C言語・C++におけるOpenMP C3056エラーの原因と対策について解説
C3056エラーは、OpenMPのthreadprivateディレクティブ使用時に発生するエラーです。
シンボルが宣言されているスコープと異なる場所でディレクティブを指定するとエラーとなります。
シンボルの宣言と同じスコープ内でthreadprivateを記述することで、エラーを解消できる事例です。
エラー概要
C3056エラーの特徴
C3056エラーは、OpenMPを用いる際に発生するコンパイルエラーです。
このエラーは、threadprivateディレクティブで指定されたシンボルが、ディレクティブと同じスコープに存在しない場合に出現します。
すなわち、threadprivate句に記述される変数は、そのディレクティブと同じスコープで宣言されなければならず、異なるスコープ内で宣言された変数が指定されるとエラーとなります。
OpenMPとthreadprivateディレクティブの基本
OpenMPは、並列処理を支援するためのライブラリで、C言語やC++に組み込まれています。
threadprivateディレクティブは、各スレッドごとに個別のコピーを保持するために使用されます。
たとえば、グローバル変数を各スレッドで独立して管理する場合に用いられます。
ディレクティブを正しく使うためには、対象となるシンボルが正しいスコープで宣言されている必要があります。
原因の詳細分析
シンボル宣言のスコープに関するポイント
threadprivateディレクティブで指定するシンボルは、ディレクティブが配置されているスコープと同じスコープで宣言される必要があります。
もし関数内部や別のブロック内で宣言された変数をthreadprivateに指定すると、コンパイラはその変数がグローバルまたは適切なスコープにないと判断し、エラーC3056を発生させます。
シンボルとディレクティブのスコープが一致していることを確認することが、エラー回避の基本となります。
エラー発生のメカニズム
エラーC3056は、以下の数式で示される状況に近いです。
\[\text{if (DeclarationScope( symbol ) ≠ DirectiveScope)} \Rightarrow \text{Error C3056}\]
つまり、シンボルの宣言スコープが、threadprivateディレクティブの所在するスコープと一致しない場合に、このエラーが発生します。
これにより、OpenMPは各スレッドに対して正しくスレッドローカルなデータのコピーを提供できなくなります。
発生例とコードサンプル
エラー発生パターンの具体例
以下の例では、threadprivateディレクティブが関数内部で使用されており、対象のグローバル変数xとyが同じブロック内に宣言されていないため、エラーC3056が発生する可能性があります。
// compile with: /openmp
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
int x, y;  // 変数はグローバルに宣言されていると思われがちですが、
           // ここでの使用方法によってはscopeの問題が発生することがあります
void test() {
    // 関数内部でのthreadprivateディレクティブ指定はスコープがずれる例
    #pragma omp threadprivate(x, y)   // エラーC3056が発生する可能性あり
    #pragma omp parallel copyin(x, y)
    {
        x = y;  // 各スレッドでxがyの値をコピーする例
        printf("x = %d, y = %d\n", x, y);
    }
}
int main() {
    x = 10;
    y = 20;
    test();
    return 0;
}x = 20, y = 20
x = 20, y = 20
...(実行環境によって出力順序は変動)コンパイル時の出力例
上記のエラー発生パターンでは、コンパイル時に以下のようなエラーメッセージが表示されます。
“smbol: ‘x’ および ‘y’: シンボルは、’threadprivate’ ディレクティブと同じスコープに存在しません”
このエラーメッセージにより、どの変数が問題となっているかが明確に示されます。
対策と修正方法
正しいthreadprivateディレクティブの配置方法
正しい対策としては、threadprivateディレクティブをグローバルスコープに移動し、対象の変数宣言と同じスコープ内に配置する必要があります。
下記の例では、グローバルスコープにディレクティブを配置することでエラーを回避し、各スレッドで正しく変数が管理されるようにしています。
修正前と修正後のコード比較と解説
以下に、修正前のコードと修正後のコードを示します。
①【修正前】では、threadprivateディレクティブが関数内部にあり、正しいスコープで使用されていないためエラーが発生します。
②【修正後】では、threadprivateディレクティブがグローバルスコープに配置され、対象の変数と同じスコープ内にあるため、エラーが解消されます。
修正前のコード例
// compile with: /openmp
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
int x, y;  // ここでは変数はグローバルに宣言されているが、
void test() {
    #pragma omp threadprivate(x, y)   // 関数内部で指定するとスコープがずれる問題がある
    #pragma omp parallel copyin(x, y)
    {
        x = y;
        printf("x = %d, y = %d\n", x, y);
    }
}
int main() {
    x = 10;
    y = 20;
    test();
    return 0;
}修正後のコード例
// compile with: /openmp /LD
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
int x, y;
#pragma omp threadprivate(x, y)  // 正しくグローバルスコープに配置
void test() {
    #pragma omp parallel copyin(x, y)
    {
        x = y;
        printf("x = %d, y = %d\n", x, y);
    }
}
int main() {
    x = 10;
    y = 20;
    test();
    return 0;
}x = 20, y = 20
x = 20, y = 20
...(実行環境によって出力順序は変動)修正後の例では、xとyがグローバルスコープで宣言され、同じスコープにあるthreadprivateディレクティブにより、各スレッドに対して適切なコピーが作成されます。
これにより、コンパイルエラーC3056が解消され、並列処理が正しく動作するようになります。
まとめ
この記事では、OpenMPを利用する際に発生しがちなエラーC3056について、原因と対策を解説しました。
具体的には、threadprivateディレクティブで指定する変数の宣言スコープがディレクティブのあるスコープと一致していない場合にエラーが発生する仕組みを説明しました。
また、修正前後のコード例を通して正しい変数宣言とディレクティブ配置の重要性が理解できる内容となっています。
