C言語 コンパイラエラー C2637 の原因と修正方法について解説

MicrosoftのC言語環境でエラー C2637 が発生する場合、データメンバーへのポインタに呼び出し規則を指定していることが原因です。

データメンバーのポインタに対しては呼び出し規則が適用できないため、呼び出し規則を削除するか、メンバー関数へのポインタとして宣言するようにしてください。

エラーの原因

呼び出し規則指定の誤用

C言語における呼び出し規則の基本

C言語では、関数の呼び出し規則を明示的に指定することが可能です。

たとえば、__stdcallや__cdeclなどの修飾子を使うことで、関数呼び出し時のスタック操作などの振る舞いを制御します。

これらは関数の実行環境に合わせた最適化や互換性のために使用されることが多いです。

しかし、呼び出し規則の指定は関数に対してのみ有効であり、データメンバーへのポインタでは適用できません。

データメンバーへのポインタでの制約

構造体や共用体のデータメンバーへのポインタを宣言する場合、呼び出し規則の指定はサポートされていません。

たとえば、以下のように修飾子を追加するとコンパイラエラーが発生します。

この制約は、呼び出し規則が関数の呼び出し動作に関連しているため、データメンバーには意味をなさないことから起こります。

ソースコード例に見るエラー発生状況

誤った記述パターンの検証

たとえば、次のようなコードはコンパイラエラー C2637 を引き起こします。

以下のサンプルコードは、データメンバーへのポインタに__stdcall修飾子を使用している例です。

#include <stdio.h>
// サンプル構造体の定義
struct Sample {
    int value;
};
// __stdcall修飾子が原因でエラーとなるデータメンバーへのポインタ宣言
int __stdcall Sample::*ptrValue;  // エラー発生
int main(void) {
    // main関数内では処理を行いません
    return 0;
}

// 上記コードをコンパイルすると、以下のようなエラーメッセージが表示される可能性があります。
// error C2637: 'ptrValue': データ メンバーへのポインターに呼び出し規則を設定できません

このエラーは、データメンバーへのポインタに呼び出し規則が指定されているために発生します。

コンパイラがエラーを検出する流れ

コンパイラはソースコードのパース時に、修飾子が適用される対象をチェックします。

データメンバーへのポインタに対して呼び出し規則が設定されると、関数専用の仕様と合致しないため、エラーとして報告されます。

このエラーは、該当するコード部分に対して適切な修正を加えることで解決可能です。

修正方法

呼び出し規則の削除による修正

正しいデータメンバーへのポインタ宣言

データメンバーへのポインタを宣言する際は、呼び出し規則の修飾子を削除することでエラーを回避できます。

たとえば、先ほどのエラーが発生していた宣言は、呼び出し規則を削除して以下のように修正します。

#include <stdio.h>
// サンプル構造体の定義
struct Sample {
    int value;
};
// 正しいデータメンバーへのポインタ宣言(呼び出し規則は削除)
int Sample::*ptrValueFixed;  // 修正後
int main(void) {
    // main関数内では処理を行いません
    return 0;
}

// 上記修正後のコードは、呼び出し規則が削除されたためコンパイルエラーが発生しなくなります。

修正前後の記述の比較

以下の表は、修正前後のコードの違いを示しています。

項目 | 修正前 | 修正後

— | — | —

データメンバーへのポインタ宣言 | int __stdcall Sample::*ptrValue; | int Sample::*ptrValueFixed;

この比較により、呼び出し規則を削除するだけでエラーが解消されることが理解できます。

メンバー関数へのポインタ宣言の利用

メンバー関数とデータメンバーの違い

メンバー関数へのポインタは、C言語の場合、関数ポインタとして普通の関数ポインタと同様に扱うことができ、呼び出し規則の指定も可能です。

一方、データメンバーへのポインタは、単なる値のアドレスを指すものであり、呼び出し規則は不要です。

メンバー関数へのポインタを正しく宣言することで、必要な場合に呼び出し規則を利用できます。

正しい宣言方法の記述例

以下のサンプルコードは、メンバー関数へのポインタを正しく宣言し、呼び出し規則を適用している例です。

#include <stdio.h>
// サンプル構造体の定義
struct Sample {
    int value;
    // メンバー関数の宣言
    int __stdcall compute(void);
};
// メンバー関数の定義
int __stdcall Sample_compute(struct Sample* thisPtr) {
    // コメント: メンバー変数valueにアクセスし、結果を返す
    return thisPtr->value * 2;
}
// 関数ポインタの宣言。メンバー関数へのポインタと同等の使い方を模倣
int (__stdcall *ptrCompute)(struct Sample*);
// main関数
int main(void) {
    // サンプル構造体のインスタンス生成
    struct Sample sample = { 10 };
    // 正しいメンバー関数ポインタの設定
    ptrCompute = Sample_compute;
    // ポインタを使って関数を呼び出し、結果を表示
    int result = ptrCompute(&sample);
    printf("Result: %d\n", result);
    return 0;
}

Result: 20

この例では、メンバー関数と同様の機能を持つSample_computeを定義し、関数ポインタptrComputeに正しく代入しています。

そのため、呼び出し規則を利用することによるエラーが発生せず、適切に処理が実行されます。

まとめ

この記事では、データメンバーへのポインタに呼び出し規則を指定すると発生するコンパイラエラー C2637 の原因とその対処法が理解できます。

呼び出し規則は関数専用のため、データメンバーには不要であり、修正として呼び出し規則を削除する方法を紹介しました。

また、メンバー関数へのポインタ宣言の場合は、呼び出し規則の指定が可能である点についても説明しています。