C/C++におけるC2928エラーについて解説
C2928エラーは、特にC++のテンプレート利用時に発生するコンパイラエラーです。
指定された識別子が、関数や静的なデータメンバーとして定義されていない場合に、明示的なインスタンス生成ができずにこのエラーが表示されます。
ソースコードの記述を見直し、正しいメンバーのインスタンス化が行われているか確認することで解決できます。
エラー発生の背景
C++のテンプレート機能では、型に依存したコード生成が動的に行われます。
特定の型に対して明示的にインスタンス生成を行う場合、その型のメンバーが関数や静的データメンバーでなければ、エラーが発生することがあります。
ここでは、テンプレートの基本やエラー発生の条件について具体例を交えながら解説します。
テンプレートの基本
C++では、関数やクラスのテンプレートを使って、さまざまな型に対応するコードを生成することができます。
テンプレートを利用する際に、どのタイミングで実体化(インスタンス生成)が行われるか、またその対象がどのようなメンバーであるかを正しく理解することが重要です。
明示的なインスタンス生成の仕組み
明示的なインスタンス生成では、テンプレートクラスやテンプレート関数を特定の型に対して展開することが要求されます。
これは、例えばプログラム内で頻繁に使われる型に対して事前にコードを生成しておくことで、リンク時の問題を回避するために利用されるケースがあります。
また、明示的なインスタンス生成は、コンパイラに対して明確な型指定を与えることで、どのメンバーに対して実体化を行うのかを判断するための重要なプロセスとなっています。
テンプレートの制約とメンバーの種類
テンプレートクラス内の各メンバーには、通常のデータメンバー、メンバー関数、そして静的データメンバーなどがあります。
ただし、明示的なインスタンス生成の対象として許可されるのは、主に関数や静的データメンバーとなります。
このため、通常のデータメンバーに対してインスタンス生成を試みると、C2928エラーが発生する可能性があります。
C2928エラーは、「identifier はテンプレートクラスの関数または静的なデータ メンバーのいずれでもありません」というメッセージとともに報告されます。
エラー発生条件
明示的なインスタンス生成が不適切に使用された場合、エラーが発生します。
ここでは、どのような状況でC2928エラーが発生するのか、事例とともに説明します。
許可されないメンバーのインスタンス化
明示的なインスタンス生成の対象として、通常のデータメンバーを指定することはできません。
たとえば、テンプレートクラス内で通常のメンバー変数に対してインスタンス生成を試みると、C2928エラーが発生します。
このエラーは、通常のメンバーはインスタンス生成の対象外であり、実体化することができないために起こるものです。
誤った識別子利用の事例
開発中、誤った識別子を指定することにより、本来インスタンス生成が許可されないメンバーを対象としてしまう場合があります。
例えば、静的メンバーと通常メンバーの区別が不明瞭な場合、意図せず誤ったコードパターンとなりエラーとなる可能性があります。
その結果として、エラーメッセージに「’identifier’ はテンプレートクラスの関数または静的なデータ メンバーのいずれでもありません」と表示される場合があります。
C2928エラーの詳細解析
C2928エラーは、明示的なインスタンス生成に際して不適切なメンバーを指定した場合に発生します。
ここでは、エラーメッセージの構成とともに、その意味や原因について詳しく見ていきます。
エラーメッセージの構成
C2928エラーのメッセージは、誤ったインスタンス生成に対する具体的な情報を示しています。
識別子不一致の指摘内容
エラーメッセージには、指定した識別子がテンプレートクラス内の関数または静的なデータメンバーに該当しないという記述が含まれています。
たとえば、以下のようなエラーメッセージが表示される場合があります。
- 「明示的なインスタンス生成。
identifier
はテンプレート クラスclass-name
の関数または静的なデータ メンバーのいずれでもありません」
このメッセージは、指定された識別子が不適切な対象であることを示しており、実際に該当部分のコードを再確認する必要があることを教えてくれます。
コンパイラのエラー解説
コンパイラは、明示的なインスタンス生成に際して正しい対象が選択されているかを厳密にチェックしています。
対象外である通常のデータメンバーに対してインスタンス生成を試みると、C2928エラーが発生します。
エラーメッセージは、どの部分が不正であるかを具体的に示しており、エラー解決の手がかりとなります。
不適切なコード例の検証
ここでは、C2928エラーを誘発するコードパターンと、その修正例について説明します。
エラーを誘発するコードパターン
以下のサンプルコードは、通常のデータメンバーに対して明示的なインスタンス生成を試みた場合の例です。
このコード内のコメント部分に示された行を有効にすると、C2928エラーが発生します。
#include <iostream>
// テンプレートクラスの定義
template<typename T>
class MyClass {
public:
int member; // 通常のデータメンバー(明示的なインスタンス生成不可)
};
int main() {
std::cout << "エラー例: メンバー変数に対する明示的インスタンス生成は不可です。" << std::endl;
return 0;
}
// 以下の行はコンパイルエラーとなり、C2928エラーを引き起こす例です。
// template int MyClass<int>::member;
(コンパイルエラー:'member' は関数または静的なデータ メンバーのいずれでもありません)
正しいコードとの比較
次に、明示的なインスタンス生成が適用可能な静的データメンバーを対象とした、正しいコード例を示します。
#include <iostream>
// テンプレートクラスの定義
template<typename T>
class MyClass {
public:
int member;
static int staticMember; // 明示的なインスタンス生成が可能な静的メンバー
};
// クラス全体の明示的なインスタンス生成
template class MyClass<int>;
// 静的メンバーに対する明示的なインスタンス生成
template int MyClass<int>::staticMember;
int main() {
MyClass<int> obj;
obj.member = 10;
std::cout << "member: " << obj.member << std::endl;
std::cout << "staticMember: " << MyClass<int>::staticMember << std::endl;
return 0;
}
member: 10
staticMember: 0
この正しいコード例では、staticMember
に対する明示的なインスタンス生成が正しく行われており、C2928エラーは発生しません。
エラー解決方法の検討
C2928エラーを解消するためには、コード内で明示的なインスタンス生成の対象とするメンバーが正しいものかどうかを確認する必要があります。
以下では、コード修正の手順とエラー確認のポイントについて解説します。
コード修正の手順
まずは、エラーの原因となっているメンバー定義とインスタンス生成の関係を整理することが大切です。
メンバー定義の見直し
エラーが発生している場合、対象となるメンバーが関数または静的データメンバーとして正しく定義されているかを確認します。
もし、明示的なインスタンス生成が必要な場合は、そのメンバーを静的に定義するか、関数として実装するようコードを修正します。
適切なインスタンス生成への対応
本来、明示的なインスタンス生成が必要な場合は、コード内で適用可能な静的メンバーを対象としてインスタンス生成を行います。
不要なインスタンス生成の記述を削除するか、正しい対象に修正することでエラーを回避できます。
エラーチェックのポイント
エラー解決を進める上で、以下のポイントに注意してコードを確認してください。
コンパイラメッセージの詳細確認
コンパイラが出力するエラーメッセージは、問題の箇所を具体的に指摘しています。
メッセージ内の識別子や型情報をもとに、どのメンバーが不適切な対象とされているかを確認してください。
この情報は、コード修正の判断材料となります。
再コンパイルによる検証
コード修正後、必ず再度コンパイルしてエラーが解消されたか確認する必要があります。
修正箇所を限定的にチェックするため、一部分ずつ変更を加えながらコンパイルを行うと、問題箇所が明確になりやすくなります。
関連情報
C2928エラーに関する理解を深めるため、他の情報と照らし合わせることも有用です。
参考ドキュメントの紹介
Microsoft Learn のリファレンス情報
Microsoft Learn の公式ドキュメントでは、C2928エラーについて詳細な解説がされています。
公式リファレンスには、エラーが発生する原因や、その際の正しいインスタンス生成方法について具体的な例が示されています。
この情報を参考にすることで、エラー解決の方針を明確にすることができます。
他のコンパイラエラーとの比較
類似エラーの事例検証
コンパイラは、明示的なインスタンス生成に関連するエラーについてさまざまなケースを提供しています。
例えば、許可されない対象に対するインスタンス生成がC2928エラーを引き起こす一方で、関数の重複定義など他のエラーも発生する場合があります。
これらの類似エラーを比較検証することで、エラー原因の違いとその対処法がより明確に理解できるようになります。
まとめ
この記事では、C/C++で発生するC2928エラーの原因や背景について解説しています。
テンプレートの明示的なインスタンス生成の仕組みや、その制約として通常のデータメンバーが対象外である点を説明し、エラーが発生する具体例と正しいコード例を示しています。
また、エラー解決のためのコード修正手順やコンパイラの警告をもとにした検証方法も紹介しており、C2928エラーに直面した場合の対処法が理解できる内容となっています。