コンパイラエラー

Microsoft Visual C++のコンパイラエラーC3408について解説：テンプレート定義での属性指定の注意点

2025-03-29更新日: 2025-03-29

Microsoft Visual C++で発生するコンパイラエラー「C3408」は、テンプレート定義に属性を指定できない場合に出るエラーです。

C言語やC++の開発環境にて、例えば[coclass]などの属性をテンプレートに記述するとエラーとなります。

エラー内容を確認し、記述方法を見直す際の参考にしてください。

目次から探す

エラーC3408の詳細
- エラーメッセージの解析
- エラー原因の考察
テンプレートと属性指定の基礎知識
- テンプレート定義の基本構造
- 属性指定の目的と適用範囲
エラーへの対処方法
- 記述変更によるエラー回避策
- コンパイラエラー解析の手法
まとめ

エラーC3408の詳細

エラーメッセージの解析

表示されるエラーメッセージの構造

エラーC3408の場合、コンパイラは「attribute: テンプレート定義で、属性を指定することはできません」というメッセージを表示します。

このメッセージは一般的に以下のような要素から成り立っています。

エラー識別子(C3408)
エラーメッセージ本文(属性指定がテンプレート定義では使用できない旨の説明)

また、エラーメッセージには対象となるソースコードの位置情報が表示され、属性指定の位置が指摘されます。

エラー発生時の具体的状況

エラーが発生するのは、テンプレート定義に対して属性指定子を直接適用したときです。

例えば、次のサンプルコードでは、[coclass] という属性をテンプレート特殊化に適用しているため、エラーC3408が発生します。

#include <cstdio>
// テンプレート定義の通常の記述例
template <class T>
struct PTS {
    enum {
        IsPointer = 0,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
// 属性指定がテンプレート特殊化に適用されている例
template <class T>
[coclass]   // この属性指定によりエラーC3408が発生します
struct PTS<T*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
template <class T, class U>
struct PTS<T U::*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 1
    };
}
struct S{};
int main() {
    S s;
    printf("PTS<S>::IsPointer == %d, PTS<S>::IsPointerToDataMember == %d\n",
           PTS<S>::IsPointer, PTS<S>::IsPointerToDataMember);
    printf("PTS<S*>::IsPointer == %d, PTS<S*>::IsPointerToDataMember == %d\n",
           PTS<S*>::IsPointer, PTS<S*>::IsPointerToDataMember);
    printf("PTS<int S::*>::IsPointer == %d, PTS<int S::*>::IsPointerToDataMember == %d\n",
           PTS<int S::*>::IsPointer, PTS<int S::*>::IsPointerToDataMember);
    return 0;
}

PTS<S>::IsPointer == 0, PTS<S>::IsPointerToDataMember == 0
PTS<S*>::IsPointer == 1, PTS<S*>::IsPointerToDataMember == 0
PTS<int S::*>::IsPointer == 1, PTS<int S::*>::IsPointerToDataMember == 1

エラー原因の考察

テンプレート定義における属性指定の制約

Microsoft Visual C++では、テンプレート定義に対する属性指定はサポートされておらず、属性指定子を記述するとエラーC3408が発生します。

テンプレートの定義部分は型や値のパラメータリストを扱うため、属性指定を加えるとコンパイラが解釈できず、エラーとして扱われます。

したがって、テンプレート特殊化や基本定義ともに、属性指定が記述されないようにする必要があります。

属性指定が及ぼす影響

属性指定は通常、クラスや関数の振る舞いや最適化に影響を与えるために利用されます。

しかし、テンプレート定義に属性を付加すると、コンパイラが正しくテンプレートの展開や特化を行えなくなり、エラーメッセージが発生してしまいます。

このような背景があるため、テンプレート定義には属性指定を行わないことが推奨されます。

テンプレートと属性指定の基礎知識

テンプレート定義の基本構造

一般的な記述例

テンプレートは、型や値に依存しない汎用的なコードを記述するための構造です。

以下は、典型的なテンプレート定義の記述例になります。

#include <cstdio>
// 基本テンプレート定義
template <class T>
struct PTS {
    enum {
        IsPointer = 0,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
// テンプレート特殊化の例
template <class T>
struct PTS<T*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
template <class T, class U>
struct PTS<T U::*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 1
    };
};
struct ExampleStruct{};
int main() {
    printf("PTS<ExampleStruct>::IsPointer == %d, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember == %d\n",
           PTS<ExampleStruct>::IsPointer, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember);
    return 0;
}

PTS<ExampleStruct>::IsPointer == 0, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember == 0

この例では、基本テンプレートとテンプレート特殊化を用いて、ポインタやデータメンバー・ポインタに対する処理を分岐しています。

属性指定の目的と適用範囲

属性の役割

属性は、コードの挙動や最適化のためのヒントをコンパイラに伝えるために用いられます。

たとえば、関数に対して呼び出し規約を指定したり、特定の最適化を促す際に使われることが一般的です。

属性を正しく活用することで、プログラムの実行効率やコード品質を向上させる効果が期待できます。

属性付加の制限事項

一方で、属性指定はすべての構文要素に対して適用できるわけではありません。

Microsoft Visual C++では、テンプレート定義に直接属性を付加することが禁止されています。

そのため、属性指定をテンプレート定義に記述するとエラーC3408が発生し、コンパイルが中断されます。

この制約を理解することで、正しい記述方法を選ぶことができ、無用なエラーを避けることができます。

エラーへの対処方法

記述変更によるエラー回避策

属性を使用しない記述例

エラーを回避するためには、テンプレート定義や特殊化に対して属性指定を行わないよう記述を変更する必要があります。

下記の例では、属性指定を削除することでエラーを回避しています。

#include <cstdio>
// 基本テンプレート定義(属性指定なし)
template <class T>
struct PTS {
    enum {
        IsPointer = 0,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
// テンプレート特殊化(属性指定なし)
template <class T>
struct PTS<T*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
template <class T, class U>
struct PTS<T U::*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 1
    };
};
struct ExampleStruct{};
int main() {
    // 属性指定が削除されたため正しくコンパイルできる
    printf("PTS<ExampleStruct>::IsPointer == %d, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember == %d\n",
           PTS<ExampleStruct>::IsPointer, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember);
    return 0;
}

PTS<ExampleStruct>::IsPointer == 0, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember == 0

修正後のテンプレート定義例

修正後のコード例は、テンプレート特殊化に対して属性指定を使用せず、コンパイラが正しく解釈できる形になっています。

以下は、修正されたテンプレート定義のサンプルです。

#include <cstdio>
// 修正された基本テンプレート定義
template <class T>
struct PTS {
    enum {
        IsPointer = 0,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
// 修正されたテンプレート特殊化
template <class T>
struct PTS<T*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 0
    };
};
template <class T, class U>
struct PTS<T U::*> {
    enum {
        IsPointer = 1,
        IsPointerToDataMember = 1
    };
};
struct ExampleStruct{};
int main() {
    // 修正後のコードは属性指定を排除しているためエラーが発生しない
    printf("PTS<ExampleStruct>::IsPointer == %d, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember == %d\n",
           PTS<ExampleStruct>::IsPointer, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember);
    return 0;
}

PTS<ExampleStruct>::IsPointer == 0, PTS<ExampleStruct>::IsPointerToDataMember == 0

コンパイラエラー解析の手法

エラーメッセージの読み解き方

エラーメッセージには、どの部分でエラーが発生したのかを示す情報が含まれているため、以下の手順で解析することが推奨されます。

エラー識別子(例：C3408)を確認する
エラーメッセージ本文を読み、どの構文要素に問題があるかを特定する
該当するコード行を確認し、属性指定などの禁止事項が記述されていないかチェックする

記述修正時の注意点

記述の修正を行う際は、以下の点に注意してください。

テンプレート定義や特殊化に対して属性指定が含まれていないことを確認する
コンパイラの出力するエラー行番号を参考に、コード内の問題箇所を正確に特定する
修正前後でサンプルコードをコンパイル・実行し、出力結果が変わらないことを確認する

これらの手法を用いることで、エラーC3408を正確に解析し、効率的な対処が可能となります。

まとめ

この記事では、Microsoft Visual C++で発生するエラーC3408の原因と対処方法について解説しております。

エラーメッセージの構造や発生する具体的状況、テンプレート定義に属性指定を行う制約、また属性が及ぼす影響について説明しました。

さらに、属性指定を排除した正しいテンプレート記述方法とエラーメッセージの読み解き手法も示し、コンパイルエラーの解決策を具体的なサンプルコードで紹介しております。