C言語のコンパイラエラー C2573 について解説
この記事は、C言語の開発環境で出ることがあるコンパイラエラー C2573 について簡潔に説明します。
Visual Studio などで発生するこのエラーは、クラスに非置換 delete 演算子が定義されていない場合に表示されます。
原因と対処法を簡単に紹介し、実際の開発での問題解決に役立つ情報を提供します。
エラーメッセージの詳細
エラーメッセージの原文と意味の解説
コンパイラエラー C2573 は次のような原文となります。
“class” : この型のオブジェクトへのポインターを削除することはできません。
クラスに “operator delete” の非置換オーバーロードがありません。
このエラーメッセージは、クラスオブジェクトの削除時に対応する operator delete関数が定義されていないときに発生します。
たとえば、動的に確保したメモリを削除する際に、クラスに独自の operator delete が実装されていない場合、警告やエラーが表示されることがあります。
エラーが発生する状況
エラーは以下のような状況で発生します。
- クラス内でカスタムの operator delete関数が定義されていない場合。
- クラスのポインタを削除する際に、コンパイラが標準の delete演算子では対応しない場合。
- 特定のメモリ管理方式(例:メモリプールや固有のアロケーションロジック)を採用しており、標準の deleteが利用できない場合。
このエラーが出たときは、クラス定義およびメモリの割り当てと解放の方法を見直す必要があります。
原因解析
クラス定義とoperator deleteの関係
C++ のクラスでは、動的に割り当てたオブジェクトの削除時に自動的に呼び出される operator delete を実装することが可能です。
クラスごとに独自の削除方法を定義する場合は、operator delete を明示的に実装する必要があります。
実装しない場合、標準の削除処理に依存するため、特別なメモリアロケーションを行っていると問題が発生することがあります。
メモリ管理に関する基本ルール
メモリ管理の基本ルールとして、次の点に注意する必要があります。
- 動的に割り当てたメモリは、必ず対応する解放処理が必要です。
- 削除時には、オブジェクトの型に適した解放関数が呼び出されるように設計する必要があります。
- カスタマイズされたメモリ管理を行う場合は、割り当てと解放が対応していることを確認する必要があります。
特にクラスにおいては、デストラクタやカスタムの operator delete も設計の一環として考える必要があります。
コード例による事例検証
不適切な実装例
以下のサンプルコードは、クラスにカスタムの operator delete が実装されておらず、メモリ解放時に問題が発生する例です。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
// サンプル構造体(C言語風のクラス)
typedef struct {
    int id;
    char name[50];
} MyStruct;
// メモリ割り当て関数
MyStruct* allocateStruct() {
    MyStruct* pStruct = (MyStruct*)malloc(sizeof(MyStruct));
    if (pStruct != NULL) {
        pStruct->id = 1;
        snprintf(pStruct->name, sizeof(pStruct->name), "サンプル");
    }
    return pStruct;
}
int main(void) {
    // メモリ確保
    MyStruct* pSample = allocateStruct();
    if (pSample == NULL) {
        printf("メモリ確保に失敗しました\n");
        return 1;
    }
    // 確保したメモリの使用例
    printf("ID: %d, Name: %s\n", pSample->id, pSample->name);
    // 削除時にカスタム delete 関数がないため、エラー発生の疑いがある例
    free(pSample); // C++ は delete を使うが、C言語では free を使用
    return 0;
}ID: 1, Name: サンプル適切な実装例
C++ の場合、クラスに対してカスタム operator delete を定義して、メモリ解放時に適切な処理を行えるようにする例です。
#include <iostream>
#include <cstdlib>
#include <cstdio>
class MyClass {
public:
    int id;
    char name[50];
    // コンストラクタ
    MyClass() {
        id = 1;
        std::snprintf(name, sizeof(name), "サンプル");
    }
    // カスタム delete オーバーロード
    static void operator delete(void* ptr) {
        // 独自の解放処理(ここでは単に free を呼んでいる)
        std::free(ptr);
    }
    // new オペレーターも対応として実装できる
    static void* operator new(size_t size) {
        void* ptr = std::malloc(size);
        return ptr;
    }
};
int main() {
    // 動的にオブジェクトを作成
    MyClass* pObj = new MyClass();
    std::cout << "ID: " << pObj->id << ", Name: " << pObj->name << std::endl;
    // 削除時にカスタム operator delete が呼び出される
    delete pObj;
    return 0;
}ID: 1, Name: サンプル対処方法と修正手順
operator deleteの実装方法
クラスでカスタムメモリ管理を行う場合は、operator delete を明示的に実装する必要があります。
具体的には、メモリ解放処理を正しく行えるようにするため、メモリ割当関数と合わせて実装する必要があります。
また、operator new とペアで利用することが求められる場合が多いため、両方の実装を見直すとよいです。
コード修正手順の詳細
修正前のコード例
カスタム operator delete の実装が省略された状態で、C++ のオブジェクト削除時に問題が発生するコード例です。
#include <iostream>
#include <cstdlib>
#include <cstdio>
class MyClass {
public:
    int id;
    char name[50];
    MyClass() {
        id = 1;
        std::snprintf(name, sizeof(name), "サンプル");
    }
    // operator delete が定義されていない
    static void* operator new(size_t size) {
        void* ptr = std::malloc(size);
        return ptr;
    }
};
int main() {
    MyClass* pObj = new MyClass();
    std::cout << "ID: " << pObj->id << ", Name: " << pObj->name << std::endl;
    // delete pObj; を使用するとエラーとなる可能性がある
    std::free(pObj); // 暫定的な対処方法
    return 0;
}ID: 1, Name: サンプル修正後のコード例
カスタムの operator delete を追加したことで、削除処理が正しく呼び出されるコード例です。
#include <iostream>
#include <cstdlib>
#include <cstdio>
class MyClass {
public:
    int id;
    char name[50];
    MyClass() {
        id = 1;
        std::snprintf(name, sizeof(name), "サンプル");
    }
    // カスタム operator new の実装
    static void* operator new(size_t size) {
        void* ptr = std::malloc(size);
        return ptr;
    }
    // 修正済み operator delete の実装
    static void operator delete(void* ptr) {
        std::free(ptr);
    }
};
int main() {
    MyClass* pObj = new MyClass();
    std::cout << "ID: " << pObj->id << ", Name: " << pObj->name << std::endl;
    delete pObj; // カスタム operator delete が呼び出される
    return 0;
}ID: 1, Name: サンプル注意点と確認事項
- カスタマイズした operator newとoperator deleteは必ず対で実装する必要があるため、片方だけの実装にならないように確認する。
- 独自のアロケーションロジックを利用する場合、異なるメモリ管理手法が混在しないように注意する。
- コード修正後は、必ず複数のテストケースを実施し、メモリリークが発生しないか確認する。
- コンパイラのバージョンや設定によって挙動が異なる場合があるため、使用している開発環境での動作確認を行うこと。
開発環境での設定確認
コンパイラ設定とバージョンの確認
開発環境において、コンパイラのバージョンや設定がエラー発生の原因となるケースがあるため、以下の点を確認してください。
- 利用しているコンパイラバージョンが最新の安定版であるか。
- メモリ管理に関するコンパイラ警告やエラーチェックのオプション(例:/W4や/Wall)が有効になっているか。
- プロジェクトの設定で、C++ による標準ライブラリの利用やカスタムメモリアロケーションのオプションが正しく設定されているか。
表に項目と確認方法をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 確認方法 | 
|---|---|
| コンパイラバージョン | コマンドラインやIDEのバージョン情報を参照 | 
| 警告・エラーチェックオプション | プロジェクト設定またはMakefileの設定を確認 | 
| 標準ライブラリ設定 | プロジェクトのプロパティから設定内容を確認 | 
Visual Studioでの対応事例
Visual Studio を利用している場合は、以下の対応方法が参考になります。
- プロジェクトプロパティから「C/C++」→「全般」で警告レベルを上げ、適切なエラーチェックが有効になっているか確認する。
- 「リンカ」→「シンボル」で、カスタムのメモリアロケーションに影響する設定があれば見直す。
- Visual Studio の診断ツールを使用して、メモリリークや不適切な解放をチェックする。
次のサンプルコードは、Visual Studio での基本的な動作確認を行うための例です。
#include <iostream>
#include <cstdlib>
#include <cstdio>
class MyClass {
public:
    int id;
    char name[50];
    MyClass() {
        id = 1;
        std::snprintf(name, sizeof(name), "サンプル");
    }
    static void* operator new(size_t size) {
        void* ptr = std::malloc(size);
        return ptr;
    }
    static void operator delete(void* ptr) {
        std::free(ptr);
    }
};
int main() {
    MyClass* pObj = new MyClass();
    std::cout << "ID: " << pObj->id << ", Name: " << pObj->name << std::endl;
    delete pObj; // Visual Studio 上でカスタム delete の動作を確認
    return 0;
}ID: 1, Name: サンプルまとめ
この記事では、コンパイラエラー C2573 の発生原因や意味、エラーが出る状況について解説しています。
クラス定義とカスタム operator delete の関係、基本的なメモリ管理のルール、そして実例を通して不適切な実装と適切な実装を比較しました。
さらに、具体的な修正手順や開発環境での設定確認方法も紹介し、エラー対処のために必要な情報をまとめています。
