コンパイラエラー

Microsoft Visual C++ のコンパイラエラー C2775 の原因と対策について解説

Microsoft Visual C++で発生するコンパイラエラー C2775は、__declspec(property)を用いてプロパティを定義する際、getメソッドが定義されていない状態で値の取得操作を行うと起こります。

サンプルコードでは、getメソッドが無いプロパティ「prop」に対してアクセスしたためエラーとなります。

__declspec(property) の仕様

プロパティ定義の構文と機能

Microsoft Visual C++ の拡張機能である __declspec(property) は、クラスや構造体においてプロパティのような振る舞いを実現するために用いられます。

これにより、内部のメンバー変数へ直接アクセスするのではなく、あたかも単一の変数にアクセスするかのように、あらかじめ指定されたゲッター(get)やセッター(put)の関数を介して操作が行われます。

例えば、メンバー変数の読み出しや代入の際に、それぞれの関数が自動的に呼び出されることにより、データの検証や加工処理など追加のロジックを簡単に実装することが可能となります。

get と put メソッドの役割

getメソッドは、プロパティの値を取得する際に呼び出されます。

プロパティにアクセスする際、内部的にはこの関数が実行され、必要な値が返される仕組みです。

一方、putメソッドはプロパティへの値の代入時に呼び出され、値の設定や検証、変換などを行うために利用されます。

このように、両者の役割を明確に分けることで、カプセル化を強化し、意図しないデータの操作を防止する効果が期待できます。

C2775 エラーの発生条件

get メソッド未定義による原因

コンパイラエラー C2775 は、プロパティ宣言時に getメソッドが定義されていないにもかかわらず、プロパティの値を取得しようとした場合に発生します。

具体的には、__declspec(property(put=SetProp)) のように、putメソッドのみが指定されているプロパティに対して、コード側で読み出し操作(例: x = obj.prop;)が行われた場合、該当する getメソッドが存在しないためにエラーとなります。

コンパイラのエラー検知の仕組み

コンパイラは、プロパティが利用される際に、宣言された属性と実際に定義されている関数を照合します。

もし、プロパティの読み出しが行われたときに対応する getメソッドが存在しなければ、コンパイル段階でエラー C2775 を検出します。

プロパティ利用時の挙動とエラーチェック

プロパティ利用時には、通常のメンバー関数呼び出しと同様に、プロパティに関連付けられた get または putメソッドが自動的に呼び出されます。

読み出し操作の場合、コンパイラは内部的に getメソッドを呼び出すコードを生成します。

そのため、getメソッドが宣言されていないと、呼び出し対象が存在しないとしてエラーが発生します。

エラーメッセージの内容解析

エラーメッセージには、たとえば

'prop' : このプロパティに関連付けられた 'get' メソッドはありません

と表示されます。

これは、プロパティに対する読み出し操作が行われた際に、対応する getメソッドが定義されていないことを示しており、問題箇所を迅速に特定する手助けとなります。

コード例による問題点の詳細解析

エラー発生コードの事例

以下は、getメソッドが定義されていないためにエラー C2775 が発生するコード例です。

#include <iostream>
struct A {
    // プロパティ 'prop' は put メソッドのみ定義されているため get メソッドが存在しません。
    __declspec(property(put=SetProp)) int prop;
    // セッター関数だけが定義されています。
    void SetProp(int newValue) {
        value = newValue;
    }
private:
    int value;
};
int main() {
    A a;
    int x;
    // 以下の行でプロパティの取得が試みられ、エラー C2775 が発生します。
    x = a.prop;
    return 0;
}

宣言時の不足点の特定

このコードでは、prop の定義において put=SetProp のみ指定しており、読み出し操作を担う getメソッドが宣言されていません。

そのため、プロパティへのアクセス時に適切な値返却関数が存在せず、コンパイラはエラーを生成します。

正しい実装方法との比較

正しい実装では、プロパティに対して getput の両方のメソッドが定義されている必要があります。

以下のコード例は、両方のメソッドが正しく実装されている場合の例です。

#include <iostream>
struct A {
    // プロパティ 'prop' に対し、get および put の両方を定義しています。
    __declspec(property(get=GetProp, put=SetProp)) int prop;
    // ゲッター関数: プロパティの値を返します。
    int GetProp() const {
        return value;
    }
    // セッター関数: プロパティの値を設定します。
    void SetProp(int newValue) {
        value = newValue;
    }
private:
    int value;
};
int main() {
    A a;
    // セッター関数が呼ばれ、内部で値が設定されます。
    a.prop = 100;
    // ゲッター関数が呼ばれ、内部の値が取得されます。
    std::cout << a.prop << std::endl;
    return 0;
}

get メソッド実装による回避策

このように、プロパティの宣言において必ず getメソッドも指定することで、読み出し操作が正常に行われ、エラー C2775 を回避することができます。

読み出しと書き込みの両方の操作に対して、それぞれのメソッドが適切に定義されることが最も重要です。

修正方法の具体的手順

コード修正の流れ

エラーを解消するための修正手順は以下のとおりです。

  • 該当するプロパティの定義箇所を確認する
  • 読み出し操作が行われている場合、対応する get メソッドが欠如していないかをチェックする
  • 欠如している場合は、クラス内部又は外部で get メソッドを実装する
  • 正しいメソッド指定後、コンパイルエラーが解消されるか確認する

修正前後のコード比較

以下に、修正前と修正後のコード例を示します。

修正前のコード

#include <iostream>
struct A {
    // プロパティ 'prop' は put メソッドのみ定義されているため、読み出し時にエラーが発生します。
    __declspec(property(put=SetProp)) int prop;
    void SetProp(int newValue) {
        value = newValue;
    }
private:
    int value;
};
int main() {
    A a;
    // get メソッドが存在しないため、以下の行で C2775 エラーが発生します。
    int x = a.prop;
    return 0;
}

修正後のコード

#include <iostream>
struct A {
    // プロパティ 'prop' に対して、get および put の両方のメソッドを定義しています。
    __declspec(property(get=GetProp, put=SetProp)) int prop;
    // ゲッター関数でプロパティの値を取得します。
    int GetProp() const {
        return value;
    }
    // セッター関数でプロパティの値を設定します。
    void SetProp(int newValue) {
        value = newValue;
    }
private:
    int value;
};
int main() {
    A a;
    a.prop = 10;  // セッター関数が呼ばれます。
    int x = a.prop;  // ゲッター関数が呼ばれます。
    std::cout << "プロパティの値: " << x << std::endl;
    return 0;
}
プロパティの値: 10

まとめ

本記事では、Microsoft Visual C++ の拡張機能である __declspec(property) の構文や、そのプロパティに付随する getputメソッドの役割について丁寧に説明しました。

さらに、getメソッドが定義されていない場合に発生するエラー C2775 の原因と、コンパイラがエラーを検知する仕組みを解説しております。

最後に、エラー発生時のコード例と、正しい実装例を比較しながら具体的な修正手順を紹介しており、実際のコード修正の参考になる内容となっています。

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