C言語で発生するC4799警告の原因と対策について解説
c言語で発生するC4799警告は、MMX命令を使用した関数でEMMS命令や_mm_emptyが記述されていない場合に表示されます。
MMX命令実行後は、マルチメディア用のタグワードをクリアするために、これらの命令を必ず挿入する必要があります。
なお、ivec.hを使用する際に出る警告は誤報の可能性があり、_SILENCE_IVEC_C4799を定義することで無効化できます。
C4799警告の発生原因
MMX命令とEMMS命令の関係
C言語でMMX命令を使用するコードを書くと、MMXレジスタは特殊な状態になり、以降の浮動小数点演算に影響を及ぼす恐れがあります。
このため、MMX命令を実行した関数の末尾には、MMXの状態をクリアするEMMS命令を置く必要があります。
EMMS命令は、MMX命令によって設定されたマルチメディアタグワード(状態ビット)をリセットするための命令です。
正しくクリアされないと、後続の命令実行時に予期しない挙動が発生する可能性があるため、コンパイラは警告C4799を出力して、EMMS命令の不足を知らせます。
_mm_empty命令の必要性
_mm_empty命令は、EMMS命令と同様にMMX命令使用後にMMX状態をリセットするための組み込み関数です。
開発者は、MMX命令が使われた後に_mm_emptyを呼び出すことで、コンパイラからの警告を回避し、後続の演算が正しく行われるように配慮する必要があります。
この命令を用いることで、コードの安全性と信頼性が向上します。
ivec.h使用時の誤警告について
ivec.hを利用する場合、コードの先頭またはプロジェクト内で_SILENCE_IVEC_C4799を定義することで、C4799警告を抑制できます。
ただし、この方法はEMMS命令の不足そのものを解決するものではなく、あくまで警告を無効にするための対策です。
そのため、実際にはMMX命令使用時の処理フロー全体を見直し、適切なタイミングで_mm_emptyやEMMS命令を実装することが推奨されます。
警告C4799発生の具体例
発生するコードパターン
MMX命令を使用した関数内で、MMX命令の後にEMMSまたは_mm_empty命令を呼び出さない場合にC4799警告が発生します。
たとえば、下記のサンプルコードはMMX命令を使っていますが、状態のリセットが行われないため警告の対象となります。
#include <stdio.h>
#include <mmintrin.h> // MMX命令用のヘッダー
// MMX命令を用いた関数
void functionWithoutEmms() {
// MMX命令の一例(ここではdummyな処理)
__m64 mmxValue = _mm_set_pi32(0, 0);
// EMMS命令の呼び出しがないため、警告C4799が発生する可能性があります
}
int main(void) {
functionWithoutEmms();
printf("MMX命令使用後の処理(警告発生の例)\n");
return 0;
}
MMX命令使用後の処理(警告発生の例)
誤警告発生条件の詳細
実際には、関数内でMMX命令を使った場合に、コンパイラはその関数の終了前にEMMS(または_mm_empty)が呼ばれていないと認識するとC4799警告を出力します。
また、ivec.hと組み合わせて利用すると、実際には正しい処理であっても誤警告が出るケースがあります。
この場合、前述のように_SILENCE_IVEC_C4799を定義して警告を抑制する必要があります。
警告解消のための対策
EMMS命令の正しい実装方法
MMX命令を使用する関数の末尾には、必ずEMMS命令(または_mm_empty)を呼ぶ必要があります。
これにより、MMXレジスタがクリアされ、後続の演算に影響を与えなくなります。
下記は、正しい実装例です。
#include <stdio.h>
#include <mmintrin.h> // MMX命令用のヘッダー
void functionWithEmms() {
// MMX命令の一例
__m64 mmxValue = _mm_set_pi32(0, 0);
// 必ず状態をクリアするための_mm_emptyを呼び出す
_mm_empty();
}
int main(void) {
functionWithEmms();
printf("MMX命令使用後の状態リセット実施済み\n");
return 0;
}
MMX命令使用後の状態リセット実施済み
_mm_emptyの利用方法と実例
定義手順と注意点
_mm_emptyは、MMX命令使用後に必ず呼び出す必要のある命令です。
定義手順としては、必ずMMX命令を使用する関数の最後に_mm_emptyを配置します。
注意点として、もし既に_EMMS命令が実装されている場合、二重に呼び出す必要はありません。
また、デバッグ中の挙動確認のためにも、適切な場所で呼び出しているかどうかを確認してください。
#include <stdio.h>
#include <mmintrin.h> // MMX命令用のヘッダー
void functionUsingMmx() {
// MMX命令使用例
__m64 mmxVar = _mm_set_pi32(123, 456);
// 状態クリアのために必ず_mm_emptyを呼び出す
_mm_empty(); // 状態クリア
}
int main(void) {
functionUsingMmx();
printf("状態クリアのための_mm_empty実行済み\n");
return 0;
}
状態クリアのための_mm_empty実行済み
_SILENCE_IVEC_C4799の使用方法
ivec.hを利用する際、C4799警告が不要な場合は、ソースコードまたはプロジェクトのコンパイル設定において_SILENCE_IVEC_C4799を定義します。
これは、ソースコードの先頭に以下のように記述することで実現できます。
#include <stdio.h>
#define _SILENCE_IVEC_C4799 // ivec.h利用時の不必要な警告を抑制するための定義
#include <mmintrin.h>
#include "ivec.h" // ivec.hが存在する場合に読み込む
int main(void) {
printf("ivec.h使用時の誤警告を抑制\n");
return 0;
}
ivec.h使用時の誤警告を抑制
コンパイラ設定と警告管理
警告レベルの調整方法
Visual Studioなどの開発環境では、警告レベルの調整が可能です。
プロジェクトプロパティから警告レベルを設定でき、MMX命令使用に関連するC4799警告を重視するか、または抑制するかの判断ができます。
たとえば、警告レベルを下げることで、重要性が低い警告を抑えることができますが、本来の問題が見落とされる可能性もあります。
コンパイラオプション設定の実践例
コンパイラオプションを変更することで、特定の警告を無視する設定が可能です。
Visual Studioであれば、プロジェクトの「C/C++」→「コマンドライン」オプションに以下の設定を追加することで、警告C4799を抑制できます。
/wd4799
実際のコマンドライン例:
cl.exe /W3 /wd4799 main.c
このように警告レベルと抑制オプションを調整することで、開発環境における警告管理が柔軟に行えます。
コード実例による詳細解説
問題発生時のコード例
以下は、MMX命令後にEMMS命令が呼ばれていないためにC4799警告が発生する可能性のあるコード例です。
#include <stdio.h>
#include <mmintrin.h> // MMX命令用のヘッダー
// 警告が発生する可能性あり:EMMS命令が呼ばれていない
void problematicFunction() {
// MMX命令の例:整数データのセット
__m64 data = _mm_set_pi32(1, 2);
// 状態をクリアする処理がないため、C4799警告が出る可能性がある
}
int main(void) {
problematicFunction();
printf("警告発生可能なコード実行例\n");
return 0;
}
警告発生可能なコード実行例
修正後のコード例
以下は、問題を解消したコード例です。
MMX命令実行後に_mm_emptyが呼ばれているため、C4799警告が発生しません。
#include <stdio.h>
#include <mmintrin.h> // MMX命令用のヘッダー
// 修正済み関数:MMX命令後に状態クリアのための_mm_emptyを呼び出す
void fixedFunction() {
// MMX命令の実行例
__m64 data = _mm_set_pi32(1, 2);
// 状態クリアのために_mm_emptyを呼び出す
_mm_empty();
}
int main(void) {
fixedFunction();
printf("状態クリア済みのコード実行例\n");
return 0;
}
状態クリア済みのコード実行例
まとめ
この記事では、C言語でMMX命令使用後に発生するC4799警告の原因と、EMMS命令および_mm_emptyで状態をクリアする必要性について解説しました。
MMXとEMMSの関係、警告が発生するコードパターンや誤警告の原因、具体的な対策としてのコード修正方法やコンパイラ設定の手法をサンプルコードとともに示しています。
これにより、MMX命令使用後の安全な開発手法が理解できます。