C言語のリンカーエラー LNK1223 について解説
c言語でコンパイル時に表示されるリンカーエラー「LNK1223」は、ファイルが無効または破損している場合に発生することがあります。
特に、コンパイラが出力した.pdata
セクションのエントリが正しく並べ替えられていない場合や、関数本体が空の場合に起こることが多いです。
対応策として、/GLオプションを無効にして再コンパイルする方法を試してください。
エラーの原因
.pdataセクションの不正な出力
コンパイラは、アプリケーションの各関数や変数に関する情報をセクションとして出力します。
その中でも.pdataセクションは、主に例外ハンドリングやリトルエンディアン環境での補助的な情報を保持します。
RISCプラットフォームでは、この.pdataセクションの並べ替えが適切に行われない場合、リンカがファイルを「無効」または「壊れている」と判断し、エラー LNK1223 を発生させる原因となります。
コンパイラの出力処理とセクション並べ替えの問題
コンパイラは通常、各種セクションに対して独自の出力処理を行います。
特に、最適化オプションを使った場合に、セクション内のエントリの並べ替えなどが行われます。
RISC向けのコンパイラでは、.pdataセクションのエントリが正しい順序に並んでいないと、後工程のリンカがファイル全体を正しく解釈できなくなり、エラーが発生します。
この問題は、/GLオプション(プログラム全体の最適化)使用時に顕在化しやすいことが確認されています。
関数本体が空の場合の影響
関数本体が空の場合も、リンカエラー LNK1223 を引き起こす特定のケースとして報告されています。
空の関数定義は、コンパイラが最適化の際に不要なデータとして扱い、.pdataセクションへの寄与が不正な形で出力される場合があります。
この現象は特にデバッグ情報や例外処理の挙動に影響し、結果的にリンカがデータの不整合を検出してしまうという流れです。
発生条件と具体的なケース
以下のようなケースでは、関数本体が空なことが原因となって LNK1223 エラーが発生する場合があります。
- 関数がプロトタイプのみ定義され、実装が空の場合
- 条件付きコンパイルにより、関数本体が最終的に空になった場合
サンプルコードの例を示します。
以下のコードは、デバッグビルド時に空の関数が含まれていることで、最適化関連の問題によりエラーが発生するシナリオをイメージしたものです。
#include <stdio.h>
// この関数は空ですが最適化により.pdataセクションで問題が起こる可能性があります
void emptyFunction(void) {
// 関数本体が空です
}
int main(void) {
printf("空の関数を呼び出します。\n");
emptyFunction();
return 0;
}
空の関数を呼び出します。
コンパイルオプションの確認
/GLオプションの役割
/GLオプションは、「プログラム全体の最適化(Whole Program Optimization)」を有効にするためのフラグです。
このオプションを有効にすると、コンパイラは全体のコード最適化を行い、結果として生成される中間コードのサイズ削減やパフォーマンスの向上を狙います。
しかし、その最適化過程で、.pdataセクションの並べ替えなどが発生し、不正な出力が引き金となってリンカエラー LNK1223 が発生するリスクがあります。
有効時の動作特性
/GLオプション有効の際には、以下のような動作特性が見られます。
- コンパイラは、ファイル全体の最適化処理を適用
- 不要なコードや冗長なデータが排除される
- .pdataセクションの内容が再配置され、場合によっては並べ替えが発生する
この結果、特にRISCプラットフォームにおいては、最適化の副産物として.pdataセクション内のエントリが不正な順序で出力され、リンカ側で整合性チェックに引っかかる可能性があります。
無効時の対処方法
コンパイル時に/GLオプションを無効にすることで、この問題は回避できる場合があります。
開発環境で問題が発生した場合、以下の手順で/GLオプションをオフにしてみてください。
- プロジェクトのプロパティから「C/C++」→「最適化」設定に移動
- 「全体最適化(/GL)」の設定を「無効」に変更
- 再コンパイルを実施し、リンカエラーが解消されたか確認
コンパイラの最適化オプションを切り替えることで、.pdataセクションの再配置に起因するエラーを避け、正常なリンクが実現できる場合があります。
プラットフォーム別の注意点
RISCプラットフォームにおける事例
RISCアーキテクチャ向けのプラットフォームでは、命令セットやメモリアクセス方式の違いから、コード生成の最終段階で特殊なデータ配置処理が行われます。
これに伴い、.pdataセクションへの寄与やその出力順序に微妙な差が生じ、リンカエラー LNK1223 の発生に影響を与えることが確認されています。
環境固有の設定と影響
RISCプラットフォームで特に注意すべき点は以下の通りです。
- 環境に依存したコンパイラのバージョンやパッチ適用状況
- 特定のハードウェア向けの設定やオプションが有効になっている場合、.pdataセクションの処理結果が変わる
- /GLオプションの利用が、環境毎に異なる副作用を招く可能性がある
これらの要因により、同じソースコードであっても、プラットフォームによってはリンカエラーが発生する状況と発生しない状況があるため、注意深い設定確認が求められます。
サンプルコードによる対処例(/GLオプションをオフにしてコンパイル)を示します。
以下は、Windows環境でVisual Studioのコマンドプロンプトを使用した場合の例です。
#include <stdio.h>
// RISCプラットフォームで影響が出る可能性のある関数
void sampleFunction(void) {
// 適当な処理を記述(データが正しく生成されるように)
printf("RISCプラットフォーム向けのサンプル関数です。\n");
}
int main(void) {
sampleFunction();
return 0;
}
サンプルコードのコンパイル手順:
cl /c /O2 /GL- sample.c
link sample.obj
RISCプラットフォーム向けのサンプル関数です。
まとめ
本記事は、リンカー エラー LNK1223 の原因として、.pdataセクションの不正な出力や空の関数本体が影響するケースを詳しく解説しています。
また、/GLオプションの有効・無効による動作特性や、特にRISCプラットフォームにおける環境固有の問題点を事例と共に紹介。
これにより、問題発生時の原因把握と適切な対処方法が理解できます。