【Python】マルチスレッドでスレッド間で変数を共有する方法を解説

この記事では、Pythonのマルチスレッドプログラミングにおいて、スレッド間で変数を共有する方法を解説します。

グローバル変数、ロック、スレッドセーフなデータ構造の使用方法や注意点について説明します。

初心者の方でもわかりやすく、実際のサンプルコードとともに解説しています。

目次から探す

スレッド間で変数を共有する必要性

スレッド間で変数を共有する必要性について考えてみましょう。

マルチスレッドプログラミングでは、複数のスレッドが同時に実行されるため、それぞれのスレッドが独立して動作することが一般的です。

しかし、場合によっては複数のスレッドが同じ変数にアクセスする必要が生じることがあります。

例えば、複数のスレッドが同じデータを処理する場合や、スレッド間で情報を共有する必要がある場合などがあります。

このような場合、スレッド間で変数を共有する方法が必要になります。

グローバル変数を使用する方法

Pythonでは、グローバル変数を使用することで、スレッド間で変数を共有することができます。

グローバル変数は、プログラムのどの場所からでもアクセスできる変数です。

グローバル変数の定義と使用方法

グローバル変数を定義するには、変数を関数の外で定義します。

これにより、その変数はグローバルスコープ(グローバルな範囲)で利用できるようになります。

以下は、グローバル変数を定義し、それを関数内で使用する例です。

# グローバル変数の定義
global_var = 10
def my_function():
    # グローバル変数の使用
    print("グローバル変数の値:", global_var)
# 関数の呼び出し
my_function()

上記のコードでは、global_varというグローバル変数を定義し、my_functionという関数内でその変数を使用しています。

関数内でグローバル変数を使用する場合、globalキーワードを使用する必要はありません。

グローバル変数の注意点

グローバル変数を使用する際には、いくつかの注意点があります。

スレッドセーフではない

グローバル変数は複数のスレッドからアクセスされる可能性があるため、スレッドセーフではありません。

複数のスレッドが同時にグローバル変数にアクセスし、値を変更すると、予期しない結果が生じる可能性があります。

データの競合

複数のスレッドが同時にグローバル変数にアクセスし、値を変更すると、データの競合(レースコンディション)が発生する可能性があります。

これは、予期しない結果やバグの原因となることがあります。

プログラムの複雑性

グローバル変数を多用すると、プログラムの複雑性が増し、デバッグや保守が困難になる可能性があります。

グローバル変数の使用は必要最小限に留めることが望ましいです。

以上が、グローバル変数を使用する方法とその注意点です。

ロックを使用する方法

マルチスレッド環境では、複数のスレッドが同時に変数にアクセスする可能性があります。

このような場合、スレッド間で変数の同期を行う必要があります。

ロックは、スレッドが変数にアクセスする際に他のスレッドからの干渉を防ぐために使用されます。

ロックの概要と基本的な使い方

ロックは、複数のスレッドが同時に変数にアクセスするのを防ぐために使用される同期機構です。

Pythonでは、threadingモジュールを使用してロックを実装することができます。

以下は、ロックを使用して変数の同期を行う基本的な例です。

import threading
# 共有変数
shared_variable = 0
# ロックの作成
lock = threading.Lock()
# スレッドで実行する関数
def thread_function():
    global shared_variable
    for _ in range(100000):
        # ロックの獲得
        lock.acquire()
        try:
            # 共有変数の更新
            shared_variable += 1
        finally:
            # ロックの解放
            lock.release()
# スレッドの作成と実行
thread1 = threading.Thread(target=thread_function)
thread2 = threading.Thread(target=thread_function)
thread1.start()
thread2.start()
thread1.join()
thread2.join()
# 共有変数の値を表示
print("共有変数の値:", shared_variable)

この例では、threading.Lock()を使用してロックオブジェクトを作成し、lock.acquire()でロックを獲得し、lock.release()でロックを解放しています。

thread_function()内で共有変数を更新する際には、ロックを獲得してから更新を行い、最後にロックを解放します。

ロックを使用した変数の同期

ロックを使用することで、複数のスレッドが同時に変数にアクセスするのを防ぐことができます。

ロックを獲得したスレッドのみが変数にアクセスできるため、データの整合性を保つことができます。

上記の例では、shared_variableという共有変数を複数のスレッドが同時に更新しています。

ロックを使用することで、スレッドが共有変数にアクセスする際には必ずロックを獲得するため、競合状態やデータの破損を防ぐことができます。

ロックを使用することでスレッド間の変数の同期を行うことができますが、注意点もあります。

スレッドセーフなデータ構造を使用する方法

マルチスレッド環境では、複数のスレッドが同時にデータにアクセスする可能性があります。

そのため、スレッド間で変数を共有する際には、スレッドセーフなデータ構造を使用することが重要です。

スレッドセーフなデータ構造は、複数のスレッドが同時にアクセスしてもデータの整合性が保たれるように設計されています。

スレッドセーフなリストの使用方法

Pythonでは、スレッドセーフなリストを提供するために、threadingモジュールにあるLockクラスを使用することができます。

以下に、スレッドセーフなリストの使用方法の例を示します。

import threading
# スレッドセーフなリストの作成
thread_safe_list = []
lock = threading.Lock()
# リストへの要素の追加
def add_element(element):
    with lock:
        thread_safe_list.append(element)
# リストの要素の取得
def get_element(index):
    with lock:
        return thread_safe_list[index]

上記の例では、Lockクラスを使用してリストへの要素の追加と取得を行っています。

with lockのブロック内では、他のスレッドがリストにアクセスできないようにロックがかけられます。

スレッドセーフな辞書の使用方法

スレッドセーフな辞書も、threadingモジュールのLockクラスを使用して実現することができます。

以下に、スレッドセーフな辞書の使用方法の例を示します。

import threading
# スレッドセーフな辞書の作成
thread_safe_dict = {}
lock = threading.Lock()
# 辞書への要素の追加
def add_element(key, value):
    with lock:
        thread_safe_dict[key] = value
# 辞書の要素の取得
def get_element(key):
    with lock:
        return thread_safe_dict[key]

上記の例では、Lockクラスを使用して辞書への要素の追加と取得を行っています。

with lockのブロック内では、他のスレッドが辞書にアクセスできないようにロックがかけられます。

スレッドセーフなキューの使用方法

キューは、スレッド間でデータを安全にやり取りするためのデータ構造です。

Pythonでは、queueモジュールにあるQueueクラスを使用してスレッドセーフなキューを作成することができます。

以下に、スレッドセーフなキューの使用方法の例を示します。

import queue
import threading
# スレッドセーフなキューの作成
thread_safe_queue = queue.Queue()
# キューへの要素の追加
def add_element(element):
    thread_safe_queue.put(element)
# キューから要素の取得
def get_element():
    return thread_safe_queue.get()

上記の例では、Queueクラスを使用してキューへの要素の追加と取得を行っています。

put()メソッドで要素をキューに追加し、get()メソッドで要素を取得します。

Queueクラスは、内部でスレッドセーフなメカニズムを持っているため、複数のスレッドから同時にアクセスしても安全にデータのやり取りができます。

以上が、スレッドセーフなデータ構造の使用方法の例です。

スレッド間で変数を共有する際の注意点

スレッド間で変数を共有する際には、いくつかの注意点があります。

以下では、特に重要な注意点について解説します。

レースコンディションとは

レースコンディションは、複数のスレッドが同時に共有変数にアクセスし、互いに競合することで予期しない結果が生じる現象です。

例えば、2つのスレッドが同じ変数に値を書き込もうとする場合、どちらのスレッドが先に書き込むかは保証されません。

そのため、予期しない値が書き込まれる可能性があります。これがレースコンディションです。

レースコンディションを回避するためには、スレッド同士が変数にアクセスする際に相互排他制御を行う必要があります。

後述するロックやスレッドセーフなデータ構造を使用することで、レースコンディションを回避することができます。

デッドロックとは

デッドロックは、複数のスレッドが相互にリソースを待ち合わせている状態で、進行が停止してしまう現象です。

例えば、スレッドAがリソースXを保持している状態で、スレッドBがリソースYを保持している場合、スレッドAはリソースYを待ち続け、スレッドBはリソースXを待ち続けることになります。

このような状態になると、どちらのスレッドも進行できなくなります。

デッドロックを回避するためには、スレッドがリソースを保持する順序を統一することや、タイムアウトを設定して一定時間経過した場合にはリソースを解放するなどの対策が必要です。

デッドロックを回避する方法

デッドロックを回避するためには、以下のような方法があります。

リソースの順序を統一する

スレッドが複数のリソースを保持する場合、リソースの取得順序を統一することでデッドロックを回避することができます。

タイムアウトを設定する

スレッドがリソースを取得する際に、一定時間経過した場合にはリソースを解放するように設定することで、デッドロックを回避することができます。

リソースの階層化

リソースを階層化することで、スレッドがリソースを取得する際に上位のリソースから順に取得するようにすることで、デッドロックを回避することができます。

これらの方法を組み合わせて、デッドロックを回避することが重要です。

デッドロックが発生した場合には、スレッドの終了やリソースの解放などの対策を行う必要があります。

以上が、スレッド間で変数を共有する際の注意点です。

これらの注意点を理解し、適切な方法を選択することで、スレッド間で安全に変数を共有することができます。

目次から探す