C++のエラー C3445 について解説 ― explicitコンストラクターとコピーリスト初期化の注意点
エラー C3445 は、コピーリスト初期化時に explicit
修飾されたコンストラクターが選択された場合に発生します。
ISO C++17 の規格ではこの初期化方法では明示的なコンストラクターが利用できないため、Visual Studio 2017 以降の環境でエラーが検出されます。
修正には直接初期化を使う方法が推奨されます。
エラー C3445 の背景と仕様
ISO C++17 の規定とその影響
ISO C++17 標準では、コピーリスト初期化(copy-list-initialization)の際にオーバーロード解決の一環として明示的なコンストラクターも候補に含める必要があります。
しかし、実際にその明示的なコンストラクターが選択された場合には、初期化子リストを介した初期化を禁止し、コンパイルエラーを発生させる仕様となっています。
この動作により、誤った暗黙的な型変換や不意の呼び出しによる実行時エラー・未定義動作を防ぐ狙いがあります。
例えば、コンパイラは内部で以下のような条件を検証しています。
この仕様は安全性を高めるための取り組みのひとつと考えられ、明示的な意図をコードに反映させることが求められています。
Visual Studio のバージョン差による挙動の違い
Visual Studio 2017 以降のバージョンでは、ISO C++17 の規定に準じた動作が強化され、コピーリスト初期化にて明示的なコンストラクターを使用した場合にエラー C3445 が検出されるようになっています。
一方、Visual Studio 2015 までのバージョンでは、同様のエラー検出が行われず、実行時に想定外の動作が発生するリスクがありました。
そのため、利用している Visual Studio のバージョンによって、エラーの検出や警告の内容に差が生じる点に注意が必要です。
explicit コンストラクターの役割と制約
explicit 修飾子の目的と効果
explicit
修飾子は、暗黙の型変換や不意のコンストラクター呼び出しを防止するために使用されます。
これにより、開発者はコンストラクター呼び出し時に意図的に変換を行う必要が生じ、安全性が向上する効果を発揮します。
たとえば、以下のコードでは、整数から構造体 A
への暗黙の変換が行われることを防ぐために explicit
を用いています。
#include <iostream>
// コンストラクターに explicit 修飾子を付与
struct A
{
explicit A(int value) // 暗黙の変換を防ぐために明示的に指定
: data(value) {}
A(double number)
: data(static_cast<int>(number)) {}
int data;
};
int main()
{
A a1(10); // 明示的な呼び出しとして有効
std::cout << "a1.data: " << a1.data << std::endl;
return 0;
}
a1.data: 10
この例では、整数リテラル 10
を直接渡しているため、明示的な呼び出しと判定され、意図した通りに動作します。
コピーリスト初期化との関係
コピーリスト初期化では、波括弧 { }
を用いてオブジェクトを初期化します。
しかし、この初期化方法では、explicit
修飾子が付与されたコンストラクターは呼び出し対象として認められません。
そのため、以下のようにコピーリスト初期化を用いる場合、エラー C3445 が発生します。
#include <iostream>
// explicit 修飾子付きのコンストラクターがある構造体
struct A
{
explicit A(int value) // コピーリスト初期化で呼び出すことはできない
: data(value) {}
A(double number)
: data(static_cast<int>(number)) {}
int data;
};
int main()
{
A a1 = {10}; // エラー C3445 が発生する例
std::cout << "a1.data: " << a1.data << std::endl;
return 0;
}
このことは、暗黙的な型変換を厳格に制限するための仕様であるため、初期化方法の選択には十分な注意が必要です。
コピーリスト初期化の仕組み
コピーリスト初期化の構文と動作
コピーリスト初期化は、以下のような波括弧 { }
を用いた初期化方法で、リスト内の値をもとにオブジェクトを生成する手法です。
この初期化方式は、メンバーの初期化やコンストラクターの選択過程を簡潔に記述できる点が特徴ですが、明示的なコンストラクターが対象の場合には利用できない制約があります。
コピーリスト初期化においては、コンストラクターのオーバーロード解決時に通常の初期化と同様に評価されますが、明示的なコンストラクターは候補から除外されるため、例えば以下の条件が満たされるとエラーが発生します。
明示的なコンストラクターが絡むケース
明示的なコンストラクターが絡む場合、コピーリスト初期化は以下のようなケースで問題となります。
たとえば、オーバーロードされたコンストラクターの中に explicit
が付いているものとそうでないものが存在する場合、初期化方法によっては意図しないコンストラクターが呼び出されるリスクがあります。
以下のコードは、誤った初期化方法を用いたときに発生するケースを示しています。
#include <iostream>
struct A
{
explicit A(int value) // 明示的なコンストラクター
: data(value) {}
A(double number) // 暗黙の変換が可能なコンストラクター
: data(static_cast<int>(number)) {}
int data;
};
int main()
{
// コピーリスト初期化で明示的なコンストラクターが対象となった場合、エラーとなる
// A a1 = {10}; // コンパイルエラー: error C3445
// 浮動小数点の初期化では問題なく暗黙のコンストラクターが呼ばれる
A a2 = {3.14};
std::cout << "a2.data: " << a2.data << std::endl;
return 0;
}
a2.data: 3
この例から、初期化に使用するリテラルの型や初期化方法が、どのコンストラクターが選択されるかに大きく影響することが分かります。
エラー解消のための対応策
直接初期化の利用方法
エラー C3445 を回避する最も簡単な方法は、コピーリスト初期化ではなく直接初期化を利用することです。
直接初期化は波括弧 { }
を単独で使用する形で、明示的なコンストラクターであっても問題なく初期化できる点が特徴です。
以下のコードは、その例を示しています。
#include <iostream>
struct A
{
explicit A(int value) // explicit コンストラクター
: data(value) {}
A(double number)
: data(static_cast<int>(number)) {}
int data;
};
int main()
{
A a1{10}; // 直接初期化により、explicit コンストラクターも呼び出し可能
std::cout << "a1.data: " << a1.data << std::endl;
return 0;
}
a1.data: 10
この方法を利用することで、コピーリスト初期化特有のエラーを回避し、意図した初期化が実現できます。
コード例を通した比較検討
コピーリスト初期化と直接初期化の違いを明確に理解するために、以下に比較コード例を示します。
まず、コピーリスト初期化によるエラー発生例です。
#include <iostream>
struct A
{
explicit A(int value) // explicit コンストラクター
: data(value) {}
A(double number) // 暗黙のコンストラクター
: data(static_cast<int>(number)) {}
int data;
};
int main()
{
// 以下の行はエラー C3445 を引き起こすためコメントアウト
// A a1 = {10};
A a2 = {3.14}; // 暗黙のコンストラクターが呼び出される
std::cout << "a2.data: " << a2.data << std::endl;
return 0;
}
次に、直接初期化を用いた場合のコード例です。
#include <iostream>
struct A
{
explicit A(int value) // explicit コンストラクター
: data(value) {}
A(double number) // 暗黙のコンストラクター
: data(static_cast<int>(number)) {}
int data;
};
int main()
{
A a1{10}; // 直接初期化により explicit コンストラクターが呼び出される
A a2{3.14}; // ダブル型の場合は暗黙のコンストラクターが呼び出される
std::cout << "a1.data: " << a1.data << std::endl;
std::cout << "a2.data: " << a2.data << std::endl;
return 0;
}
a1.data: 10
a2.data: 3
これらの例から、初期化方法の違いがコンストラクターの選択に直結することが分かり、直接初期化を使用することでエラー C3445 を回避できる点が確認できます。
開発環境における注意点
Visual Studio の対応バージョンについて
Visual Studio 2017 以降では、ISO C++17 の仕様に準拠してエラー C3445 が正しく検出されるため、コピーリスト初期化時に明示的なコンストラクターが用いられるケースでは注意が必要です。
一方、Visual Studio 2015 以前のバージョンでは、同様のチェックが行われず、意図しないコンストラクター呼び出しが発生する可能性があります。
そのため、利用中の開発環境のバージョンに応じたコード設計や初期化方法の選択が求められます。
将来の標準変更に対する備え
C++ の標準は進化を続けており、将来のバージョンで追加の初期化規則やコンストラクターの取り扱いに変更が加えられる可能性があります。
そのため、最新の ISO C++ 標準や各コンパイラのリリース情報に注意し、将来的な変更点に備えたコードのメンテナンスが推奨されます。
また、プロジェクトのコンパイラー設定を最新の仕様に合わせることで、予期しないエラーの発生を防ぐ対策が可能です。
まとめ
本記事では、C++17標準に基づくコピーリスト初期化でのエラーC3445の仕組みと、明示的なコンストラクターが原因で発生する問題について解説しました。
Visual Studioのバージョン差が挙動に影響する点や、直接初期化を用いることでエラーを回避する方法が具体例とともに示され、適切な初期化方法選択の重要性を理解していただけます。