C言語のコンパイラ警告 C4794 の原因と対策について解説
C言語でコンパイラ警告C4794は、__declspec(thread)で定義されたスレッドローカルストレージ変数が、誤ったセクションに配置された場合に表示されます。
例えば、#pragma data_segを使って.somesegなどのセクションに配置すると警告が出るため、変数は.tls$で始まる正しいセクションに配置する必要があります。
スレッドローカル変数の配置ルール
__declspec(thread) の基本
機能と使用例
__declspec(thread) は、各スレッドごとに独立した変数のインスタンスを生成するためのMicrosoft独自の拡張です。
これにより、スレッド間でグローバル変数が共有される問題を避け、各スレッドが固有のデータを保持できるようになります。
例えば、以下のコードでは、グローバル変数 counter が各スレッドで別々に管理され、スレッドごとにカウンタの値が独立して動作する様子が確認できます。
#include <stdio.h>
#include <windows.h>
#include <process.h>
// 各スレッド固有のカウンタ変数
__declspec(thread) int counter = 0;
// スレッドのメイン関数
unsigned __stdcall ThreadFunc(void *arg) {
// 各スレッドで初期値としてカウンタを増やす
counter++;
printf("Thread ID: %u, counter: %d\n", GetCurrentThreadId(), counter);
return 0;
}
int main(void) {
const int numThreads = 3;
HANDLE threads[numThreads];
for (int i = 0; i < numThreads; i++) {
// スレッド生成
threads[i] = (HANDLE)_beginthreadex(NULL, 0, ThreadFunc, NULL, 0, NULL);
}
// 全てのスレッドが終了するのを待つ
WaitForMultipleObjects(numThreads, threads, TRUE, INFINITE);
// ハンドルをクローズ
for (int i = 0; i < numThreads; i++) {
CloseHandle(threads[i]);
}
return 0;
}
出力例:
Thread ID: 1234, counter: 1
Thread ID: 5678, counter: 1
Thread ID: 9012, counter: 1
このように __declspec(thread) を利用することで、各スレッドが独自のカウンタを持つため、競合状態を回避しやすくなります。
TLSセクションの命名規則
.tls$ セクションの役割
Windows の実行ファイル(EXEまたはDLL)では、スレッドローカル変数は TLS(Thread Local Storage)セクションを通じて管理されています。
TLSセクションは、変数の初期化や各スレッドへの割り当てに関する情報を保持するため、.tls$ という名称で始まるサブセクションを利用します。
この命名規則に従うことで、コンパイラやリンカが正しくセクションを識別し、各スレッドに対する初期化処理を適用できるようになります。
不適切なセクション指定の問題点
例えば、以下のように .tls$ という規則に従わずに別の名前を使ってしまうと、コンパイラは TLS 用のセクションと認識せず、レベル 1 の警告 C4794 を発生させる可能性があります。
#include <stdio.h>
// 不適切なセクション名を指定してスレッドローカル変数を定義(警告 C4794 の発生例)
#pragma data_seg(".someseg")
__declspec(thread) int incorrectVar = 0;
int main(void) {
// この変数は各スレッド共通となるため、意図しない挙動となる可能性がある
printf("incorrectVar: %d\n", incorrectVar);
return 0;
}
不適切なセクション名を使用することで、TLSの初期化処理が正しく行われず、プログラムの実行時に予期せぬ結果となる場合もあります。
C4794 警告の原因
データセグメントの指定ミス
#pragma data_seg の誤用例
#pragma data_seg を用いて特定のセクションにグローバル変数を配置することは可能ですが、__declspec(thread) を利用している場合、正しい TLS セクション名(.tls$ で始まる名前)を使わなければなりません。
以下は、誤ったセクション名を指定している例です。
#include <stdio.h>
// 誤ったセクション名 ".someseg" を指定(警告 C4794 発生)
#pragma data_seg(".someseg")
__declspec(thread) int tlsVar = 100;
int main(void) {
printf("tlsVar: %d\n", tlsVar);
return 0;
}
この例では、データセグメントとして “.someseg” を使用しているため、コンパイラが TLS 用のセクションと認識せず、C4794 の警告が出力されます。
変数配置の変更と警告発生
セグメント変換のプロセス
コンパイラは、__declspec(thread) で宣言された変数を各オブジェクトファイル内で初期化情報とともに独自の TLS セクションに配置します。
しかし、ユーザーが #pragma data_seg を用いてセクション名を変更した場合、コンパイラは自動的に .tls$ セクションへ変換します。
この変換プロセスは、以下のように進行します。
- ユーザーが指定したセクション名が .tls$ で始まらない場合、コンパイラは警告 C4794 を発生させる。
- 警告が発生した場合でも、実際のオブジェクトファイル内では正しい TLS セクションに変数が配置される。
- 結果として、プログラムの挙動は正しく動作することが多いが、警告メッセージが示す通り、ユーザーの意図しない設定となっている可能性がある。
このため、設計段階で TLS セクションの名前付け規則を遵守することが推奨されます。
C4794 警告への対策
正しいセクション指定方法
.tls$ セクションを利用した配置例
正しい対策の一例として、#pragma data_seg で .tls$ というプレフィックスを用いる方法があります。
以下は、適切なセクション名を使用して TLS変数を定義する例です。
#include <stdio.h>
// 正しいセクション名 ".tls$9" を指定することで、TLS 用の配置が適切に行われる
#pragma data_seg(".tls$9")
__declspec(thread) int correctVar = 200;
int main(void) {
printf("correctVar: %d\n", correctVar);
return 0;
}
出力例:
correctVar: 200
この例では、.tls$ で始まるセクション名を使うことで、コンパイラが自動的に TLS 用の処理を適用し、警告 C4794 を回避できます。
警告回避の改善策
コード例の修正ポイント
- __declspec(thread) を利用している変数については、必ず .tls$ で始まるセクション名を適用する。
- #pragma data_seg を使用する際、TLS 変数が配置されるべきセクション名が正しいかどうか確認する。
- 既存コードにおいて警告が発生した場合、セクション名の変更や削除を検討する。特に不要なデータセグメントの指定がないかを見直す。
環境設定の確認項目
- コンパイラオプションで /W1 や /W3 などの警告レベルが設定されている場合、TLS 変数の配置に関する警告が出力される。
環境設定に合わせて、必要に応じた警告抑制のオプションを検討する。
- ビルド時のリンカ設定や、OBJファイルから生成されるセクション情報を確認し、TLS セクションが正しく生成されているか確認する。
- 複数の翻訳単位間で __declspec(thread) を利用する場合、各翻訳単位で一致したセクション名が使われているか、統一性を保つようにする。
このように、正しいセクション名の使用と環境設定の見直しによって、コンパイラ警告 C4794 の発生を未然に防ぎ、安定したマルチスレッドプログラミングの実現が可能となります。
まとめ
この記事では、__declspec(thread) を利用したスレッドローカル変数の基本機能とその実装例、TLS セクションに関する命名規則について解説しました。
不適切なセクション名を指定すると警告 C4794 が発生する原因を説明し、正しい .tls$ セクションを利用した設定方法と改善策を具体的なコード例を交えて示しました。
これにより、TLS変数の安全な配置方法が理解できる内容となっています。