C言語におけるコンパイラエラー C3059 の原因と対策を解説
本稿では、C言語環境で発生するコンパイラエラー C3059について解説します。
OpenMPを利用する際、threadprivateで宣言された変数を他のOpenMP句(たとえばprivate)内で使用するとこのエラーが発生します。
具体例を通してエラーの原因と修正方法を紹介し、正しい変数管理の方法を確認できる内容となっています。
エラー発生の原因
OpenMPを利用して並列処理を行う際、グローバル変数を各スレッドで独立して利用するためにthreadprivateを使用します。
これにより、各スレッドは呼び出しごとに独自の変数インスタンスを得ることができます。
しかし、threadprivateで指定した変数は、すでに各スレッドに割り当てられているため、その変数を改めてprivateやその他のOpenMP句で再指定すると、コンパイラが矛盾を検出し、エラーC3059が発生する場合があります。
threadprivateの役割とOpenMPとの関係
threadprivateは、プログラム全体で共有されるグローバル変数に対し、並列ブロック内でスレッドごとに独立したコピーを作成するための宣言です。
これにより、各スレッドは開始時にグローバル変数の初期値を引き継ぎ、独自に変更を加えても他のスレッドに影響を与えない挙動を実現します。
OpenMP環境では、グローバルな初期化やスレッド間のデータ独立性を確保する際に有用です。
使用上の注意と制限
- threadprivate変数は、OpenMPの- privateや- firstprivateの句内で再指定することができません。そのため、すでに宣言されたグローバル変数を再びプライベートとして扱おうとすると、コンパイラは矛盾を検出します。
- グローバル変数にthreadprivateを指定すると、各スレッドが自動的にその変数のインスタンスを持つため、あとから明示的にprivate句で指定する必要がなくなります。
- そのため、誤ってthreadprivate変数をprivate句やその他のOpenMP句内に記述すると、エラーC3059が発生する可能性がある点に注意が必要です。
他のOpenMP句との衝突の詳細
OpenMPでは、異なる句が同時に適用されるときに変数の取り扱いに矛盾が生じるケースがあります。
特にthreadprivateで定義された変数に対して、privateやfirstprivate等の句を適用すると、各スレッドに割り当てられる変数の状態が二重に管理されることになり、コンパイラがエラーを報告することがあります。
private句との組み合わせによる影響
例えば、以下のようなコードではthreadprivateで既に各スレッド用のインスタンスが提供されている変数xを、意図せずprivate句で再指定してしまっています。
#include <omp.h>
int x, y;
#pragma omp threadprivate(x, y)
int main() {
    // ここでxを再度privateとして指定することでエラーが発生する
    #pragma omp parallel private(x, y)
    {
        // 各スレッドでxとyが再初期化されるため矛盾が生じる
        x = y;
    }
    return 0;
}上記のコードでは、コンパイラは'x' : 'threadprivate' シンボルは 'clause' 句の中で使用することはできませんというエラーC3059を報告します。
すでにthreadprivateにより各スレッド用の変数が確保されているため、再びprivate句で指定することに意味がなく、矛盾が生じるためです。
再現コードによるエラー確認
実際の再現コードを用いることで、エラーの発生状況とエラーメッセージの特徴を確認することができます。
エラー発生コード例
以下のコードは、threadprivateで定義した変数を再度private句で指定しているため、コンパイラがエラーC3059を報告します。
#include <omp.h>
int x, y;
#pragma omp threadprivate(x, y)
int main() {
    // エラーが発生する部分: すでにthreadprivate変数をprivateとして利用している
    #pragma omp parallel private(x, y)
    {
        // スレッドごとにインスタンスのxとyにアクセス
        x = y;
    }
    return 0;
}エラーメッセージの内容と特徴
エラーメッセージは以下のような内容となる場合があります。
- 「’x’ : ‘threadprivate’ シンボルは ‘clause’ 句の中で使用することはできません」
- 同様のメッセージがyに対しても表示されることが予想されます。
このエラーメッセージは、threadprivate宣言済みの変数を同じOpenMPディレクティブ内で再度扱おうとする点に着目しています。
コンパイル環境と実行条件
コードを正しく再現しエラーを確認するためには、OpenMPに対応したコンパイラでのコンパイルが必要です。
特にMicrosoft Visual C++の場合、コマンドラインで/openmpオプションを指定する必要があります。
また、GCCやClangなど他のコンパイラを使用する場合も、同様にOpenMPサポートを有効にするオプション(例:-fopenmp)を指定する必要があります。
/openmpオプションの重要性
このオプションは、OpenMPのディレクティブを有効にするために必須です。
もしオプションが指定されなければ、コード内の#pragma ompディレクティブは単なるコメントとして扱われ、並列処理が有効にならなかったり、エラーが発生しない場合もあります。
正しくエラーを再現するためには、必ず/openmpオプションを指定してコンパイルしてください。
対策方法の提案
エラーC3059を解消するためには、threadprivateで定義された変数に対して再度OpenMP句を用いないようにコードを修正することが必要です。
具体的には、グローバル変数threadprivateは初めから各スレッドに割り当てられるため、並列ブロック内で再び管理しようとする必要はありません。
修正コード例の解説
以下は、エラーが発生しないように修正したコード例です。
修正前後のコードの違いとして、修正後はthreadprivateで定義した変数を並列ブロックで再指定するのではなく、必要に応じて初期化や別の句(この例ではfirstprivate)を併用する方法を採っています。
#include <omp.h>
int x = 0, y = 0;   // グローバル変数を初期化
int main() {
    // 修正後はthreadprivateを廃止して、各スレッドに初期値を渡す
    #pragma omp parallel firstprivate(y) private(x)
    {
        // 各スレッドで変数yの値がコピーされ、xは各スレッドで独自に管理される
        x = y;  // xにyの値を代入する処理
    }
    return 0;
}(出力結果は特に表示されません)修正前後のコード比較
- 修正前
- グローバル変数xとyはthreadprivateで宣言され、並列ディレクティブ内で再びprivateとして指定されていた。
- これにより、コンパイラは使用できない重複指定としてエラーを出力していた。
 
- グローバル変数
- 修正後
- グローバル変数は初期値を設定し、threadprivate宣言を削除。
- 並列ブロック内では、xをprivate、yをfirstprivateとして指定し、各スレッドに適切な初期値を代入。
- これにより、エラーが解消され、期待した動作が得られるようになる。
 
- グローバル変数は初期値を設定し、
コード修正時の留意点
エラーを回避するためのコード修正では、以下の点に注意する必要があります。
- threadprivate変数とその他のOpenMP句を重複して使用しないこと。変数の管理方法を統一するようにコード全体を見直す必要があります。
- 変数のスコープや初期値の設定を十分に確認し、各スレッドに対して必要な初期状態が正しく伝播されるように工夫します。
- 修正時は、変更箇所が他の並列処理部分に影響を与えないよう、全体の設計を再確認することが求められます。
環境設定の確認事項
- OpenMPが有効な環境でコンパイルするために、Microsoft Visual C++なら/openmp、GCCやClangなら-fopenmpオプションの指定が必要です。
- IDEやビルドツールの設定においても、OpenMPサポートが正しく有効になっているかを確認してください。
- コンパイラのバージョンや環境依存の挙動にも注意が必要なため、複数の環境でテストを行い、同一の動作が得られることを確認することが望ましいです。
まとめ
本記事では、OpenMPのthreadprivateとprivate句の違いにより発生するコンパイラエラーC3059の原因を解説しました。
エラーの再現コード例やエラーメッセージの特徴、正しい環境設定やコンパイルオプションの重要性も確認でき、修正コード例によってエラー回避方法が理解できる内容となっています。
