C言語とC++でのOpenMPエラー C3037:reduction句の正しい使い方と対策について解説
C言語やC++のOpenMPでプログラムを作成する際、エラーC3037はreduction句に指定された変数が同じコンテキスト内で共有されず、プライベート扱いされる場合に発生します。
たとえば、変数をprivate指定した状態でreduction句を適用するとこのエラーが起こります。
正しくは、reduction句で使用される変数は各スレッドで個別に確保するのではなく、共有の状態で扱う必要があります。
C3037エラーの基本情報
エラーメッセージの内容と意味
エラー文の解説
C3037エラーは、OpenMPにおけるreduction
句が正しく適用されていない場合に発生するエラーです。
エラーメッセージは「’var’: ‘reduction’ 句の変数は、それを囲むコンテキスト内で共有されなければなりません」という内容で、対象の変数が各スレッドで独立したローカルコピーとして扱われていることを示唆しています。
このエラーは、並列処理における変数のアクセス方法の指定に誤りがあることを示すため、変数がスレッド間で共有される状態でなければならないことを強調しています。
発生条件の確認
エラーが発生する主な条件は以下の通りです。
reduction
句で指定された変数が、同じコンテキスト内でprivate
などの指定によりローカル変数として扱われている場合- 並列ブロック内で、変数が意図せずに各スレッド内で別個に初期化され、最終的な集約処理で正しい結果が得られない場合
これらの条件を満たすと、コンパイラは対象の変数が本来共有されるべきであると判断し、C3037エラーを出力します。
エラー発生の原因と背景
reduction句の仕様と注意点
変数の共有とプライベートの違い
OpenMPでは、変数の扱いに「共有」と「プライベート」の区別があります。
- 共有変数はすべてのスレッドが同じメモリアドレスを参照し、値を共有します。
- プライベート変数は各スレッドに個別のコピーが生成され、スレッドごとに独立した値として扱われます。
reduction
句を使用する際には、対象の変数が最終的に正しく集約される必要があるため、各スレッドでの操作結果を最初に保持するために、初期値が設定されつつも全体では共有された状態となることが求められます。
OpenMPにおける変数管理の基本
OpenMPでは、変数のスコープは宣言された位置と使用される並列ブロックによって決定されます。
- グローバル変数は、デフォルトで共有変数として扱われます。
- ローカル変数は並列ブロックに入ると自動的にプライベート変数になる場合があります。
これにより、並列処理における変数の管理は、適切な変数指定に基づいた操作が必要となり、reduction
句もその一環として正しく使用しなければなりません。
private指定との誤用
reduction句とprivate指定の競合
private
指定は、各スレッドに対して変数の独立したコピーを提供するために用いられます。
しかし、reduction
句は各スレッドで計算された部分結果を集約する目的があるため、変数が共有される前提で動作します。
両者が同時に指定されると、コンパイラはどちらの指定に従うべきか判断できず、エラーC3037を出力します。
各スレッドで独自に初期化されるべきか、全体で共有されるべきかの矛盾が原因です。
問題発生の具体例
たとえば、以下のようなコードでは、g_i
変数に対してprivate
指定とreduction
句が同時に使われているため、エラーが発生します。
各スレッドが独自に変数のコピーを保持する一方で、集約処理を行うためには共有変数である必要がある点に問題があります。
問題のあるコード例と解析
エラーを引き起こすコード例の紹介
以下のコードは、C3037エラーを引き起こす具体例です。
コード内でグローバル変数g_i
に対してprivate
指定が行われた後、reduction
句が適用されています。
エラー発生箇所の特定
エラー発生の主要な箇所は、次の2点です。
#pragma omp parallel private(g_i)
#pragma omp for reduction(+:g_i)
この組み合わせにより、g_i
が各スレッドでプライベートとして扱われる一方、集約処理は共有変数でなければ正しく実行できなくなっています。
コンパイラの反応とエラーメッセージの解釈
コンパイラは、g_i
変数に対してreduction
句が指定されながらも、同一の並列コンテキスト内でプライベート変数として定義されていることを検出します。
その結果、以下のようなエラーメッセージが表示されます。
- 『g_i: “reduction” 句の変数は、それを囲むコンテキスト内で共有されなければなりません』
このメッセージは、変数管理に矛盾があることを示しており、コード修正の必要性を明確に伝えています。
以下はエラーを発生させるコード例です。
#include <stdio.h>
#include <omp.h>
int g_i; // グローバル変数
int main() {
int i;
// g_iをプライベートとして指定しているためエラー発生
#pragma omp parallel private(g_i)
{
#pragma omp for reduction(+:g_i)
for (i = 0; i < 10; ++i) {
g_i += i; // 各スレッド内で加算を実施
}
}
printf("g_i = %d\n", g_i);
return 0;
}
'C3037' error: 'g_i': 'reduction' 句の変数は、それを囲むコンテキスト内で共有されなければなりません
reduction句の正しい使い方と対策
正しい記述方法の説明
正しい記述方法では、reduction
句を用いる際に変数をプライベート指定しないことが必要です。
変数は共有状態で管理され、各スレッドで局所的に計算された結果が最終的に集約されます。
事前に変数の初期化も正確に行うことが大切です。
修正例コードの解説
以下のコード例は、正しく記述されたものです。
グローバル変数g_i
は共有状態を保ち、reduction
句によって各スレッドの計算結果が正しく集約されるように設定しています。
#include <stdio.h>
#include <omp.h>
int g_i = 0; // グローバル変数を初期化
int main() {
int i;
// 正しくはg_iのプライベート指定を行わない
#pragma omp parallel
{
#pragma omp for reduction(+:g_i)
for (i = 0; i < 10; ++i) {
g_i += i; // 各スレッドで局所的に加算し、最終結果を集約
}
}
printf("g_i = %d\n", g_i); // 出力は45となるはずです
return 0;
}
g_i = 45
注意すべき変数指定のポイント
変数指定において確認すべきポイントは以下の通りです。
- 対象変数が
reduction
操作に適しているかどうか - 初期値の設定が正しく行われているか
- 使用する演算子(この例では
+
)が正しく指定されているか
これらの点を確認することで、並列処理における集約処理が正しく実施されるようになります。
対策実施時の確認方法
対策を反映した後は、以下の点について確認してください。
- コンパイル時にエラーや警告が解消されているか
- 並列実行後に集約結果が期待通りになっているか
コード修正の流れ
コード修正の際は、次の流れに沿って行ってください。
- 元のコードから
private
指定を削除する。 reduction
句が適用される範囲を確認し、対象変数が共有状態であることを確認する。- 新たに記述したコードをコンパイルし、エラーが解消されているか確認する。
修正後の動作確認チェック事項
修正後のコードを動作確認する際は、下記をチェックリストとして活用してください。
- コンパイル時のエラーや警告が解消されているか
- 各スレッドでの変数初期化が正しく行われているか
- 集約演算後に得られる結果が期待値と一致しているか
- 使用される演算子が正しく適用されているか
以上の点を確認することで、修正が正しく実施され、並列処理の結果が正確に集約されることが確認できます。
まとめ
本記事では、C3037エラーの原因や発生条件、OpenMPにおけるreduction
句とprivate
指定の相違について解説しています。
エラーが発生する理由を具体的なコード例で示し、正しい変数指定と集約方法をサンプルコードを交えて説明しています。
これにより、正しい記述方法を理解し、エラー解消に向けた修正実践法が把握できる内容です。