Visual Studioにおけるコンパイラエラー C3615 の原因と解決方法について解説
この記事では、Visual Studioで発生するコンパイラエラー C3615について解説します。
エラーは、constexpr関数が定数式として評価されない場合に発生します。
例えば、constexpr関数内で呼び出す関数がconstexprとして宣言されていないとエラーが出ることがあります。
エラー解消には、関数の宣言方法を見直す対策が有効です。
エラー発生のメカニズム
このセクションでは、コンパイル時に発生するエラーの仕組みについて解説します。
コンパイル時評価に用いられるconstexpr
関数では、すべての処理が定数式として評価できる必要があります。
そのため、関数内で呼び出す他の関数もすべてconstexpr
である必要があります。
constexpr関数の基本要件
constexpr
関数は、コンパイル時に必ず評価されるため、以下の要件を満たす必要があります。
- 関数内で使用される変数や関数呼び出しがすべて定数式であること
- 条件演算子や論理演算子を用いる場合、すべてのオペランドがコンパイル時に評価可能であること
例えば、myarray::size()
関数が定数式として評価されるためには、関数自体をconstexpr
として宣言する必要があります。
次のサンプルコードは、正しくconstexpr
で評価できる関数の定義例です。
#include <iostream>
template<int N>
struct myarray {
constexpr int size() const { return N; } // constexprとして関数を定義
};
constexpr bool isValid(const myarray<1>& arr) {
// すべての関数呼び出しがconstexprであるため定数式として評価される
return arr.size() == 1;
}
int main() {
myarray<1> arr;
std::cout << isValid(arr) << std::endl; // 出力: 1
return 0;
}
1
エラーメッセージ C3615の内容
エラーメッセージC3615
は、constexpr
関数として定義した関数が、定数式として評価できない場合に発生します。
Visual Studio 2017以降のバージョンでは、より厳格なコンパイル時評価のルールが適用されています。
エラー発生の条件
エラーC3615
は、以下のような条件下で発生します。
constexpr
関数の中で、constexpr
として定義されていない関数を呼び出している場合- 条件演算子の左側のオペランドが定数式として評価できない場合
例として、myarray
のsize()
関数がconstexpr
で定義されていない場合、比較処理が定数式として評価されず、エラーが発生します。
エラーメッセージでは「関数がconstexpr
として評価できませんでした」との記述がされます。
コンパイル時評価の失敗要因
コンパイル時評価が失敗する主な要因は、以下の通りです。
- 関数内のすべての呼び出し先が
constexpr
として定義されていない - 条件式における論理演算子のオペランドの評価順序が、コンパイル時定数として保証されない
- 非定数のグローバル変数や静的変数が使用されている
これらの要因を解消するためには、該当する関数や変数にもconstexpr
修飾子を付与する必要があります。
Visual Studioバージョンによる違い
コンパイラのバージョンにより、constexpr
関数に対する評価ルールやエラーチェックが異なる場合があります。
特にVisual Studio 2015と2017では動作に差異が見られます。
Visual Studio 2015と2017の比較
Visual Studio 2015では、一部の条件付き評価において、エラーが発生せずにコンパイルが通る場合がありました。
しかし、Visual Studio 2017以降は、C++標準に基づいた厳密なチェックが導入され、以前は通っていたコードがC3615
エラーを発生するようになりました。
コード挙動の差異
Visual Studio 2015では、例えば以下のようなコードがコンパイルされることがありました。
#include <iostream>
template<int N>
struct myarray {
int size() const { return N; } // constexpr指定がない
};
constexpr bool f(const myarray<1>& arr) {
// 条件演算子内の呼び出しが非constexprのため、VS2017ではコンパイルエラーとなる
return arr.size() == 10 || arr.size() == 11;
}
int main() {
myarray<1> arr;
std::cout << f(arr) << std::endl;
return 0;
}
Visual Studio 2017では、上記のコードでC3615
エラーが発生します。
この理由は、arr.size()
がconstexpr
として宣言されていないためです。
その他バージョンの注意点
その他のVisual Studioのバージョンや他のコンパイラでも、C++の標準に合わせた実装がなされており、constexpr
関数の評価ルールに違いがある場合があります。
最新の仕様に合わせて、関数の宣言や使用している演算子、条件式の記述方法にも注意する必要があります。
エラーの解決方法について解説
エラーC3615
を解決するためには、constexpr
関数内で使用するすべての関数や式が定数式として評価できるように修正する必要があります。
大きく分けて、関数宣言の変更と、場合によってはconstexpr
修飾子の削除というアプローチがあります。
constexpr関数の修正方法
関数宣言の変更手法
constexpr
関数内で呼び出す関数が定数式として評価できるよう、呼び出し元の関数やメンバ関数にconstexpr
修飾子を追加する方法があります。
たとえば、先述のmyarray::size()
関数がconstexpr
で定義されていない場合、以下のように宣言を変更することで、エラーが解消されます。
#include <iostream>
template<int N>
struct myarray {
constexpr int size() const { return N; } // constexprを追加
};
constexpr bool f(const myarray<1>& arr) {
return arr.size() == 10 || arr.size() == 11; // すべての呼び出しが定数式として評価される
}
int main() {
myarray<1> arr;
std::cout << f(arr) << std::endl; // 出力: 0(条件に合致しないため)
return 0;
}
0
この方法で、コンパイル時評価の要件を満たすことができ、エラーC3615
を防ぐことが可能です。
constexpr修飾子の削除検討
修正後のコード評価
状況によっては、もともと期待していた動作がコンパイル時評価ではなく、実行時評価でも問題がない場合があります。
そのような場合、constexpr
修飾子自体を削除することも一つの方法です。
関数の宣言からconstexpr
を取り除くことで、関数は実行時に評価され、エラーが回避されます。
以下は、constexpr
修飾子を削除した例となります。
#include <iostream>
template<int N>
struct myarray {
int size() const { return N; } // constexpr修飾子を削除
};
bool f(const myarray<1>& arr) {
return arr.size() == 10 || arr.size() == 11; // 実行時評価となる
}
int main() {
myarray<1> arr;
std::cout << f(arr) << std::endl; // 出力: 0
return 0;
}
0
修正後のコードが期待通りに動作するか、実際の動作確認を行ってください。
実行時評価に変更することで、コンパイル時評価に伴う制限からは解放されますが、設計上の意図が変わる可能性があるため、用途に応じた判断が必要です。
デバッグと検証のポイント
エラー発生時には、どこで問題が起こっているのかを特定し、ソースコードのどの部分が原因となっているかを明確にすることが重要です。
以下では、エラーの発生箇所を特定する方法と、基本的な解析手法についてご説明いたします。
発生箇所の特定方法
エラーC3615
が発生した際は、コンパイラが出力するエラーメッセージに注目してください。
エラーメッセージには、問題となっている行番号や、呼び出し先の関数名が記載されています。
- エラーメッセージに記載された関数や行番号を確認
- コンパイル時評価の対象となる部分を中心にコードを見直す
- 非
constexpr
な関数呼び出しがないかチェックする
このように、エラーメッセージの内容から、どの関数が定数式として評価されていないかを判断していくことが効果的です。
ソースコード解析の基本手法
ソースコードを解析する際は、以下の基本手法が役立ちます。
- 該当の関数に
constexpr
が正しく付与されているか確認する - 条件式の構造を整理し、論理演算子のオペランドの評価が計算可能かチェックする
- 簡単なサンプルコードを作成し、問題となっている部分を isolate する(分離してテストする)
これらの手法によって、問題箇所を迅速に特定し、必要な修正を加えることができます。
まとめ
本記事では、コンパイラエラー C3615 の発生要因や constexpr関数の基本要件、Visual Studio の各バージョンによる挙動の違いを解説しました。
constexpr 修飾子の追加による解決策や、場合によっては constexpr を削除する方法も紹介し、デバッグや解析の手法についても説明しました。
これにより、コードの定数式評価の正確な実装やエラー原因の把握が可能となります。