C言語のコンパイラエラー C2316 について解説
Visual Studioなどで発生する[C言語]のエラー C2316は、コピーコンストラクタがアクセス不可または削除されているクラスを値渡しでキャッチしようとした際に発生します。
例外処理時にこの問題が生じた場合は、例外を参照で捕捉することで解決できるため、コードの記述方法を見直してみるとよいです。
エラー概要
C2316エラーの定義
コンパイラエラー C2316 は、クラスのコピーコンストラクタがアクセスできない(または削除されている)場合に、例外を値渡しでキャッチしようとしたときに発生します。
特に、例外クラスがコピー禁止となっているときに、値渡しでのキャッチはコピーコンストラクタの呼び出しを伴うため、エラーとなります。
発生条件と背景
このエラーは、例外オブジェクトが値渡しでキャッチされる場面で発生します。
Visual Studio 2015 以降の仕様変更により、MFC の例外クラスなどコピーコンストラクタが明示的に非公開または削除されているクラスに対して、値渡しキャッチが行われた場合、コンパイラは正しくエラーを報告するようになりました。
また、例外処理の方法に関して従来の実装との齟齬を防止するために、値渡しではなく参照渡しでのキャッチが推奨されています。
発生原因の詳細解析
コピーコンストラクタのアクセス制限
クラス定義において、コピーコンストラクタがプライベートに設定されている、または削除されている場合、コンパイラはそのコピー操作を禁止します。
例外オブジェクトを値渡しでキャッチする場合、必ずコピーコンストラクタが呼び出されるため、コピーコンストラクタがアクセスできない状態だと、エラー C2316 が発生します。
そのため、例外クラスにおいてはコピーコンストラクタのアクセス制限が非常に重要な要素になります。
値渡し時の例外捕捉の問題
例外を値渡しで捕捉すると、例外オブジェクトがコピーされます。
しかし、コピーコンストラクタが非公開または削除されている場合、コピー処理が行われずエラーが発生します。
これに対して、参照渡しでキャッチする場合はコピーが必要ないため、コピーコンストラクタのアクセス制限による問題が解消されます。
簡単にいうと、値渡しで例外を捕捉すると、以下の局面で問題が発生します。
- コピーコンストラクタにアクセスできないため、例外オブジェクトのコピーができない。
- 結果として、エラー C2316 が発生し、例外処理が正常に行われなくなる。
再現例と事例紹介
コード例の紹介
次に、エラー C2316 を発生させるサンプルコードを紹介します。
以下のコードは、コピーコンストラクタが非公開となっている構造体 B
を使用し、値渡しで例外を捕捉しようとすることでエラーを再現する例です。
#include <stdio.h>
/* 構造体Bの定義 */
struct B {
public:
B() {
// コンストラクタ:初期化処理
}
private:
// コピーコンストラクタ(アクセス制限)
B(const B& other) {
// コピー処理(実際には使用されない)
}
};
/* 例外を受け取る関数 */
void f(const B& exceptionObj) {
// 例外処理のシミュレーション
}
int main() {
try {
B aB; // 例外オブジェクトの生成
f(aB); // 例外オブジェクトを渡す処理
}
catch (B b) { // 値渡しによるキャッチ(エラー C2316 が発生)
printf("Caught an exception!\n");
}
return 0;
}
(コンパイル時にエラー C2316 が発生)
サンプルコードの各部解説
struct B
の定義では、コピーコンストラクタがプライベートに設定されています。これは、クラス内でのコピー操作を禁止するための措置です。- 関数
f
では、例外オブジェクトをconst B&
として受け取るため、値渡しではなく参照渡しを行っています。しかし、main
関数内のcatch (B b)
の記述は値渡しによる例外捕捉となり、コピーコンストラクタが呼び出されます。 catch (B b)
の部分で、コピーコンストラクタがアクセス不可であるため、エラー C2316 が発生します。
Visual Studioの仕様変更との関連
Visual Studio 2015 以降、MFC 例外クラスなど例外処理の体制を強化するために、値渡しでの例外処理が制限される仕様変更が行われました。
以前は実行時に未捕捉の例外として扱われるケースもありましたが、現在ではコンパイル時に正確にエラーを検出できるようになっています。
これにより、コピーコンストラクタがアクセス制限されているクラスでの値渡しキャッチが明確にエラーとして報告されるようになりました。
エラー回避と解決方法
参照による例外捕捉の方法
エラー C2316 を回避するためには、例外を参照渡しでキャッチする方法が推奨されます。
参照渡しでキャッチする場合、例外オブジェクトのコピーが行われないため、コピーコンストラクタがアクセスできないクラスでも問題なく例外処理が実装可能です。
具体的には、catch (const B& b)
のように記述することで、コピーせずに例外オブジェクトを利用できます。
以下は、参照渡しで例外を捕捉するサンプルコードです。
#include <stdio.h>
/* 構造体Bの定義 */
struct B {
public:
B() {
// コンストラクタ:初期化処理
}
private:
// コピーコンストラクタ(アクセス制限)
B(const B& other) {
// コピー処理(実際には使用されない)
}
};
/* 例外を受け取る関数 */
void f(const B& exceptionObj) {
// 例外処理のシミュレーション
}
int main() {
try {
B aB; // 例外オブジェクトの生成
f(aB); // 例外オブジェクトを渡す処理
}
catch (const B& b) { // 参照渡しによるキャッチ(正しく動作)
printf("Caught an exception by reference!\n");
}
return 0;
}
Caught an exception by reference!
MFC例外処理の適切な実装
TRY/CATCHマクロの利用方法
MFC 例外処理においては、例外を値渡しでキャッチすると正しく動作しない場合があります。
そのため、MFC の TRY/CATCH マクロを使って例外を参照渡しで捕捉することが推奨されています。
MFC のマクロは内部で参照渡しを行うように設計されており、コピーコンストラクタへの依存を回避することができます。
以下は、MFC マクロを使用して例外をキャッチする際のサンプルコードです。
#include <afx.h>
#include <stdio.h>
/* カスタム例外クラスの定義(MFC例外を模倣) */
class MyException : public CException {
public:
MyException() {
// コンストラクタ処理
}
protected:
// コピーコンストラクタ禁止
MyException(const MyException& other) {}
public:
virtual void ReportError() {
// エラー報告のための処理
printf("Reported error from MyException.\n");
}
};
int main() {
// MFC例外処理用のTRY/CATCHマクロを使用
TRY {
// 例外の発生をシミュレーション
THROW(new MyException());
}
CATCH (CException, e) {
// ここで例外を正しくキャッチします(参照渡しで処理)
CException* pException = (CException*)e;
pException->ReportError(); // エラー報告を実施
}
END_CATCH
return 0;
}
Reported error from MyException.
このように、MFC の TRY/CATCH マクロは内部で例外オブジェクトを参照渡しで処理するため、コピーコンストラクタのアクセス制限による問題を回避し、正確な例外処理を実現できます。
まとめ
この記事では、コンパイラエラー C2316 の定義と発生条件、コピーコンストラクタのアクセス制限や値渡し時の例外捕捉の問題について解説しています。
さらに、再現しやすいコード例を示し、エラーを避けるための参照渡しによる例外捕捉方法や、MFC例外処理でのTRY/CATCHマクロ利用の実装方法を説明しました。
読者は、これらの知識を活用しエラーを回避する方法を理解できる内容となっています。