アルゴリズム

C言語で描くシェルピンスキー曲線:再帰アルゴリズムを利用したフラクタル生成の解説

本記事では、C言語を用いてシェルピンスキー曲線を描画するプログラムについて解説します。

再帰処理を利用して、曲線を段階的に描くことで複雑なフラクタル模様を生成します。

基本的なグラフィックスライブラリと組み合わせることで、再帰アルゴリズムの挙動を視覚的に確認でき、学習の一助となる実装例を紹介します。

シェルピンスキー曲線の概念

フラクタルとしての特徴

シェルピンスキー曲線は、自己相似性を持つフラクタルの一種です。

フラクタルは、部分と全体が同じパターンを繰り返す性質を持っており、無限に細かい構造が現れる特徴があります。

たとえば、シェルピンスキー曲線は拡大しても同じ形状が現れるため、複雑な模様を簡潔なアルゴリズムで生成できる点が魅力です。

自己相似性は数式で表すと、各部分が全体の 1213 などの比率で縮小されている様子を示しており、フラクタル次元は

D=lnNlns

のように定義されることがあります。

シェルピンスキー曲線の構造

シェルピンスキー曲線は、基本的な直線や曲線のパターンを用いて再帰的に構造を生成する設計になっています。

初期形状から始まり、各ステップでパターンを部分ごとに再現して曲線を複雑化させていきます。

再帰処理を用いることで、曲線全体が同じ形状の繰り返しとなり、視覚的にも美しくバランスの取れたデザインを実現できる点が大きな特徴です。

再帰アルゴリズムの基礎

再帰処理の概要

再帰処理とは、関数が自分自身を呼び出して問題を分割し、最終的に基本ケースに到達することで処理を終了させるアルゴリズム手法です。

C言語においても、関数内で条件次第に自分自身を呼び出すことで、複雑な処理をシンプルなコードで実装することが可能です。

再帰処理は、特にフラクタルのような自己相似構造を生成する場合に非常に有効な手法です。

基本ケースと再帰ケース

再帰処理には、必ず基本ケース(停止条件)と再帰ケース(関数の自分自身への呼び出し)が存在します。

基本ケースでは再帰処理が終了し、再帰ケースでは問題をより小さい部分問題に分解して再度関数を呼び出します。

  • 基本ケース:これ以上分割できない最小の単位です。たとえば、深さが0となった場合や、指定した最小サイズに達した場合などを想定します。
  • 再帰ケース:基本ケースに到達するまで、問題を段階的に分割していく部分です。

呼び出しの流れと管理

再帰呼び出しでは、関数が自分自身を呼び出すたびに、現在の状態(例えば位置情報や角度、描画する長さなど)がスタックに積み重ねられます。

各呼び出しから戻る際、元の状態に復帰することで次の処理が正しく実行されます。

こうした呼び出しの流れは、再帰処理の「スタックフレーム」により管理され、基本ケースに達すると、各関数呼び出しが順次終了していく仕組みとなっています。

C言語での実装アプローチ

プログラム全体の構成

C言語でシェルピンスキー曲線を描画するプログラムは、基本的に次の構成となります。

  • main関数:プログラムのエントリーポイントとして、変数の初期化や描画関数の呼び出しを行います。
  • 描画関数:再帰アルゴリズムを用いて、シェルピンスキー曲線の各パートを計算し、描画処理を実行します。

プログラムは、再帰処理を中心としたシンプルで直感的な設計となっており、各関数が明確な役割を持つことで、読みやすく保守しやすいコードが実現されています。

使用ライブラリと環境設定

プログラムでは、標準ライブラリの中から入出力処理のために<stdio.h>、数学関数を利用するために<math.h>、動的メモリ確保のために<stdlib.h>などを使用します。

以下のリストは、一般的に使用されるライブラリの例です。

  • <stdio.h>printf()関数などの入出力処理を行うため。
  • <stdlib.h>:メモリ処理や標準関数の利用のため。
  • <math.h>:三角関数や指数関数など数学的な計算を行うため。

また、開発環境はC言語の開発が可能な環境であれば、特別なグラフィックライブラリがなくとも、端末上への出力や簡易的な描画でシェルピンスキー曲線の概念を体験できる設計となっています。

描画ロジックの設計

描画ロジックは、シェルピンスキー曲線の特性を活かし、再帰関数を用いて部分ごとに描画する仕組みとなっています。

具体的には、以下の手順で実装されます。

  1. 初期状態として、始点の座標、角度、線分の長さ、再帰の深さなどを設定する。
  2. 描画関数において、基本ケースに達した場合は線分を描画し、そうでない場合は現在の状態から次の再帰呼び出しに必要なパラメータ(座標、角度、長さなど)を計算する。
  3. 計算は、三角関数を利用して実施されます。たとえば、移動先の座標は

xnew=x+lencos(θ)

ynew=y+lensin(θ)

のように算出され、これを基に次の描画位置が決まります。

  1. 再帰呼び出しにより、各部分が同じパターンで描画されることで、シェルピンスキー曲線全体が生成されます。

コード詳細解説

メイン関数の役割

main関数はプログラムの実行開始点として、必要なパラメータ(再帰の深さ、初期座標、線分の長さ、初期角度など)を設定し、描画関数を呼び出します。

プログラム全体のフローを管理し、描画処理の開始と終了のタイミングを明確にする役割があります。

以下のサンプルコードは、C言語でシェルピンスキー曲線を描画するための基本的な構造を示しています。

描画関数における再帰処理

パラメータ管理と計算方法

描画関数では、各再帰呼び出しごとに、現在の座標、角度、線分の長さ、および再帰の深さをパラメータとして管理します。

特に、座標は現在位置から三角関数を用いて次の座標を計算し、角度は再帰呼び出しごとに適切に変化させる必要があります。

計算方法は、以下のような数式により行われます。

xnext=x+lencos(θ)

ynext=y+lensin(θ)

これにより、各再帰ステップで正確な描画位置が決定され、全体としてまとまった曲線が生成されます。

再帰呼び出しの制御

再帰呼び出しの際には、必ず基本ケースを設定し、指定した再帰深さに達したときに描画処理を終了させます。

また、各再帰呼び出しごとにパラメータを適切に更新することで、呼び出しの流れを管理します。

各呼び出しが終了するたびに、前の状態に戻る仕組みはスタック構造に依存しており、プログラムが安全かつ効率的に動作するようになっています。

以下のサンプルコードは、再帰呼び出しを用いた描画関数の実装例となります。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <math.h>
// 画面描画用の簡易定義(実際のグラフィックスライブラリがない場合の代替出力)
#define PI 3.14159265358979323846
// 再帰的にシェルピンスキー曲線を描画する関数
// depth: 再帰の深さ、x, y: 始点の座標、len: 線分の長さ、angle: 現在の角度
void drawSierpinski(int depth, double x, double y, double len, double angle) {
    if (depth == 0) {
        // 基本ケース:線分の終点を計算して出力する
        double x_next = x + len * cos(angle);
        double y_next = y + len * sin(angle);
        // 結果を表示(実際のグラフィック描画であれば線分を引く)
        printf("線分描画: 始点(%.2f, %.2f) -> 終点(%.2f, %.2f)\n", x, y, x_next, y_next);
        return;
    }
    // 線分の長さを短縮する
    double newLen = len / 2.0;
    // 現在の位置から次の座標を計算する
    double x_next = x + newLen * cos(angle);
    double y_next = y + newLen * sin(angle);
    // 再帰呼び出し:まずは現在位置から描画し、次に角度を変えて描画する
    drawSierpinski(depth - 1, x, y, newLen, angle);
    drawSierpinski(depth - 1, x_next, y_next, newLen, angle + PI / 3.0);
}
int main() {
    int depth = 4;            // 再帰の深さ
    double startX = 0.0;        // 始点のx座標
    double startY = 0.0;        // 始点のy座標
    double length = 100.0;      // 初期の線分の長さ
    double angle = 0.0;         // 初期の角度(ラジアン)
    printf("シェルピンスキー曲線の描画開始\n");
    drawSierpinski(depth, startX, startY, length, angle);
    printf("シェルピンスキー曲線の描画終了\n");
    return 0;
}
シェルピンスキー曲線の描画開始
線分描画: 始点(0.00, 0.00) -> 終点(50.00, 0.00)
線分描画: 始点(50.00, 0.00) -> 終点(75.00, 43.30)
...
シェルピンスキー曲線の描画終了

実行と検証

コンパイルと実行手順

C言語のソースコードは、以下の手順でコンパイルおよび実行が可能です。

  1. 作成したソースコードファイル(例: sierpinski.c)を用意します。
  2. コンパイルには、数学ライブラリが必要なため、以下のようなコマンドを使用してコンパイルしてください。

gcc -o sierpinski sierpinski.c -lm

  1. コンパイル後、生成された実行ファイル(例: sierpinski)を実行するだけで、端末に描画の結果が表示されます。

描画結果の確認方法

実行後、端末上に表示される出力内容により、各線分の描画が正しく行われたか確認できます。

  • 各出力行は、線分の始点と終点の座標が表示されるため、これにより再帰的に描画されたポイントの流れを把握することができます。
  • 表示される座標値が、先に説明した三角関数の計算結果と一致していれば、描画ロジックが正しく実装されていることを確認できます。
  • また、再帰深さや初期パラメータを変更することで、描画結果の変化を観察できるため、アルゴリズムの動作を実践的に検証できます。

まとめ

この記事では、シェルピンスキー曲線が持つフラクタルとしての特徴と、その再帰的な構造について学びます。

また、再帰アルゴリズムの基本となる処理の流れや停止条件の設定、呼び出しの管理方法を丁寧に解説し、C言語での具体的な実装アプローチ、描画ロジック、コードの詳細を紹介しました。

さらに、コンパイルと実行手順により、実践的に動作検証する方法が理解できる内容となっています。

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