" << std::endl;
return -1;
}
cv::Mat dst;
// blockSizeは奇数値で指定。画像の特性に合わせて調整が必要
int blockSize = 11;
// Cは平均から引く定数。実際の画像に合わせて微調整する
double C = 2.0;
// ADAPTIVE_THRESH_GAUSSIAN_C を使用した適応型しきい値処理
cv::adaptiveThreshold(src, dst, 255, cv::ADAPTIVE_THRESH_GAUSSIAN_C,
cv::THRESH_BINARY, blockSize, C);
// 結果を表示するウィンドウを作成
cv::imshow("Original Image", src);
cv::imshow("Adaptive Gaussian Threshold", dst);
cv::waitKey(0);
return 0;
}
[ウィンドウに "Original Image" と "Adaptive Gaussian Threshold" の画像が表示される]

このサンプルコードでは、sample.jpg
というグレースケール画像を読み込み、ガウシアン加重平均を用いた適応型しきい値処理を実施しています。
blockSize
とC
の数値は、画像の特性や目的に合わせて変更できます。
パラメータ調整と最適化のポイント
ブロックサイズの選定基準
ブロックサイズは、対象とする局所領域の範囲を決定するため、画像の構造やサイズに影響します。
以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 小さいブロックサイズ
- 細部の変化に対応しやすい
- ノイズの影響が大きくなる可能性がある
- 大きいブロックサイズ
- 広い領域の平均を反映するため、ノイズの影響が軽減される
- ローカルな詳細が失われる可能性がある
画像ごとに試行錯誤しながら、適切なサイズを選定することが大切です。
定数Cの調整方法
定数Cは、算出された平均値や加重平均値から引くことでしきい値を補正するパラメータです。
画像が全体的に明るい場合や暗い場合に、しきい値を微調整するために利用します。
下記の方法で調整が可能です。
- 数値が大きいと、より低いしきい値になり、暗部が増える
- 数値が小さいと、しきい値が高くなり、明部が目立つ
画像の状態を確認しながら、複数の値を試すことがおすすめです。
画像特性に合わせたパラメータ最適化
画像の種類や特性に応じて、ブロックサイズと定数Cの最適な組み合わせは異なります。
以下のような点に注意してください。
- 被写体の大きさや細部の重要性に合わせて、局所的な情報が反映されるパラメータを選ぶ
- 複数のパラメータ設定を試した上で、視覚的な結果や数値指標(例えば、エッジ検出結果など)を比較する
最適なパラメータ設定が決まった際は、同条件を他の類似画像にも適用することで、安定した処理が期待できます。
適応型しきい値処理の応用事例と対処方法
照明条件が不均一な画像への対応
照明条件が一定でない画像では、固定のしきい値処理だと部分的に極端な二値化が進むことがあります。
適応型しきい値処理は各領域ごとに閾値を決定するため、以下のような効果が得られます。
- 明るい部分と暗い部分の両方に対応できる
- 局所的なコントラストが保存され、細部が浮かび上がる
不均一な照明環境下の画像処理には、この方法が特に有用です。
ノイズ影響の緩和と処理精度向上
画像にノイズが含まれる場合、局所的なしきい値の変動が大きくなりがちです。
そんなときは前処理としてノイズ除去フィルタ(ガウシアンフィルタやメディアンフィルタなど)の利用が効果的です。
- ノイズ除去フィルタ
- 画像の細部情報を保ちながら、不要なノイズを低減できる
- 適切なパラメータ設定
- ノイズ影響を受けにくいブロックサイズとC値の選定が肝心
これらの対策を組み合わせることで、全体としてよりきれいな二値化画像が得られます。
結果のばらつきの原因と改善策
適応型しきい値処理の結果は、パラメータ設定や画像の特性により変動することが多くあります。
結果のばらつきが気になる場合は、以下の点を確認してみると良いです。
- 適切な前処理が行われているか
- 使用しているブロックサイズや定数Cが画像に合致しているか
- 画像のコントラストや明暗の分布が均一か
これらの点を見直すことで、より安定した処理結果が期待できます。
トラブルシューティングと注意点
画像前処理の効果確認
適応型しきい値処理を実施する前に、画像の輝度やコントラストの状態を確認することが大切です。
下記のような前処理を試すと、結果が改善する場合があります。
- ガウシアンフィルタやメディアンフィルタによるノイズ除去
- 画像のヒストグラムを利用した輝度調整
前処理を工夫することで、しきい値処理後の画像がより鮮明になる可能性が高まります。
パラメータ誤設定時のリスク管理
設定したパラメータが画像に適していないと、処理結果に大きなばらつきが生じる恐れがあります。
以下の点を参考にしながら、パラメータのテストを行いましょう。
- 複数のパラメータ組み合わせを試し、最も適したものを選定する
- 予備の画像を用いて、設定値が安定しているか確認する
不安な場合は、画像全体の統計量や局所的な評価指標を取得しながら作業するのもおすすめです。
処理結果の検証方法と改善アプローチ
適応型しきい値処理後の画像を目視で確認することに加え、数値的な評価手法も活用するとよいです。
例えば、エッジ検出の結果や領域統計を確認することで、処理が適切に行われたかどうかを判断できます。
- エッジ検出アルゴリズムとの組み合わせで、細部の抽出状況を確認
- 出力画像の平均輝度やヒストグラムの変化から、パラメータ設定の適性を評価
こうした手法を用いることで、パラメータの調整がより効果的になります。
まとめ
今回の記事では、適応型しきい値処理における基本からOpenCVでの実装、パラメータの調整方法、そして具体的な応用事例やトラブルシューティングのポイントに至るまで、幅広い内容を紹介しました。
固定しきい値と比較して柔軟な対応が可能な点や、各パラメータの役割について理解を深めながら、実際の画像処理に取り組んでもらえると嬉しいです。
皆さんのプロジェクトにおいて、画像の品質向上やデータの見やすさが実現できることを願っています。