C言語とC++におけるコンパイラエラー C2993 の原因と対処法について解説
この記事では、C言語とC++の開発環境で発生するコンパイラ エラー C2993 について解説します。
C++のテンプレートで、非型テンプレートパラメーターに無効な型が指定された場合に起こる問題です。
特にC++20以前では型の使用に制約があり、エラーが発生することがあります。
具体例を交えながら原因と対処法について説明します。
コンパイラエラー C2993 の概要
エラー発生の背景
C++において、テンプレートパラメーターとして使用できる型は、言語仕様に従って厳密に定義されています。
特に非型テンプレートパラメーターの場合、C++20以前では構造体やクラスといった型そのものを直接指定することができず、代わりにポインター型などを使用する必要がありました。
この仕様上の制約から、誤った型をテンプレートパラメーターとして指定した場合にコンパイラエラー C2993 が発生することがあります。
エラーは特に非型テンプレートパラメーターに関する記述ルールに違反している場合に顕著に現れます。
エラーの原因と特徴
エラー C2993 は、「非型テンプレートパラメーターとして無効な型が指定された」場合にコンパイラから出力されるエラーメッセージです。
たとえば、右辺値参照型や構造体型を直接非型テンプレートパラメーターに使用しようとすると、このエラーが発生します。
具体的には、以下のようなコードが原因となります。
- 非型テンプレートパラメーターに対して、C++20以前では構造体、クラス、共用体を直接使用できない点。
- C++20以降では許容される型が拡大されたとはいえ、右辺値参照型やパラメーター・パックとしての使用は依然として禁止されている点。
これらの特徴により、誤ったテンプレート定義がコンパイル時に検出され、開発者に対して修正の必要性を知らせています。
テンプレートパラメーターの制約
非型テンプレートパラメーターの仕様
非型テンプレートパラメーターは、型以外の値をテンプレートに渡すための仕組みです。
ここでは、C++の各バージョンにおける仕様の違いについて説明します。
C++20以前の制約
C++20以前の規格では、非型テンプレートパラメーターとして使用できるのは以下のような型に限定されていました。
- 整数型および列挙型
- ポインター型(ただし、構造体やクラスそのものは不可)
- 一部の限定されたリファレンス型
たとえば、構造体やクラスを直接テンプレートパラメーターとして指定しようとすると、コンパイラエラー C2993 が発生します。
概ね、型の「値」としての振る舞いを持たないオブジェクトは非型パラメーターに適さないという考え方に基づいています。
C++20以降の変更点
C++20以降では、非型テンプレートパラメーターに使用できる型の範囲が拡大され、構造体やクラス型が許容される場面も登場しました。
ただし、以下のような点では依然として制限が存在します。
- 右辺値参照型や右辺値型のパラメーター・パックは使用できない。
- 利用できるテンプレートパラメーターの値は、コンパイル時に確定可能でなければならない。
この変更により、テンプレートの柔軟性が向上した一方で、依然として特定の使用方法には十分な注意が必要です。
型テンプレートとの違い
型テンプレートパラメーターは、テンプレートの引数として「型」を渡す仕組みです。
型テンプレートパラメーターは、任意の型を受け入れることができ、オブジェクトの値に依存せずにコンパイル時の型チェックが行われます。
対して非型テンプレートパラメーターは値そのものを取り扱い、数値やアドレスなどが指定されます。
そのため、型の選定・使用に対してより厳格なルールが適用され、間違った型が指定されると即座にコンパイルエラーとなるという違いがあります。
発生事例とエラーメッセージ解説
エラーメッセージの詳細
コンパイラエラー C2993 は、非型テンプレートパラメーターに対して許可されていない型が指定された場合に出力されます。
例えば、以下のようなエラーメッセージが表示されることがあります。
“identifier: 非型テンプレート パラメーター ‘parameter’ に対する無効な型です”
このメッセージは、テンプレート定義に含まれるパラメーターが言語仕様に違反していることを示しており、特に右辺値参照型や構造体型が原因となるケースが多いです。
エラーの内容をよく確認することで、どの部分が無効な型として扱われているのかを把握することができます。
サンプルコードによる解析
以下に、エラー C2993 を発生させる例と、その修正方法の例を示します。
まずは、エラーを引き起こすコード例です。
#include <iostream>
using namespace std;
// このテンプレートは C++17 ではエラー C2993 を発生させます
template <int&& I> // C++17では右辺値参照型は非型テンプレートパラメーターとして無効
struct ErrorSample {};
// エラーの回避策として、ポインター型を利用した正しい例
template <int* I>
struct CorrectSample {};
int main(){
// 以下は意図的にエラーが発生するコードの例です。
// コンパイルテストの際は、エラーを回避するためにコメントアウトしてください。
// ErrorSample<10> instanceError; // コンパイルエラー C2993
int value = 10;
CorrectSample<&value> instanceCorrect; // 正常に動作する例
cout << "正しいテンプレートパラメーターを使用しています" << endl;
return 0;
}
正しいテンプレートパラメーターを使用しています
上記のコードは、非型テンプレートパラメーターに対して右辺値参照型を指定するとエラーが発生する例と、その回避策としてポインター型を利用する方法を示しています。
エラーメッセージと実際のコード例を照らし合わせることで、どこに問題があるのかを明確に理解できるようになります。
対処法と修正方法
C++17以前の対応策
C++17以前では、非型テンプレートパラメーターとしての使用が厳しく制限されているため、エラー C2993 を回避するには以下のような方法が有効です。
- 直接構造体やクラス型を指定するのではなく、それらのポインター型をテンプレートパラメーターとして利用する。
- テンプレートパラメーターとして渡す値がコンパイル時に定数として評価可能であることを確認する。
具体例として、右辺値参照型ではなく、ポインター型を用いる方法があります。
これにより、コンパイルエラーの発生を防ぐことができます。
C++20以降の対応方法
C++20以降では、仕様の緩和により使用できる型が拡大されました。
しかし、依然として右辺値参照型やパラメーター・パックとしての使用には制限があります。
以下の点に注意してください。
- 構造体やクラス型が直接非型テンプレートパラメーターとして許容される場合もあるが、右辺値参照型の場合はエラーとなる。
- テンプレート定義を書く際は、指定する型がC++20の仕様に沿っているか再確認する。
C++20の環境でコードを記述する場合は、最新の言語仕様やコンパイラのバージョン情報を参考にしながら、正しい型指定が行われているかチェックすることが重要です。
コード修正時の確認項目
コードを修正する際は、以下の点を確認してください。
- 使用しているテンプレートパラメーターが、現在のC++標準で許容されている型かどうか。
- 非型テンプレートパラメーターに対して、構造体やクラス型を直接使用していないか検証する。
- C++のバージョン指定(例:
/std:c++17
や/std:c++20
)が正しく行われているか確認する。 - エラーメッセージと照らし合わせて、問題となる部分がどこなのかを特定する。
以上の確認項目をチェックすることで、エラー C2993 の原因となる部分を特定し、該当箇所の修正を行うことができます。
まとめ
この記事では、コンパイラエラー C2993 の発生背景や原因、非型テンプレートパラメーターに関する仕様の違いについて学べます。
特にC++17以前とC++20以降の各制約の違いや、エラーメッセージをもとにした具体例を通じて、誤ったテンプレート定義によるエラーの原因解明と、その対処法が理解できる内容となっています。