コンパイラエラー

C言語におけるコンパイルエラー C3057の原因と対策について解説

C3057は、OpenMPのthreadprivate句で使用する変数の初期化に動的な処理を含めると発生するコンパイラエラーです。

threadprivate変数は、初期値がコンパイル時に確定していなければならず、extern宣言や関数呼び出しによる動的初期化はサポートされません。

コード作成時には、初期化方法に注意が必要です。

エラー発生の原因

OpenMPのthreadprivate句の仕様と制約

OpenMPのthreadprivate句は、各スレッドで独自のインスタンスを持つ変数を定義するために使用されます。

コンパイラは、これらの変数の初期化処理をコンパイル時に解決できる必要があります。

その理由は、各スレッドの開始時に変数の初期化処理を行う際、動的な計算や関数呼び出しがあると、正確な初期値が決定できずエラーが発生する可能性があるためです。

以下に、定数初期化が必須である理由と動的初期化が許容されない理由について詳しく解説します。

定数初期化必須の理由

threadprivate句が指定された変数の初期値は、プログラムのコンパイル時に既知である必要があります。

これは、変数をスレッドごとに複製する際に、各スレッドでの初期状態が一致するようにするためです。

コンパイル時に初期化情報が定まっていると、各スレッドの開始時に同一の値で初期化が行われ、予期しない動作やエラーを防ぐことができます。

具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • 変数の初期化に定数リテラルや定数式を使用する場合、コンパイラは各スレッド用の初期値を正しく生成できます。
  • コンパイル時に初期値が確定していれば、スレッド間での値の不整合を防止できるため、デバッグやメンテナンスが容易になります。

初期化値がコンパイル時に確定できない場合、正しいメモリアドレスの設定に失敗しエラーとなる

動的初期化が許容されない理由

一方、動的初期化の場合は、実行時に計算されるため、複数のスレッドで同じタイミングで初期化処理を行うことが保証できません。

たとえば、関数呼び出しや動的な値に依存した初期化では、初期化の順序やタイミングがスレッドごとに異なる場合があるため、コンパイラはこのような初期化をサポートしていません。

結果として、以下のような問題が発生します。

  • スレッド毎に異なる初期値が設定され、プログラムの予期しない動作につながる可能性がある。
  • 初期化処理が実行時に行われるため、コンパイラが最適化を行えずエラーが出力される。

このため、threadprivate句で指定する変数は、動的ではなくコンパイル時に評価可能な定数初期化に限定されます。

extern宣言や関数呼び出しによる影響

extern宣言や関数呼び出しを用いた初期化は、初期値がコンパイル時に確定しないため、threadprivate句においてエラーを引き起こす原因となります。

たとえば、外部関数で生成される初期値を使用した変数は、プログラムのコンパイル時に正確な初期値を決定できず、コンパイラは次のようなエラーを出力します。

  • 関数呼び出しに依存した初期化は動的初期化と同様の扱いとなり、エラー C3057 が発生する。
  • extern宣言によって外部で定義された変数は、リンク時に初期化が行われるため、スレッドごとの初期化処理に対応できない。

このため、threadprivate句を使用する際は、外部関数やextern変数を利用した初期化を避け、コンパイル時定数による初期化を心がける必要があります。

コード例と問題点の解説

エラーが発生するコード例の紹介

以下に、動的初期化によりエラー C3057 が発生するサンプルコードを示します。

このコードは、threadprivate句において、関数呼び出しを使用した初期化が原因でコンパイルエラーとなる例です。

#include <stdio.h>
// 外部関数のプロトタイプ宣言
extern int getInitialValue();
// グローバル変数の宣言と初期化
int globalVar1 = getInitialValue();  // getInitialValue() による動的初期化
int globalVar2 = 10;                 // 定数初期化
#pragma omp threadprivate(globalVar1, globalVar2)  // globalVar1はエラー対象
int main(void) {
    // OpenMPを用いた並列領域
    #pragma omp parallel copyin(globalVar1, globalVar2)
    {
        // 各スレッドでの変数使用例
        globalVar1 = globalVar2;
        printf("Thread %d: globalVar1 = %d\\n", omp_get_thread_num(), globalVar1);
    }
    return 0;
}
コンパイル時にエラー: 'globalVar1' : 'threadprivate' シンボルの動的な初期化は現在サポートされていません

この例では、globalVar1の初期化に外部関数getInitialValue()が使用されているため、動的初期化となりエラーが発生します。

初期化処理に関する問題点の解説

上記のコード例から分かるように、以下の点が問題となります。

  • 動的初期化: 関数呼び出しを用いた初期化は、スレッドごとのコピーイン処理において初期化値が不明確となるため、エラーが発生します。
  • 定数初期化と動的初期化の混在: 定数初期化が可能な変数と動的初期化が必要な変数を同時にthreadprivate句で指定すると、コンパイラが全体の初期化処理を静的に解決できなくなります。

これらの問題点により、初期化処理の見直しが必要となります。

特に、スレッドごとに同一の初期状態を確実に持たせるためには、コンパイル時に確定可能な初期化方法を選択することが肝要です。

エラー対策と修正方法

適切な初期化方法の選定

エラーを解消するためには、変数の初期化をコンパイル時に評価可能な定数リテラルに変更するか、初期化処理自体を並列領域内に移動する方法が考えられます。

以下に2つのアプローチを示します。

  • 定数リテラルや定数式を用いた初期化に変更する。
  • 並列領域内で初期化処理を実施し、各スレッドで初期化するようにコードを修正する。

これにより、各スレッドでの変数の一貫性が維持され、エラーの発生が回避されます。

プラグマ使用時の注意点

#pragma omp threadprivateを使用する際は、以下の点に注意する必要があります。

  • 変数の初期化がコンパイル時定数であることを確認する。
  • 動的な初期化が必要な場合は、初期化処理を並列領域内に移動し、条件分岐を用いて一度だけ実行されるように制御する。
  • copyin句を併用する場合は、初期化済みの値が正しく複製されることを確認する。

これらの注意点を守ることで、予期しないエラーを未然に防ぐことができます。

コード修正方法の検討

エラーを解消するサンプルコードとして、初期化処理を並列領域内に移動する方法を以下に示します。

ここでは、動的初期化が必要な変数について、各スレッドでの初期化処理を条件分岐により行う方法を採用しています。

#include <stdio.h>
#include <stdbool.h>
#include <omp.h>
// 外部関数のプロトタイプ宣言
extern int getInitialValue();
// グローバル変数の宣言
int globalData;           // 定数初期化ではないグローバル変数
bool isInitialized = false;  // 初期化フラグ変数
#pragma omp threadprivate(globalData, isInitialized)
int main(void) {
    // 並列領域内で初期化処理を実施
    #pragma omp parallel
    {
        // スレッドごとに一度だけ初期化処理を実施するための条件分岐
        if (!isInitialized) {
            globalData = getInitialValue();  // 動的初期化をここで実施
            isInitialized = true;
        }
        printf("Thread %d: globalData = %d\\n", omp_get_thread_num(), globalData);
    }
    return 0;
}
Thread 0: globalData = <getInitialValueの戻り値>
Thread 1: globalData = <getInitialValueの戻り値>
...

このコードでは、各スレッドが初回のみgetInitialValue()を呼び出して初期化を行い、以降は初期化済みの値を使用するようにしています。

これにより、コンパイル時のエラーC3057を回避し、かつ各スレッドで一貫した初期値を持つことが可能になります。

開発環境と実行時の注意事項

コンパイルオプションの設定方法

OpenMPを使用するプログラムでは、コンパイル時に適切なオプションを設定する必要があります。

たとえば、Microsoft Visual C++の場合は/openmpオプションを指定し、GCCを用いる場合は-fopenmpオプションを追加する必要があります。

以下に各環境での設定例を示します。

  • Microsoft Visual C++
    • コンパイル例: cl /openmp sample.c
  • GCC
    • コンパイル例: gcc -fopenmp sample.c -o sample

これらのオプションを正しく指定することで、OpenMPに対応したマルチスレッドプログラムとしてコンパイルすることができます。

マルチスレッド実行時の留意点

マルチスレッド実行時は、各スレッドでの変数の独立性を確実に管理する必要があります。

特にthreadprivate句を使用した変数は、各スレッドごとにコピーが作成されるため、以下の点に注意してください。

  • スレッド間でのデータ共有が不要な変数に対してはthreadprivateを用いる。
  • 共有が必要な変数は、適切な同期処理や排他制御を行う。
  • 並列領域内での初期化処理について、全スレッドで同一条件が適用されることを確認する。

これらの注意点を守ることで、実行時の競合や不整合を防止し、安定したプログラム動作を実現できます。

まとめ

本記事では、OpenMPのthreadprivate句における初期化がコンパイル時定数でなければならない理由や、動的初期化(関数呼び出しやextern宣言)による影響について解説しています。

また、エラーC3057が発生する具体例と、その対策として初期化方法の変更やプラグマ使用時の注意点、コンパイルオプションの設定方法、マルチスレッド実行時の留意点についてもまとめています。

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