C言語で実装するマン‐ホイットニーU検定の解説:順位を用いた非パラメトリックな2群間比較手法について解説
本記事ではC言語を用いてマン‐ホイットニーU検定の実装方法を解説します。
マン‐ホイットニーU検定は順位を利用した非パラメトリックな検定手法で、2群間の比較に適用されます。
具体的な実装例を通して、検定の基本とC言語での実装方法を分かりやすく紹介します。
マン‐ホイットニーU検定の基礎知識
非パラメトリック検定の特徴
非パラメトリック検定は、母集団の分布に明確な前提条件を設けずに比較検定を行う手法です。
この検定方法は、正規分布など特定の分布を仮定しないため、データの分布が不明な場合やサンプルサイズが小さい場合にも適用できる点が魅力です。
また、順位情報を利用して解析を進めるため、外れ値や異常値の影響を受けにくい性質があります。
このため、分布の形状に依存せず、2群間の比較を行う際に有用です。
マン‐ホイットニーU検定の基本
マン‐ホイットニーU検定は、2つの独立したサンプルが同一の母集団から抽出されたかどうか検定するための非パラメトリックな手法です。
この検定では、全データに順位を付けて、各群の順位和をもとに統計量を計算します。
たとえば、片側検定や両側検定に対応しており、群間の中心傾向に差があるかを明らかにするために用いられます。
また、サンプルサイズが十分に大きい場合は、正規分布に近似して解釈することが可能です。
順位計算と統計量のアルゴリズム解説
順位付けの手法
マン‐ホイットニーU検定に先立って、全てのデータに対して順位を付ける必要があります。
この手法では、各データの値を昇順に並べ、その順位を各サンプルに割り当てます。
同一値が存在する場合には、各順位の平均値を使用することが一般的です。
この工程により、データの正確な分布形状ではなく、順位の情報だけから群間の差を検出することが可能になります。
ランク付け方法と計算例
たとえば、以下の数値データがあるとします。
- グループ1:3, 1, 4
- グループ2:2, 5, 6
まず、全てのデータを合わせて昇順に並べると、1, 2, 3, 4, 5, 6となります。
この場合、順位はそれぞれ1位、2位、3位、4位、5位、6位となりますが、もし重複する値があれば、その順位の平均を求めます。
各グループにおける順位和を計算するために、グループ1の順位は1, 3, 4となり、和は8です。
このようにして各群の順位和を求め、後に統計量を算出する準備を進めます。
U統計量の算出方法
マン‐ホイットニーU検定では、各グループの順位和からU統計量を計算することで、群間の比較を行います。
まず、各グループの順位和を算出し、
そのうえで、グループ1のU統計量は、以下の式で計算されます。
数式による計算:
ここで、
同様にグループ2についても計算でき、得られたU統計量を用いて、帰無仮説の検定を行います。
結果として、統計量が臨界値を超えるかどうかにより、群間の差異の有無が判断されます。
C言語による実装アプローチ
開発環境と前提条件
本実装は、標準Cライブラリを利用して、GNU Cコンパイラ(gcc)など一般的なC言語の開発環境で動作する前提です。
特定のライブラリに依存せずに実装できるため、環境構築は比較的簡単です。
また、データは数値の配列としてメモリ上に保持され、各要素の値を利用して順位計算とU統計量の算出を行います。
入力データの前処理と準備
入力データは、検定対象となる2群の数値データがそれぞれ配列として用意されます。
サンプルコードにおいては、以下のような手順で前処理を行います。
- 各群のデータを1つの配列に統合する
- 各データに対応するグループ識別子を設定する
- データの昇順ソートを実施する
これにより、正しく順位が付けられるように整形し、以降の統計量計算に備えます。
コード構造と主要な関数
プログラムは、主に以下の主要な関数で構成されます。
順位計算関数の実装
この関数は、入力された全データに対して昇順ソートを行い、それぞれのデータに順位を割り当てる役割があります。
同一の値がある場合は、その順位の平均値を計算して割り当てます。
関数内では、ソートアルゴリズムとして、例えばクイックソートやマージソートを利用しやすい設計となっています。
U統計量計算関数の実装
この関数では、各グループに属するデータの順位和を計算し、先述の式
を基にU統計量を求めます。
関数は入力として、各グループのデータ数と順位の配列を受け取り、計算結果を返すように設計されます。
エラーチェックと最適化の工夫
本実装では、以下の点に注意してエラーチェックや最適化を実施しています。
- データ件数が0や極端に小さい場合のチェック
- ソート処理における境界条件の確認
- メモリアクセスの安定性の確保
- 計算過程における数値オーバーフローへの対策
これらの対策により、安全かつ効率的なプログラム動作が実現されます。
実装例と動作確認
サンプルコードのフロー解説
サンプルコードでは、メイン関数内で以下の手順で処理が進みます。
- グループ1とグループ2のデータを定義
- 両グループのデータを統合し、各データにグループ識別子を付与
- 統合データの昇順ソートを実施し、各データに順位を割り当てる
- グループ別に順位和を抽出
- U統計量を計算し、結果を画面に出力
各ステップには、分かりやすいコメントをコード内に記述しており、誰でも同様の流れで実装できるよう工夫されています。
結果の検証と動作確認手法
動作確認は、以下の手法で実施できます。
- 既知のデータセットを用いて、手計算とプログラム出力結果の比較を実施
- 境界条件に対するテストケースを複数用意し、安定した判定結果が得られるか確認
- 出力されたU統計量と計算過程の中間結果をログに出力し、各関数の正確性を検証
このような手法を用いることで、実装したプログラムが正しく動作することを明確に確認できます。
まとめ
この記事を通じて、マン‐ホイットニーU検定の基本と非パラメトリック検定の特徴、全データを順位付けする手法とその計算例、そしてU統計量の算出方法が理解できます。
また、C言語による実装アプローチを具体的に示し、入力データの前処理、主要関数の設計、エラーチェックと最適化の工夫についても学ぶことができます。