致命的エラー

C言語の致命的エラー C1307 について解説:原因と対策

C言語の開発で遭遇するエラー C1307について説明します。

プロファイルデータの取得後、再コンパイルにより呼び出しグラフなどに変更があった場合、リンク時にエラーが検出されることがあります。

対策としては、/LTCG:PGINSTRUMENTの実行とテストの再実施、または/LTCG:PGUPDATEを利用する方法が推奨されます。

原因解析

プロファイルデータの変更

収集タイミングと再コンパイルの影響

ビルド時に収集されたプロファイルデータは、プログラムの実行パスや呼び出し構造に基づいて作成されます。

しかし、プロファイルデータ収集後にソースコードが一部改変され、再コンパイルが実施されると、収集されたデータと最新のコンパイル結果との間に食い違いが発生する可能性があります。

たとえば、関数の追加や削除、呼び出し順序の変更などによって、コンパイラが元のデータと新たな実装内容との不一致を検出し、致命的なエラー C1307 を引き起こします。

リンカが検出する不整合

リンカは、各モジュールの呼び出しグラフやプロファイル情報を統合して最適化を行う役割を担います。

再コンパイルされたモジュールが既存のプロファイルデータと異なる呼び出しグラフを持つ場合、リンカがこの不整合を正確に検出します。

結果として、古いプロファイルデータに基づく最適化処理が正しく行えず、エラー C1307 が発生することになります。

呼び出しグラフの変更

変更内容がエラーに与える影響

収集されたプロファイルデータは、各関数の呼び出し関係 CallGraphold として保存されます。

一方、再コンパイル後のモジュールでは新たな呼び出し関係 CallGraphnew が形成されます。

ここで、ΔCallGraph=CallGraphnewCallGraphold

のような変化が発生すると、リンカはプロファイルデータと現行の実装内容との整合性を保てなくなります。

このため、呼び出しグラフの変更が直接的にエラー発生の原因となる場合があります。

対策と解決方法

/LTCG:PGINSTRUMENTの実行

実行手順とポイント

まず、コンパイル時にプロファイルデータを収集するために、コンパイラオプションとして /LTCG:PGINSTRUMENT を指定します。

実行手順は以下のような流れとなります。

  1. ソースコードをコンパイルする際に、/LTCG:PGINSTRUMENT を有効にしてプロファイルデータを収集する。
  2. 収集したプロファイルデータをもとに、すべての再テストを実行してプロファイルデータの正確性を確認する。
  3. テスト実施後、最適化を行うために /LTCG:PGOPTIMIZE を利用して最終的な実行ファイルを作成する。

以下のサンプルコードは、/LTCG:PGINSTRUMENT を利用した場合の簡単な実行例を示しています。

#include <stdio.h>
// プロファイルデータ収集のためのビルドオプション例:
// コンパイル時に /LTCG:PGINSTRUMENT を指定してください。
int main(void)
{
    // プロファイルデータ収集時のサンプル実行コード
    printf("PGINSTRUMENT 実行サンプル\n");
    return 0;
}
PGINSTRUMENT 実行サンプル

この手順に沿って正しくプロファイルデータを収集することで、後続の最適化処理における不整合を回避できます。

テストの再実施による確認

プロファイルデータ収集後は、ユニットテストや統合テストなどの再テストを実施して、収集データが最新の実装内容を正確に反映しているか確認することが重要です。

テストを行うことで、モジュール間の整合性が保たれているかどうかをチェックできます。

テスト結果に問題がなければ、その後の最適化処理でエラーが発生するリスクを低減できます。

/LTCG:PGUPDATEの利用

/LTCG:PGOPTIMIZEとの違い

通常、最適化には /LTCG:PGOPTIMIZE を用いますが、全モジュールの再テストが困難な場合は /LTCG:PGUPDATE が有効となります。

/LTCG:PGOPTIMIZE は既存のプロファイルデータと再コンパイル後の情報が完全に一致していることを前提としています。

一方で、/LTCG:PGUPDATE は、プロファイルデータ更新を行うため、少しの不整合があっても最適化された実行ファイルを作成できるという特徴があります。

オプション設定の詳細

各LTCGオプションの役割

PGINSTRUMENT、PGOPTIMIZE、PGUPDATEの比較

以下の表は、各オプションの役割についてまとめたものです。

オプション役割
PGINSTRUMENT実行時のプロファイルデータを収集する
PGOPTIMIZE収集済みのプロファイルデータを利用して最適化する
PGUPDATEテストの再実施が難しい場合にプロファイルデータを更新しながら最適化する

この比較により、プロファイルデータをどの段階で利用するか、また状況に応じた適切なオプション選択の重要性が理解いただけるかと思います。

設定変更時の注意点

各オプションを変更する際は、以下の点に注意する必要があります。

  • 全モジュールが同じプロファイルデータに基づいて再コンパイルされているか確認する。
  • オプション変更後は必ずテストを実施し、プロファイルデータと呼び出しグラフの整合性を確認する。
  • 複数の最適化オプションを併用する場合、その組み合わせが最終的な実行ファイルの動作に影響を与えないか事前に検証する。

これらの注意点を踏まえてオプション設定を調整することで、エラー C1307 の発生リスクを低減しつつ、最適なパフォーマンスを引き出すことができます。

まとめ

この記事では、致命的エラー C1307 の原因と対策について解説しています。

まず、プロファイルデータの収集タイミングや再コンパイルによる不整合、そして変更された呼び出しグラフがエラーの発生要因となる点を説明しました。

その上で、/LTCG:PGINSTRUMENT の実行およびテストの再実施、さらに再テストが困難な場合の/LTCG:PGUPDATE利用について具体的な手順とポイントを示しました。

最後に、各LTCGオプションの役割や設定変更時の注意点を詳述し、最適な対応策を検討できる内容となっています。

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