C言語/C++のコンパイラエラー C2722:::operator誤用によるnew/delete再定義問題について解説
この記事では、C言語やC++の開発環境で発生するコンパイラエラー C2722について説明します。
このエラーは、グローバルに定義されるnewやdeleteの再定義時に、誤ってスコープ解決演算子(::)を付けた場合に発生します。
原因や具体的な修正方法について簡潔に解説します。
エラーC2722の原因
このエラーは、グローバルなnewおよびdelete演算子の再定義時に、スコープ解決演算子::を誤って用いてしまうことが原因です。
グローバル領域で定義されるnewとdeleteは、C++標準ライブラリで既に定義されているため、あえてスコープ解決演算子を付加して再定義することは意味がなく、エラーが発生します。
::演算子の役割と使用目的
::演算子は、C++においてスコープを明示するために使用されます。
- クラス名とメンバー名を結び付けるときや、名前空間内の名前を参照するときに使います。
- グローバルスコープに存在する関数や変数を明確に参照する際も用います。
たとえば、クラス内でローカルのメンバーとグローバルの同名関数があった場合、::を利用してグローバル関数を呼び出すことができます。
しかし、newおよびdeleteはグローバルに定義されるため、::newや::deleteと記述して再定義する必要はありません。
new/delete演算子のグローバル特性
newとdeleteは、C++のメモリ割り当てと解放のための基本的な演算子です。
これらはグローバルに定義され、プロジェクト全体で使用されます。
- これらの演算子は、オーバーロード可能ですが、その際もグローバルなスコープに定義されなければなりません。
- 再定義する際には余分なスコープ解決演算子::を付加せず、シンプルに再定義する必要があります。
グローバルに定義されたnewとdeleteに対してスコープ解決演算子を付けると、エラーC2722が発生する理由は、既にグローバルな名前空間に存在するため、名前の曖昧性や不整合が生じるためです。
再定義時の::演算子誤用事例
開発中によく見られる誤用例として、グローバルで定義されているnewおよびdeleteに対して、意図せず::演算子を付けて再定義してしまうケースがあります。
たとえば、次のようなコードはエラーC2722を起こします。
#include <cstdlib>
// 誤った再定義例:グローバルnew演算子に対して::を付加している
void* ::operator new(size_t size) {
    return std::malloc(size);
}
// 誤った再定義例:グローバルdelete演算子に対して::を付加している
void ::operator delete(void* ptr) noexcept {
    std::free(ptr);
}
int main() {
    int* p = new int(10);
    *p = 42;
    std::free(p); // 本来はdeleteで解放する必要がある
    return 0;
}上記コードでは、::operator newや::operator deleteと記述しているため、コンパイラは「グローバルスコープでの再定義に余分な::が含まれている」と判断し、エラーC2722が発生します。
エラー発生時の症状と事例
エラーC2722が発生すると、コンパイラからは明確なエラーメッセージが出力され、再定義されたnewまたはdeleteの記述箇所が指摘されます。
エラーメッセージは、'::operator' : 次の演算子コマンドは不正です、'operator operator' を使用しますのような形をとり、意図した再定義方法と異なる記述に対して警告を発します。
コンパイラからのエラーメッセージ解析
多くの場合、コンパイラは以下のような出力をします。
- ::operatorと記述された部分が問題箇所として指摘されます。
- 「グローバルで定義されるnew及びdeleteに対しては、スコープ解決演算子は不要」というメッセージが含まれていることが多いです。
このエラーメッセージを理解することで、問題の根本的原因が再定義時に誤ったスコープ指定子を付加している点にあると認識できます。
発生するコード例
C言語での事例
C言語自体にはnewやdeleteは存在しませんが、C++のコードと共有するC言語のソースファイル内で誤ってC++の構文を含むケースもあります。
例えば、C言語ソース内でC++ヘッダーをインクルードし、間違った記述があると、以下のようなコードが現れる可能性があります。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
// 以下は誤った記述例ですが、C言語では通常new/deleteは使用しません。
// C++コードとの混在により、意図せぬコンパイルエラーを発生させる可能性がある例です。
void* ::operator new(size_t size) {
    return malloc(size);
}
int main(void) {
    printf("C言語のソース内で誤った再定義がされている例です。");
    return 0;
}このようなコードはC言語コンパイラでコンパイルしようとすると、構文エラーが発生するため注意が必要です。
C++での事例
C++ではnewやdeleteのオーバーロードが許容されていますが、前述の通りグローバル定義においては::演算子を付加してはいけません。
次のコード例は、誤った定義が原因でエラーC2722が発生する状態を示しています。
#include <iostream>
#include <cstdlib>
// 誤った再定義例(エラーC2722を発生させる)
void* ::operator new(size_t size) {
    return std::malloc(size);
}
void ::operator delete(void* ptr) noexcept {
    std::free(ptr);
}
int main() {
    // メモリ割り当てを試みるが、再定義によりコンパイルエラーになる
    int* p = new int(10);
    std::cout << *p << std::endl;
    delete p;
    return 0;
}// コンパイル時に出力されるエラーメッセージの一例
// error C2722: '::operator': 次の演算子コマンドは不正です、'operator operator' を使用しますこのサンプルコードは、正しくない::付加のためにエラーが出る典型例であり、問題の原因把握に役立ちます。
修正方法と対応策
エラーC2722を解消するためには、newおよびdelete演算子の再定義から誤った::演算子を削除する必要があります。
以下に具体的な対処方法を示します。
::演算子の削除方法
再定義時に::演算子を含めず、シンプルにoperator newやoperator deleteと記述してください。
具体的には、グローバルスコープの指定は自明であるため、以下のように記述を修正します。
- 誤った記述:
void* ::operator new(size_t size) { ... }
- 正しい記述:
void* operator new(size_t size) { ... }
正しいnew/delete再定義の実装
正しい再定義方法を理解するために、C言語とC++の場合での対処法をそれぞれ説明します。
C言語の場合の対処方法
C言語では、もともとnewやdelete演算子は存在しないため、これらの演算子の再定義は不要です。
もしC言語とC++のコードが混在している場合は、C++固有の記述が含まれないように注意し、C++コンパイラ向けのコードは専用の.cppファイルに分離するなどの対策を講じてください。
C++の場合の対処方法
C++においてnewやdelete演算子をオーバーロードする際は、余分なスコープ指定を行わずに定義してください。
以下は正しい実装のサンプルコードです。
#include <iostream>
#include <cstdlib>
// 正しい再定義例:グローバルnew演算子の再定義
void* operator new(size_t size) {
    if (void* ptr = std::malloc(size)) {
        return ptr;
    }
    throw std::bad_alloc();
}
// 正しい再定義例:グローバルdelete演算子の再定義
void operator delete(void* ptr) noexcept {
    std::free(ptr);
}
int main() {
    // 正常にメモリ割り当てが行われる例
    int* number = new int(100);
    std::cout << "Allocated value: " << *number << std::endl;
    delete number;
    return 0;
}Allocated value: 100このコードは、余分なスコープ解決演算子を削除することで、エラーC2722を解消し、正しくコンパイルおよび実行できるようになっています。
注意事項と留意点
再定義の際やエラーメッセージに対応する際には、以下の点に注意してください。
コンパイラ固有の挙動
各コンパイラによってエラーメッセージの詳細や指摘箇所が異なる場合があります。
- MicrosoftのVisual C++ではエラーC2722として明確に指摘されることが多いですが、他のコンパイラでは異なるメッセージが表示される可能性があります。
- エラーメッセージを正確に読み取り、再度コードを見直すことが重要です。
他の演算子再定義との違い
newやdelete以外の演算子のオーバーロードでは、::演算子を用いて名前空間やクラススコープを明示する場面が多々あります。
- これらの演算子については、適切なスコープ指定が必要となりますが、グローバルなnewおよびdeleteに関しては、不要な::指定がエラーの原因となるため、十分に注意してください。
まとめ
この記事では、エラーC2722が発生する原因と、グローバルで定義されたnewやdeleteにおいて、スコープ解決演算子::を誤って使用することが原因である点を解説しました。
また、コンパイラのエラーメッセージ解析や、C言語・C++での具体的な誤ったコード例、さらに正しい再定義方法について説明しました。
正しい実装方法を理解することで、エラーC2722の解消と安定したプログラム作成に繋がることが分かります。
