C言語のLNK1188エラーについて解説 – 原因と対策
C言語の開発中にリンカーエラーLNK1188が発生する場合、リンク処理時に長さ0のセクションが原因となっていることがあります。
例えば、OMF形式のオブジェクトがCOFF形式に変換される際や、MASM GROUPディレクティブの設定ミスにより、正しくセクションが認識されないケースが考えられます。
リンカ設定やソースコードのセクション管理を見直すと良いでしょう。
エラー発生の仕組み
マイクロソフトリンカーの動作
マイクロソフトリンカーは、複数のオブジェクトファイルを結合して実行可能ファイルやライブラリを生成するツールです。
ソースコードからコンパイルされた各オブジェクトは、セクションやシンボル情報を持っており、リンカーはこれらの情報をもとに、セクションのアドレス割り当てやシンボルの解決、再配置処理を行います。
リンカーの処理過程では、各セクションのサイズや配置、依存関係が正しく管理されなければなりません。
OMF形式からCOFF形式への変換
歴史的な理由から、初期のオブジェクトファイルはOMF(Object Module Format)形式でした。
しかし、現代の開発環境ではCOFF(Common Object File Format)形式が主流となっており、旧形式のオブジェクトファイルを自動的に変換する仕組みが組み込まれています。
この自動変換プロセスでは、OMFの構造上の特殊なディレクティブやセクション情報が、COFF形式に適合するように再構築されます。
MASM GROUPディレクティブの影響
MASMのGROUPディレクティブは、関連する複数のセクションを一つにまとめるために用いられます。
OMF形式ではこのディレクティブにより、長さが0のセクションと長さが0以外のセクションを混在させることが可能でした。
しかし、COFF形式は長さ0のセクションとの組み合わせおよびGROUPディレクティブをサポートしていないため、変換時に不整合が発生することがあります。
この不整合が、LNK1188エラーの根本原因となる場合があります。
LNK1188エラーの発生要因
セクション管理の不整合
プロジェクト内におけるセクションの定義や管理が不適切な場合、リンカーはセクション情報の整合性を確認できず、エラーを発生させます。
特に、セクションのサイズが0の場合、そのセクションが有効なメモリ領域を持たないため、再配置処理に失敗する可能性があります。
長さ0セクションの検出と影響
リンカーは、各セクションのサイズを検証し、長さ0のセクションが存在すると判断した場合、修正ターゲット(symbol)の再配置先が無効となるケースがあります。
これにより、プログラム全体のメモリ配置が混乱し、最終的にLNK1188エラーが発生します。
つまり、セクションサイズを適切に管理することが重要です。
リンカ設定の不備
プロジェクトの構成やリンカオプションの設定が適切でない場合も、LNK1188エラーの原因となります。
特に、グループ化されたセクションや複数のオブジェクトファイルの結合設定に問題があると、リンカーは正しいセクション配置ができずにエラーを報告します。
プロジェクト構成の確認ポイント
- 各オブジェクトファイルのセクション定義が正しいか
- リンカのオプション設定(例:/FIXED、/NOFIXED など)の整合性
- MASMや他のアセンブラが生成する特殊なディレクティブの扱い
これらのポイントを確認することで、セクション管理の不整合を未然に防ぎ、エラー回避につなげることができます。
エラー対策と修正方法
リンカオプションの見直し
リンカーのオプション設定を見直すことで、エラー回避が可能となります。
不要なグループ化や、長さ0セクションを生成しないようにするためのフラグ設定の確認が必要です。
正しいオプション設定は、リンカーがOMF形式からCOFF形式に変換する際の不整合を防止します。
オプション調整によるエラー回避
プロジェクト設定画面やコマンドラインにて、リンカに渡されるパラメータを慎重に確認してください。
特に、/NOEXXXや/FIXEDに関連するオプションが、意図せずにセクション管理の問題を引き起こしていないかをチェックすることが大切です。
以下は、リンカオプションの調整例を示す簡単なサンプルコードです。
#include <stdio.h>
// このサンプルは、リンカオプション調整の影響を確認するための簡易コードです。
int main(void) {
// 例: 特殊なリンカオプションを要求する場合、プロジェクト設定で設定する必要があります。
printf("リンカオプション調整のサンプルコードです。\n");
return 0;
}
リンカオプション調整のサンプルコードです。
コードセクションの修正
コード上でのセクション定義も、エラー発生の要因になり得ます。
特に、ディレクティブにより誤ったセクションが定義されると、リンカーは正しく再配置できずにエラーとなります。
ここでは、セクション定義の修正手順および再配置先の検証と調整方法について説明します。
セクション定義の修正手順
ソースコード内で明示的にセクションを指定する場合、正しいサイズや属性を設定する必要があります。
Visual Studio環境では、#pragmaディレクティブを使い、セクションの開始位置や属性を明示する方法があります。
下記は、セクション定義を修正した例です。
#include <stdio.h>
// 特定のセクションにコードを配置するための指示を出します。
#pragma code_seg(push, "MY_CODE")
void sampleFunction(void) {
printf("特定のセクションに配置された関数です。\n");
}
#pragma code_seg(pop)
int main(void) {
// 関数を呼び出し、セクションの配置内容を確認します。
sampleFunction();
return 0;
}
特定のセクションに配置された関数です。
再配置先の検証と調整
セクション定義を修正した後は、リンカーが正しい再配置先を割り当てられているかを検証する必要があります。
実際のビルドログやマップファイルを参照し、各セクションのサイズと配置アドレスが意図通りになっているかを確認してください。
変更後の検証手順の一例は以下の通りです。
- マップファイル(.map)の生成オプションを有効にする。
- 生成されたマップファイル内で、対象セクションのサイズとアドレスを確認する。
- 予期せぬ長さ0セクションが含まれていないか、または再配置先が正しいかを検証する。
このような検証手順を用いることで、誤った設定によるエラー発生リスクを低減し、安定したビルド環境の構築が可能となります。
まとめ
本記事では、マイクロソフトリンカーがオブジェクトファイルから実行可能ファイルを生成するプロセスと、OMF形式からCOFF形式への変換時に発生する問題について解説しました。
特に、MASM GROUPディレクティブの影響や、長さ0セクション、リンカオプションの不備がLNK1188エラーの主因である点、そしてエラー回避のための対策手法を具体的なコード例とともに説明しています。