Visual StudioにおけるC/C++コンパイラエラー C3717の原因と解決方法について解説
この記事では、Visual Studioなどの環境で生じるコンパイラエラー C3717 について簡単に説明します。
__event キーワードを使用したイベントメソッドに実装(関数本体)が含まれていると発生するエラーであり、宣言のみで記述する必要があります。
C言語やC++の開発環境でこのエラーに遭遇した場合、実装部分の削除を確認してください。
エラーC3717の発生と原因
エラーの内容確認
Visual Studioでコンパイルを行った場合、エラーC3717
が発生するケースがあります。
このエラーは、__event
キーワードを利用して宣言したイベントメソッドに、関数本体(実装)が含まれている状態で定義してしまったときに出力されます。
エラーメッセージには「’method’: イベントを発生させるメソッドを定義できません」と示され、イベントメソッドの宣言には実装が含まれてはならないことを教えてくれます。
イベントメソッドの記述規則
Visual Studioにおいて、__event
で定義されるイベントメソッドは、宣言と定義を明確に分離する必要があります。
この規則に沿わず、関数本体を含む実装とともに宣言を記述すると、コンパイラはイベントメソッドとして正しく解釈できず、エラーC3717
が発生します。
宣言に実装を含む場合の問題点
イベントメソッドに実装が含まれていると、イベントの発生元として期待される動作が正しく行われなくなる可能性があります。
具体的には、イベントが登録されたときに正しくフック(結びつけ)ができず、イベントハンドラに適切な通知が行われないことがあります。
例えば、次のようなコードはエラーが発生します。
#include <iostream>
// C3717.cpp のエラー例
[event_source(native)]
class CEventSrc {
public:
__event void event1() { // 関数本体があるためエラーが発生する
// イベント処理の本体がここに記述されるが、これは不適切
}
// 正しくは以下のように宣言のみとする
// __event void event1();
};
int main() {
std::cout << "Error reproduction sample" << std::endl;
return 0;
}
このように、__event
を利用したイベントメソッドでは、関数本体を直接記述せずに、メソッドの宣言のみを行う必要があります。
正しい__eventの使い方
宣言と定義の使い分け
正しい方法としては、イベントメソッドに関しては、関数の宣言とその実装を分離する必要があります。
すなわち、__event
を用いたメソッドの宣言には、関数本体を含めず、宣言だけに留めます。
イベントの発生そのものは、別途通常のメソッドやその他の仕組みを利用して実現します。
イベントに対しては、主に以下のような2つのステップで作業を進めます。
- イベントメソッドの宣言:インターフェイスとしてイベントを定義する。
- イベントの発火:宣言済みのイベントを適切なタイミングで通知するための処理を別途実装する。
関数本体を含まない宣言方法
関数本体を含まない宣言方法の一例として、以下のサンプルコードを参照してください。
サンプルコードでは、イベントメソッドの宣言部分に関数本体を記述せず、イベントハンドラ側とイベントのフック/アンフックの実装を分離しています。
#include <iostream>
// 正しいイベントメソッドの宣言と使い方の例
[event_source(native)]
class CEventSrc {
public:
// 関数本体を含まない宣言のみを行う
__event void event1();
};
[event_receiver(native)]
class CEventRec {
public:
void handler1() {
std::cout << "Event handler executed." << std::endl;
}
void HookEvents(CEventSrc* pSrc) {
// イベントフックの処理(実際のフック処理は内部で行われる)
__hook(CEventSrc::event1, pSrc, CEventRec::handler1);
}
void UnhookEvents(CEventSrc* pSrc) {
// イベントアンフックの処理
__unhook(CEventSrc::event1, pSrc, CEventRec::handler1);
}
};
int main() {
std::cout << "Correct event declaration sample" << std::endl;
return 0;
}
Correct event declaration sample
上記のコードでは、CEventSrc
クラスにおけるevent1()
は宣言のみで実装がありません。
また、イベントの実際の発火や処理は、フック・アンフック処理により適切に扱われます。
エラー修正の具体的手法
コード修正の基本手順
エラーC3717
を修正する手順は、簡単に次の流れとなります。
- 問題のあるイベントメソッドの宣言を特定する。
- 関数本体を削除し、イベントメソッドとしての正しい宣言のみを残す。
- 必要に応じて、イベントの発火処理を別途実装する。
この手順により、コンパイラエラーの原因であった関数本体が排除され、Visual Studio上で正しいイベントの扱いが可能になります。
不要な実装部分の削除方法
イベントメソッドで不要な実装部分を削除する際は、実装されている関数本体部分を単純にコメントアウトまたは削除して、其の部分を宣言のみに変更します。
以下のサンプルは、修正前と修正後のコード例を比較しています。
修正前(エラー発生):
#include <iostream>
[event_source(native)]
class CEventSrc {
public:
__event void event1() {
// イベント処理の実装が含まれているためエラー発生
std::cout << "Error: event1 implementation" << std::endl;
}
};
int main() {
std::cout << "Before fix" << std::endl;
return 0;
}
修正後(正しい宣言):
#include <iostream>
[event_source(native)]
class CEventSrc {
public:
// 関数本体を削除して宣言のみとする
__event void event1();
};
int main() {
std::cout << "After fix" << std::endl;
return 0;
}
After fix
修正後のコード例の確認
修正後のコードは、イベントメソッドが適切に宣言されていることを確認するだけでなく、Visual Studioでのコンパイルが問題なく行われることを確認する必要があります。
Visual Studioのビルドログにエラーが表示されなければ、修正が正しく行われたことがわかります。
また、イベントハンドラやフック処理に問題がないか、実際の挙動も確認します。
Visual Studio環境での検証ポイント
コンパイラ設定の確認
Visual Studioでは、プロジェクトのプロパティやコンパイラ設定が、エラーの発生に影響する場合があります。
特に、C++の拡張機能やイベントに関連するオプション値を確認することが大切です。
以下の点に注意してください。
- プロジェクトの言語拡張機能が有効かどうか
- カスタムビルドツールやプリプロセッサオプションの設定
- Visual Studioのバージョンアップデートにより仕様が変わっていないか
エラーメッセージの再現条件確認
エラーC3717
の再現条件を確認するために、以下の手順を踏むと良いでしょう。
- 事件となるコード(関数本体が含まれる
__event
メソッド)を用意する - プロジェクト設定やターゲットプラットフォームを変更して問題の発生を確認する
- 他のイベントやフックに影響する部分と併せて検証し、エラーメッセージが一貫して表示されるか確認する
これにより、エラー発生の条件が明確になり、修正の対象を正確に絞り込むことができます。
他のエラーとの関連性の検証
イベントメソッドに関連するエラーは、しばしば他の型のエラーと混同されることがあります。
例えば、関数のシグネチャやアクセス修飾子の設定に問題がある場合、誤って__event
の使用方法に関連するエラーと解されることがあります。
そのため、下記の点を検証することが重要です。
- イベントメソッドの宣言と利用箇所の整合性の確認
- 他のコンパイラエラーや警告が影響を及ぼしていないかのチェック
- クラス間のフック・アンフック処理が正しいかどうかの検証
これにより、エラーC3717
以外の問題が原因で発生している場合にも迅速に対応することが可能となります。
まとめ
本記事では、Visual Studioで発生するコンパイラエラーC3717
の原因が、__event
メソッドに実装が含まれる宣言にあることを説明しています。
宣言と実装を分離し、関数本体を削除する正しい記述方法が理解でき、コード修正の手順やコンパイラ設定の確認ポイントも把握することができます。